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これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『おかえり』(2025)

若手福祉職のスピーチコンテスト「社会福祉HERO'S」で発表された(2022)弓場洸紀(ゆばひろき)の実話にもとづくスピーチを脚本化したもの。制作は社会の広告社/BOLDTYPE、企画製作は全国社会福祉法人経営者協議会

 

企画・脚本・監督 山田英治

音楽 空気楽団

 

本島純政、宮宇地怜央、櫻井麻七、小野孝弘、柳田健汰、その他社会福祉法人「佑啓会」の皆さん

 

福祉型障害児入所施設で働く木場裕樹(本島純政)。高校生のユウタ(柳田健汰)は学校も施設も卒業を迎えようとしている。カッとしやすいユウタは木場に教えられた「6秒数えて深呼吸」を守る。それだけ二人の間には信頼関係も築けている。

ある日、親に障害があり育児放棄状態だったリツ(宮宇地怜央)が児童相談所に保護され、施設にやって来た。言葉も話せないリツだが、木場とユウタの補助でだんだんと施設に馴染んでくる。そして魚を見たことがないというリツに、みんなで行く水族館ツアー企画が立てられる。しかし、その日を待たずしてリツはサポートの整った親元へ帰ってしまった。

ユウタは街のパン屋に就職が決まった。木場もユウタもリツのことが気になっていたが、だからと言って施設の方から母親に連絡を取ることは許されていない。児相と施設は役割が分かれているのだ。

ところがほどなくして、リツが戻って来た。再び保護対象となったのだった。

リツは笑顔で「ただいま」と言う。それを受けて木場は「おかえり」とリツを迎える…。

 

リツが甘えたくて木場に爪切りを要求するのが愛おしい。人に触れる喜び、暖かさ、安心感を初めて得たのかもしれない。このシーンが一番良かった。

また、「ただいま」と発するのは、施設がもう家庭でもあるように思えているのかもしれない。自分がいてもいい場所が、いるべき場所になったのかもしれない。

 

施設員と入所児童との距離感は難しそうだ。児童は一人二人ではないし、抱える障害も違うし、一生一緒にいられるわけではない。

こういう施設のドキュメンタリーはたまに見るが、毎度「そもそも…」と思ってしまう。それが出来ないからこういった施設があるのだけど。それがショートとはいえ、実話にもとづくとはいえ、映画作品になると「お話」として受け止められるので少しは気が楽で、「そもそも…」とは思わなくて済む。

 

本島純政が実際に3〜4日ほど事前に施設での暮らし、仕事を体験した上での作品だったそうで。その効果が表れていたのかどうか、視聴してる側としてはわからなかった。だって需要な役、リツは子役だし、ユウタは実際施設の子ではあるけど素人だし。そう、施設の子たちがエキストラで出演している(施設員も)。それだけに、メイキングにある本島純政のノリが気になった。いいのかな、あれで。児童にとって良い思い出になれるのかな。

 

★★★

 

 

YouTubeで観られるのでぜひ。

 

 

メイキング

 

 

インタビュー&対談 弓場洸紀×本島純政

 

 

社会福祉HERO'Sサイト

 

 

『last scene』(2025)

Appleとのショートムービー。全編iPhone16Proで撮影されていて、その様子も別編で撮られている。

 

監督・脚本 是枝裕和(『万引き家族』『ベイビー・ブローカー』『怪物』他)

主題歌 Vaundy「まじで、サヨナラべぃべぃ」

 

仲野太賀、福地桃子、黒田大輔、リリー・フランキー、新谷ゆづみ、大田路(おおたみち)、鈴木志遠(すずきしおん)、加藤才紀子、矢澤菜楓(やざわさいか)、他。

 

舞台は鎌倉。脚本家の倉田(仲野太賀)とプロデューサーの山瀬(黒田大輔)がファミレスでドラマ「もう恋なんてしない」の話数とラストシーンについて打ち合わせをしつつ、主演女優琴乃(福地桃子)に惚れてる倉田をからかっている。まあまあ流れるように話は終わり、山瀬は撮影へ向かう。そこへ琴乃にそっくりな由比(福地桃子)が突然現れ、ちょうど今話していた台本のラストシーンを書き換えてくれと言い出す。

実は由比は倉田の孫だと言う。その倉田の伴侶は琴乃…由比は50年後の未来から目的があってやって来たのだと言う。その目的は、50年後の未来にテレビドラマを復活させること。そのために、今、この現代で、ドラマが消える原因になった倉田の書いている「もう恋なんてしない」のラストシーンを書き換えてくれと言うのだ。

未来には他にも無くなってしまったものがある。それももしかしたら無くならずに済むかもしれない。だからと…けれど、ラストシーンを書き換えるということは、由比が生まれて来ないということ。それでも由比は願っている。倉田はどうするのか、受け入れるにしても果たして納得のいくラストシーンが書けるのか…。

 

50年後の未来から来た孫なのだが、現代と比べて、なくなってるもの、もどったもの、変わらないものとあって、よくよく考えてみたら50年という時の流れはその程度のものかと拍子抜けすると共に納得もいった。

子供の頃、100年後の未来なんて夢のある作文を書かされたりしたけど、現実的じゃなかった。その時思った100年後に、SF映画のような空飛ぶ車や空中鉄道、緑はなくなり、街は超高層ビル群で成り、なんて実際出来ないだろうし、人は他人との接触せずとも暮らせるなんてことにはならないだろう。ならば50年では驚くほどの変化はないな、とそんなことを思った。

 

さて。50年経って、由比と乗った観覧車の係員(リリー・フランキー)は半分機械人間になってたけど、倉田はただのじいさんだった。今後生か死か選ぶのかもしれない。そして観覧車に友達と乗りに来た女の子麗奈(福地桃子)は倉田との記憶を持っているようだった。転生か?

ファンタジー仕立てのテレビドラマながら、視聴者と脚本家はじめ制作側の苦悩(慣習化した悪習と商魂)も描いてた。その部分が面白かった。

 

それにしてもスマホで動画が撮れるようになって久しく、ついに映画作品にも充分対応出来るようになったのかと、技術の進歩は目覚ましい。とすれば、50年後は誰でも監督になれ、脚本家にもなれ、役者にもなれ、ちょっとやそっとの作品じゃ満足いかなくなっているかもしれない。それなら、ドラマも映画も泡沫化してるかもしれない。

 

YouTubeですぐに観られるのでぜひ。

 

★★★

 

 

 

 

 

未来に何が残って何が消えるのか、50年後も残したいものを表現したとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

Liberty 自由と解放の旅へ増子敦貴3rd写真集(2025)

 

写真 熊木優(くまきすぐる)

 

 

 

 

『体感予報』で知り、友達が写真集を買う勢いで推してたんで見せてもらった。

 

コンセプトというか、謳い文句は”「永遠の美少年」から美しさと強さ、そして色気もすべて見せる写真集”らしい。

なるほど、確かに、美しさも強さ(この意味するところは人それぞれだろうけど、私は目力と解釈)も色気もあった。

 

パターンとしては10パターンくらいか。けっこうきちんと撮っている。そして企画も立ててあるようだしきれいに撮られているんで驚いた。

ピンクのセーターの彼は自然体な感じ。

白いTシャツとベレー帽、デニムの彼は少し女の子ぽい甘さがある。逆にデリのようなところにグリーンのTシャツにデニムのラフなスタイルの彼は少年ぽい。

化粧のせいもあるだろうけど、本棚を前にした彼と路地裏などのストリートアート前の彼、ハットにリボンタイのスーツでバーカウンターを前にの彼は、宝塚のトップスターのよう。

そしてお約束のように半裸も有り。ベッドの上も有り。どんな需要かと思うけど。

 

特別な衣装での特殊な空間でのフィクションのような写真から、等身大の日常のような写真まで、見応えはあった。

 

ではおススメショット。

 

まず、①表紙。これは完璧で目を引く。

②白Tシャツ白ベレー帽で両手を頬に当ててぷっとした顔の右ページ一枚。目線合う形で、その目がきれい。

③カフェでテーブルに頬杖して窓の外に視線を流す、まるで一瞬をとらえたかのような右ページ一枚

カフェオレかな、④赤白のストローを口に上目加減の巻き髪の一枚。目に力がある。唇が一番きれい。

⑤見開きの横顔ドアップ。同じく⑥見開き仰向けになってる横顔ドアップ。これらはただただ美しい。

あと、ヅカっぽいという点で、⑦チェックの帽子上下デニム化粧バッチリの目線こちらの見開き。同じくヅカぽいということで、 ハットとリボンタイスーツの唇に手をかけてる正面向き右ページ一枚⑨同じ衣装で片頬に手をかけ正面からのアップ左ページ一枚。きれいな唇が歪んでるのが残念だけど、陰影がきれいな一枚。

 

ボリュームもあるし全体的に本当にきれいでよく撮れてるけど、多くの中に数枚、誰かに似てる、どこかで見た、みたいなものがあって、増子敦貴風味が薄いものがあったのは残念。まぁ、仕方ないか。

 

この子は唇の形がいいし、きれい。たらこ唇というらしいけど、きれいでたらことは思えなかったけどな。

 

 

128ページ

 

発行 KADOKAWA 3000円(税別)

 

 

増子敦貴の簡単な経歴(ネットで拾ったもの)

エイベックス主催の「ボーイズアワードオーディション2016」で芸能界へ。

2018年ミュージカル『テニスの王子様3rdシーズン』出演。(テニミュは舞台の登竜門化しとりますね…)

2019年男女混合ダンス&ボーカルグループ「GENIC」(ジェニック)に加入、結成→2020年メジャーデビュー。

2021年4月~2022年2月、特撮テレビドラマ『機界戦隊センカイジャー』レギュラー出演。(戦隊ものもアイドル俳優の登竜門ですね)

 

 

 

 




 

こちら、『体感予報』が堂々と3位にランクインしてました。確かに、同性愛者とBLは似て非なるもののような気がする。まず、フィクションであるし、それを創作した作者の欲しい形であるわけで。好きなタレントの写真集を求める気持ちと変わらない気もする。

 

 

 

 

 

『新幹線大爆破』(1975)

 

原案 加藤阿礼

監督 佐藤純弥=佐藤純彌(『人間の証明』他)

脚本 小野竜之助佐藤純弥

 

高倉健、千葉真一、宇津井健、山本圭、郷鍈治(ごうえいじ)、織田あきら、竜雷太、宇都宮雅代、藤田弓子、多岐川裕美、志穂美悦子、渡辺文雄、福田豊土(ふくだとよと)、丹波哲郎、北大路欣也、田中邦衛、川地民夫、岩城滉一、小林稔侍、藤浩子、片岡五郎、佐藤和男、岡本八郎、阿久津元、黒部進、河合絃司(かわいげんじ)、土山登士幸(つちやまとしゆき)、五野上力、山内明、永井智雄、鈴木瑞穂、十勝花子、他。

 

そんなわけで1975年版を観てみた。

 

東京発博多行きの新幹線「ひかり109号」に爆弾を仕掛けたという電話が国鉄本社に入る。速度が80キロ以下になると自動的に爆発するという。それが嘘ではない証拠に北海道夕張を走る貨物列車に同種の爆弾を仕掛け、指定速度以下になった時、爆発させてみせた。要求は500万米ドル(日本円にして当時約15億円)。

国鉄の運転司令長倉持(宇津井健)は「ひかり109号」の運転士青木(千葉真一)に知らせ、速度を120キロに保つよう指示する。とはいえ、自動制御装置ATCとの兼ね合いもあり、トラブルを避けるため場合によってはギリギリ85キロまで下げるなど、現場を預かる倉持と森本運転士(小林稔侍)は緊張を強いられる。

また、停車するはずだった名古屋駅を通過したことで乗客にも爆弾のことが知らされる。乗客それぞれの都合や考えから混乱しパニックになる中、妊婦(田坂都)が産気づき、居合わせた医者(藤田弓子)の努力も虚しく胎児は亡くなってしまうという不幸も起こる。

犯人は元町工場経営者の沖田哲男(高倉健)とその従業員だった青年大城浩(織田あきら)、たまたま知り合った元活動家古賀勝(山本圭)。沖田は自工場経営に失敗し、荒れた生活に妻靖子(宇津宮雅代)はたまりかねて離婚、子賢一(菅原靖人)を連れて出て行った。失うものもない、金が得られれば次の人生もあるやもしれない、社会への反旗か。

沖田たちは連携し、撹乱させながら500万米ドルを受け取る。しかしその間に、浩を事故で、古賀を自爆で亡くす。二人の思いを汲み自分だけでもと当初からの予定だった海外逃亡を図るが…。

 

博多に着くまでの時間になんとかしなくてはならない、警察との地上戦、車内での人間模様、沖田を中心にした犯人たちの過去描写、司令室と政府と警察との人命への考え方の違い、爆弾解除と情報操作など、ギリギリの状態で最適解を出す、なかなか面白かった。

 

爆弾を発見するため鉄道橋の下からサーチライトを照らし車体の底動画を撮るという方法と、沖田の言葉尻から予測を立て必要な道具を搬送し解除に乗り出すのは前時代的であるがゆえ緊迫感があった。

青木運転士の「SLだったら…」という自動制御装置の便利なようでこうした場合足手まといになるグチが良かった。それに応えて新幹線の意味を問う倉持に、技術や科学の進化は生活の利便性や文化の発展に直結してるのだなぁと思った。

 

500万米ドルと引き換えだった爆弾解除の指示書が不意の火災で受け取れなくなったこともあり、テレビで犯人への1500人の命を助けてくれと倉持による訴えも放送される。それが無事爆弾解除後も、今度は残る犯人沖田を捕まえるために流し続け、無事救出のニュースを流さない。乗客の家族たちの気持ちを優先する倉持は犯人逮捕のためとはいえ警察の手に失望する。そして爆弾がもうひとつついてるかもしれないのに停車を指示した自分を責める。立場により違うとはえ、人道とは何かを考えさせられる。

 

無事停車できたときの倉持とその上司(永井智雄)の表情だけで安堵プラス複雑な思いの目の演技が素晴らしかった。表情演技は昔の役者さんの方がうまかったかもしれない。アップ画が多いし。

そういえば、医者が藤田弓子とはまったく気づかなかった。

あと高倉健のラストを美しくしたな ( ̄∀ ̄)ニヤリ という感じだった。

 

映像技術的にも粗さは仕方ないけど、でも、妊婦の出血に、輸血が必要と献血を乗客に募り施すんだけど、そんな医療器具持ってんの?という疑問はどうしてもぬぐえなかった。

2025年度版と比べると、良くも悪くも技術的にもストーリー的にもやはり時代を感じる。また数十年後、リブート編が出たらどう描くだろうと考えた。

 

★★★(★)

 

 

 

 

 

『新幹線大爆破』リブート編Netflix映画版(2025)

原作は監督:佐藤純彌、脚本:小野竜之 による1975年の東映映画『新幹線大爆破』

 

監督 樋口真嗣(『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』『シン・ウルトラマン』他)

脚本 中川和博大庭功睦(おおばのりちか)

 

草彅剛、のん、細田佳央太、大原優乃、斎藤工、尾上松也、田中要次、要潤、尾野真千子、黒田大輔、豊嶋花、大後寿々花、松尾論、六平直政、屋敷紘子、今野浩喜、坂東彌十郎、ピエール瀧、森達也、西野恵未、佐藤貢三、青柳尊哉、さかたりさ、木原勝利、志武明日香、高柳良一、ゆりやんレトリィバァ、白石和彌、キンタカオ、前田愛、岩谷健司、谷口翔太、丹波義隆、田村健太郎、他。

 

車掌高市和也(草彅剛)藤井慶次(細田佳央太)、運転士松本千花(のん)、キャビンアテンダント二宮(大原優乃)が乗務する新青森発東京行きの東北新幹線「はやぶさ60号」に爆弾を仕掛けたという電話が入る。それは時速100キロを下回ると自動的に爆発するというもの。どこに仕掛けられたのかわからないし、いくつあるのかもわからない。犯人は嘘ではない証拠に制限想度を下回った貨物列車を爆破させてみせた。JR東日本新幹線総合司令所の指令長笠置雄一(斎藤工)を中心として警察や政府との連携から対策を始め、松本運転士には走行速度を120キロに保ち、状況に応じて105キロまで落とすことを命じる。車内にもアナウンスされ、乗客は騒ぎ出すものの、乗務員はもちろん、スキャンダルで話題の衆議院議員加賀美裕子(尾野真千子)とその秘書林(黒田大輔)が乗り合わせていて、イメージ回復のためパニック回避に尽力する。

解除条件は1000億円。とうていすぐに用意できる額ではない。が、国民一人当たり1000円の計算になることから、同乗客の一人、起業家でYouTuberの等々力満(要潤)はさっそくクラウドファンディングを立ち上げ寄付を募り始める。最終的には1000憶をクリアするが…。

「はやぶさ60号」には他に、ヘリコプター差配会社の元社長で業務上過失致死を起こした後藤正義(松尾論)、高校の修学旅行生、電気工事士、医師なども乗り合わせ、揉め事を起こしながらも危機的状況に向かい合う。

犯人との連絡が途絶える中、東京駅を通過するしかなくなってくる。同時に問題になるのは爆発物の在処で、解除より前に出来ることをしなければならない。とりあえず爆弾が仕掛けられている車両を特定し、安全とした後部車両に乗客を移動させ切り離し、救助を第一に動くことに。しかし修学旅行生の一人小野寺柚月(豊嶋花)の姿が見当たらず、高市、等々力、加賀美、林、後藤、そして担任教師の市川(大後寿々花)らが前車両に残されてしまう。そして犯人も判明するが、解除は不可能と知ることになる。とはいえ、爆発物の在処がわかったため、今度はその車両を離すべく司令室と残された面々の協力のもと秒単位の作戦が進む…。

 

 

複雑な運行表を組み立て直すところは唸る。デジタルでパパパッと入力するのではなく、アナログで線を引き計画を立てるのは、ああ社会は、少なくともこの国は、基本人力と頭脳で保っているのだと思った。根底は情と正義。当たり前か。

 

 

さて。そうとうに腹が立った小野寺柚月。その背景がどうのこうのが言い訳になるなら、この世のどれだけの人が暴挙に出るか…とイラつかせてくれたくらいには面白かったのかもしれない。

で、ネタバレすると、爆弾を仕掛けたのは柚月だ。母親が亡くなってから父親に精神的にも肉体的にも暴力を受けていた。その父親小野寺勉(森達也)は1975年の新幹線ひかり109号爆破未遂事件の犯人古賀勝を射殺したと英雄視されており(事実は違う)、当人もそれにすがって生きてる面があった。そんな父親を柚月は心底嫌っており、同時に新幹線に対する私怨にもつながっていた。柚月はネットでたまたま古賀勝の息子で発破技士の古賀勝利(ピエール瀧)と知り合い、爆弾作りの協力を得る。古賀は古賀で父親の犯罪と自殺を抱えており、協力するに躊躇はなかった。

 

という…なんやねん、それ。ですわ。

 

柚月は「普通」の「嘘」を壊したいという。そんな高二病みたいな理由で新幹線利用者を殺すのかと。いくらDV被害を受けてるからといって、柚月は家にも爆弾を仕掛け、父親を殺す。なら、それで良かったじゃん。柚月には持病があり心臓モニターが内蔵されていて、それが起爆装置になっている。つまり柚月を殺さない限り爆発は避けられないということ。待て待て、最初から死ぬ気なら家に仕掛けた爆弾で父親と対峙して死ねよ。その他大勢の「普通」の「嘘」まで壊すなよ、と。

柚月の存在はエッセンス程度にして、古賀勝利が犯人でも良かったし、なんなら小野寺勉でも英雄に仕立て上げられたんだから、その苦悩によって、という理由付けも可能だ。

 

ところで、爆弾はいつどのように誰が仕掛けたんだろう? 犯人は柚月。協力者は古賀勝利しかいないんだけど。

あと、藤井が負傷するのだけど、けっこうな深手に見える。ラストに向けてかなりな衝撃にも耐えなきゃなのに、大丈夫な感じなの?と不思議だった。

 

乗客は世相を表していて、これがまた数年後、十数年後観たら懐かしかったり古臭かったり興味深かったりするのかなと思った。

残念だったのは、クライマックスのひとつでもある高市が柚月の首を絞めるシーンで、顔に力は入ってるものの手に力が入ってなかった点。無理もないけど、そここそリアリティが欲しかった。

あと、のんを使った意味がわからなかった。正直誰でも出来る役だった。

 

パニック映画の要素もあるので、VFXにしろ演出上の緊迫感、映像満足度は高い。

 

前作というか、1975年の『新幹線大爆破』を踏襲しており、現実に起こった事件だったかと勘違いするドキュメント性もあった。続編ではなく、因縁で続いているのが良い。ただ、その事件を起こす理由が腹立って仕方ないだけ。

そんなわけで、1975年版も観てみることにする。

 

★★★

 

 

 

 

ドラマ『【推しの子】』(2024)Amazon Prime Video 全8話

原作は赤坂アカ×横槍メンゴの漫画。

 

監督 スミス(『ぼくは麻里のなか』『tourist ツーリスト』他)、松本花奈(『明け方の若者たち』他)

脚本 北川亜矢子(『わたしに××しなさい!』他)

 

ドラマ主題歌

①MY FIRST STORY『アクマ』

② ロクデナシ『草々不一』

③Da-iCE『オレンジユース』

④ I's『Past die Future』

⑤ヤバイTシャツ屋さん『ええがな』

⑥WANIMA『爛々ラプソディ

⑦七水曜日のカンパネラ『動く点P』

⑧梅田サイファー『REVENGE』

 

エンディング曲 B小町(劇中ユニット:齊藤なぎさ、原菜乃華、あの)『SHINING SONG』

 

櫻井海音(さくらいかいと)、齋藤飛鳥、齊藤なぎさ、原菜乃華、あの、茅島みずき、成田凌、杢代和人(もくだいかずと)、倉科カナ、金子ノブアキ、吉田鋼太郎、稲垣来泉(いながきくるみ)、濱田マリ、安達祐実、要潤、志田未来、戸塚純貴、中村蒼、尾美としのり、二宮和也、黒沢あすか、宮川一朗太、石井杏奈、竹財輝之助、岡田結実、山下幸輝、森田甘路、野田クリスタル、渋谷謙人、緒形敦、郷馬健太郎、矢柴俊博、片山萌美、渋江譲二、剛力彩芽、青柳翔、柊太朗(とうたろう)、黒田昊夢(くろだひろむ)、菊池姫奈、簡秀吉、なえなの、酒井唯菜、兼清萌々香、齋藤茉日、中野あいみ、松本海希(まつもとみき)、十味(とーみ)、渋谷凪咲、宮下兼史鷹(みやしたけんしょう)、黒川想矢、岩川晴、斉藤柚奈、永瀬ゆずな、磯村アメリ、他。(映画版含む)

 

東京ドームでのライブを前にアイドルグループB小町(メンバー:酒井唯菜、兼清萌々香、齋藤茉日、中野あいみ)の圧倒的センターアイ(齋藤飛鳥)がストーカーと化した熱狂的なファンリョースケ(杢代和人)に自宅を特定され刺殺される。極秘裏に出産をし、所属する苺プロダクションの社長斉藤夫婦(斉藤壱護吉田鋼太郎、斉藤ミヤコ倉科カナ)の子と偽っていた双子の実子の前で…。そしてその双子の子供、アクア星野愛久愛海=ほしのあくあまりん(櫻井海音/幼少期:岩川晴)ルビー星野瑠美衣(齊藤なぎさ/幼少期:斉藤柚奈)はとある宿命を背負って「推しの子」として転生してきていたのだった。

アイが亡くなってから、B小町は解散し、斉藤壱護は行方知れず、苺プロダクションも休眠状態、ミヤコが二人と暮らし面倒をみていた。そうして高校生になった二人はそこで幼少期に共演した元天才子役有馬かな(原菜乃華/幼少期:永瀬ゆずな)と再会する。かなはその後泣かず飛ばずの使い勝手の良い女優になってしまっていた。当時ドラマでアクアの才能に打撃を受け見惚れたかなは、鏑木勝也プロデューサー(要潤)が関わる漫画原作ドラマ「今日は甘口で」に誘う。アクアは幼少期世話になり事情も知る五反田泰志監督(金子ノブアキ)のもとで裏方として芸能界の片隅にいたものの、役者などやる気もなかったが、アイと交流のあった鏑木の名前を聞いて引き受けることにした。アイの命を奪った男、前世で因縁を持った男、自分の父親をつきとめるために…。

鏑木プロデューサーと知り合いになったアクアは、アイの男性関係の情報を交換条件に、次の恋愛リアリティショー「今からガチ恋始めます」にも出演することになった。そこで後々協力関係に進展する真面目な実力派女優黒川あかね(茅島みずき/幼少期:磯村アメリ)、ルビーとかなと新生B小町を組むことになるドルヲタ兼インフルエンサーMEMちょ(あの)と出会う。そうしてアクアは鏑木プロデューサーから、アイが「劇団ララライ」のワークショップで恋に落ちたことまでをつかむ。「劇団ララライ」の主要メンバーが揃う人気漫画原作のドラマ「東京ブレイド」にも出演を決め、異母兄弟の存在までたどり着くも、その父親はもうこの世にはいなかった。これで終わりに見えたかに思ったが、ルビーはルビーで独自にアイの事件を追っていた。

B小町の新曲MVを作るため、宮崎にロケに行くことになる。実はその宮崎に因縁があった。宮崎でアクアとルビーは生まれ、ルビーは前世で宮崎の病院に入院していたし、その時担当だった研修医がアクアの前世だった。ルビーにはアイドルを目指す理由があり、ここで復讐を誓う理由がアイのこと以外にもう一つできる。また、アイのために斉藤壱護もずっと独自に動いており、アクアとルビーが誰の何の目的で転生したのかも含みつ、一歩ずつ真相、真の犯人に近づいていく…。

 

ドラマは実は本当の父親は他にいるかもしれないこと、アイを殺した男リョースケを操っていた人物がいたかもしれないこと、アクアがかなのスキャンダルを隠す理由で自分らの出自をリークし騒ぎになるというところで終わる。

 

面白いのは、サスペンスのノリで転生に始まり、テレビドラマ制作やバラエティショーの内幕からアイドルや役者の矜持にも触れる芸能界ネタの盛りだくさんなところ。かなにしてもあかりにしても意識の方向こそ違えど、そのプロ意識は納得がいったし、やはり芸能界は厳しい世界だと思った。また、原作者となる漫画家吉祥寺頼子(安達祐実)鮫島アビ子(志田未来)の自作品への思い入れの差(性格によるところは有り)、作家や出版社、制作局の創作意識の違いなんかも想像通りで面白く見れた(何が悪い良いということではなく、折り合いをつける点が良かった)。

コミカルな要素、恋愛ネタも多々あって思わず吹くところもあった。展開に無茶な点、多少のキャラブレもあったけど、楽しめた。俳優陣もわりと豪華なのは、アマプラだからかな。

あかねの母親役に黒沢あすか。宮崎の映像クリエイターアネモネ石井杏奈。B小町の新曲を提供する売れっ子ミュージシャンヒムラ竹財輝之助。漫画家ともめる脚本家GOA戸塚純貴。劇団ララライ所属の俳優で血縁が判明した姫川大輝山下幸輝。ドラマ「東京ブレイド」のプロデューサー雷田澄彰中村蒼。などなど。

 

★★★★

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

映画『【推しの子】 The Final Act (2024)

監督 スミス

脚本 北川亜矢子

 

ドラマ版の復習から始まり、産婦人科医の雨宮吾郎(成田凌)と、研修医だった時に出会った病床の少女天童寺さりな(稲垣来泉)とのことに焦点が置かれ、転生の理由が明確になる。

 

B小町アイ(齋藤飛鳥)の大ファンだったさりなの影響を受け、吾郎もアイのファンになる。さりなは亡くなってしまうが、さりなはアイドルを目指すという目的を持ちアイの娘ルビー(齊藤なぎさ)として転生した。

時が経ち、吾郎が産婦人科医になって出産のために斉藤壱護(吉田鋼太郎)に連れられ極秘裏に現れたのが星野アイだった。ファンだったから喜んだものの、大学生くらいの怪しい二人の男につけ狙われていることを知り、たまたま居合わせたその一人の男を追うものの、半ば事故的に吾郎は命を落とすことになる。自分の命を奪った相手、かつアイに何らかの不利が生じるかもしれないとアクア(櫻井海音)として転生したのだった。

アイのもとに生まれた二人はもちろん互いが誰の転生だったかなど知りもしない。そんな状態でアイが刺殺される。目の前で死んでいくアイを見たアクアはそこで犯人探しを、そして復讐を誓ったのだった。ルビーもまたアクアの真意を推しはかりつつ、やはり母親でもあったアイ、そして後々知った大好きだった吾郎先生の死因から、二人を殺した犯人への復讐心が育っていく。

そしてアクアが五反田泰志(金子ノブアキ)と手掛けるアイを描いた映画「15年の嘘」の撮影が進む中、女優一本でいくと決意した有馬かな(原菜乃華)のB小町卒業があり、裏でアイに手を下した犯人カミキヒカル(二宮和也)も浮上。そして映画完成イベントの日、アクアはいよいよカミキヒカルと対峙することになる…。

 

転生の理由が薄いかな。もっと心が痛くなるような理由が吾郎にもさりなにもあるのだと、ドラマを見てる時から期待があった。それだけの台詞や思いがあった。暗い崖とか、もっと生きたいさりなとか。犯人のカミキヒカルはサイコパスだけど、そうなるにはなるだけの芸能界の闇があって、それは良かった。そのくらいの重さが欲しかったということ。原作未読。

 

櫻井海音の声のトーン、喋り方、表情までもが高橋文哉に似てた。

原菜乃華うまかった。二宮和也も安定している。

アイの母親役に剛力彩芽。なかなか良かった。

宮崎の病院の川村看護師役に濱田マリ。「15年の嘘」の監督金田一敏郎役に尾美としのり(ドラマ版から出ている)。

 

★★★

 

 

 

 

 

 

 

『キンキーブーツ』(2025)シアターオーブ

 

脚本 ハーヴェイ・ファイアスタイン

音楽・作詞 シンディ・ローパー

演出・振付 ジョニー・ミッチェル

日本語版演出協力・上演台本 岸谷五朗

訳詞 森雪之丞

 

チャーリー・プライス:東啓介、有澤樟太郎

ローラ:甲斐翔真、松下優也

ローレン:田村芽実(たむらめいみ)、清水くるみ

[以上ダブルキャスト]

 

ニコラ:熊谷彩春(くまがいいろは)

ドン:大山真志

ジョージ:ひのあらた

パット:飯野めぐみ

トリッシュ:多岐川装子

ハリー:中谷優心

 

エンジェルス:穴沢裕介、佐久間雄生(さくまゆうせい)、シュート・チェン、大音智海(おおとともみ)、工藤広夢轟晃滛(とどろきこうよう)

エンジェルススウィング:本田大河長澤仙明(ながさわのりあき)

 

ヤングチャーリー:奥田奏太、星駿成、村山董絃

ヤングローラ:古澤利音、見﨑歩誠(みさきあゆみ)、髙橋維束(たかはしいつか)

[以上トリプルキャスト]

 

以上、太字は観劇日のキャスト。

 

サイモン・シニア:藤浦功一

ミスター・プライス:石川剛

リチャード:聖司朗

マージ:舩山智香子

マギー:伊藤かの子

ルイーズ:熊澤沙穂

フーチ:竹廣隼人

マット:趙京來(ちょうきょんれ)

 

スウィング:上條駿、加藤文華

 

 

 

 

女性の服が好きで女性のかっこうが好きで行きついたところがドラァグクイーンのショーの世界、そんな生き方を唯一の肉親に否定されるのはつらいし、望まれるようにプロボクサーの道も歩んだ、けれど子供の頃からヒールが履きたかったそんな自分‘’サイモン‘’を認めてほしいローラ。ドラァグクイーンはおろかジェンダー問題は興味の外、靴工場経営の父親の期待を一心に背負いそれに答えようとも思ったけど、でも自分のやりたいことはなんなのか、それを探し求めたいと思うチャーリー。二人の間には、お互い父親の期待に応えられなかった負い目がある。そんな心情もこの短い時間のあいだに描かれている。おそらく映像作品では無理。それが自然に出来るのがミュージカル。

 

これまであらすじは書いてきたし、公式サイトのリンクもしてきたので、ストーリーはそちらで確認していただくとして(というか間違いもあったみたいですみません。とはいえど直しておらず^^;)、今回は感想…にもならない雑感だけ書こうと思います。

 

東チャーリーはデカイ笑。好みとしてはドラァグクイーンであるローラの方が大きくあって欲しかったので、むしろ東啓介がローラじゃないの!?と、キャスト発表があった時思ったのを思い出した。有澤チャーリーと比べると、より普通で少し弱い。だからか、ニコラ(熊谷彩春)の個性が強く見えて、その点が良かった。

松下ローラは、サイモンとの地続き感がしっかりあって、繊細な部分と大胆な部分が悲しみと一緒に同居してて一人の人間を見ているんだなぁというのが感じられた。全体観としては、甲斐ローラとは逆におねえ感が強く品がない笑(褒めてる)。そのせいかどうかローラと絡むドン(大山真志)も押されぎみ、かつなんだかんだ気になってる感じも見え、ドンがまた違うイメージで面白かった。どちらかというと、松下ローラの方が親和性が高いと思った。

そんな二人なので、チャーリーへのローラのアクションが濃かった。より強くローラがチャーリーの領域に入り込んだ感じがした。だからケンカをしてローラを傷つけてしまったチャーリーの後悔、傷ついたローラの去り際が響いた。

ローレンは8日と同じく田村芽実だったのだけど、あまり変化はなかったかな。二コラもそうだけどローレンは特に強烈にはじけたキャラであって欲しい。潤滑油でもあるから。

 

他、従業員のみんなは相変わらず素晴らしい歌唱とコミカルな動きで彼らがいるから舞台が成り立つのがよくわかる。エンジェルスの華美さもアガル。

「キンキーブーツ」は観客と共に育て上げてる感じかして、そこが楽しい。歓声もあがるし拍手もハンパない。そしてこの日も客席が明るくなってアナウンスが入っても鳴り止まない拍手にチャーリーとローラが出て来てくれた。この日で東京公演では東チャーリー×松下ローラの回は終わりだったそう。

何回でも観たくなる、大満足だった。

 

さて。次回のキャストはどんなだろう。個人的には新原泰祐のチャーリーが観てみたい。彼のミュージカルは観たことないけど、数はこなしているみたいだし、なんとなく、小池徹平並みの、舞台で一番難しいと思われる表情での感情表現が出来そうだから。

 

また2〜3年後!

 

 

(観劇日 20250514)

 

東京:シアターオーブ 0427〜0518

大阪:オリックス劇場 0526〜0608

 

 

公式Tumblr

https://kinkyboots.tumblr.com/

 

 

初回から参加しているキャストの方々のSNSを覗き見ると、やはりみんな前回(2022年)から今回への流れにはいろんな、しかし共通した思いがあるようだった。でも今回の新しい『キンキーブーツ』で一区切りついた様子が見え、これからはミュージカルナンバーのひとつとして日本で歴史をきざんでいくんだろうなと思えた。それを一番感じられるエンジェルスのポストを中心に共有。

 

 

舞台裏(バンド)ポストを共有

 

 

エンジェルスの佐久間さんのX

 

 

エンジェルスの轟さんのX

 

 

エンジェルスの穴沢さんのX

 

 

エンジェルスの大音さんのX

 

  

大音さんのYouTubeよりメイク編

 

 

女性軍・熊谷さんのX

 

 

 

 

******以下、過去公演感想******

 

 

 

 

 



穴沢さんのXより

 

↑20250608追加

『波紋』(2023)


監督・脚本 荻上直子(『川っぺり、ムコリッタ』『彼らが本気で編む時は、』『バーバー吉野』他)

 

筒井真理子、光石研、磯村勇斗、キムラ緑子、安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙、ムロツヨシ、津田絵理奈、柄本明、木野花、他。

 

水を軸に話が組み立てられていて、水から得られる恩恵を再考させられるような作品だった。生きる上で、生命を維持する上で、絶対に欠かせないものだからなお。

 

福島原発事故から放射線量に恐怖を抱き、過剰なまでの対策が民間でなされていた時期、東京都内に住む須藤依子(筒井真理子)の家でもまた水道水を飲まないこと、雨に濡れないよう気をつけること、などを家族と共有していた。家事一切はもちろん床に伏す義父の面倒をも一手に引き受けていた依子のもとからある日、夫の須藤修(光石研)が、庭に元気に咲く放射線がどうしたとばかりの色とりどりの花々の水やりの途中で姿を消す。

息子の拓哉(磯村勇斗)と二人暮らしになるが、やがて拓哉は九州の大学へ進みそのまま現地で就職し、義父も施設を経て亡くなる…という数年の間に、依子はスーパーのパートをしながら「緑命会」という水を崇める信仰宗教にはまっていった。しかしそれはそれで、庭に枯山水を作り心穏やかに一人の生活を満喫していたのだった。

そんなある日、突然修が戻って来る。癌を患っているという。遺産もあるはずだとその治療費を手助けして欲しいと戻って来たのだった。すでに心が離れてる依子だったが、緑命会の徳積みや、スーパーの清掃員の水木(木野花)との歯に衣着せぬおしゃべりに力をもらいながら修との生活が再び始まる。

しかし、スーパーではクレームの激しい客(柄本明)への対応、隣家の渡辺(安藤玉恵)とはそりが合わない、拓哉も結婚を決めたすでに妊娠もしている聾唖者の恋人川上珠美(津田絵理奈)を紹介するため連れ帰ったりと、嫌なことが日常にたくさん起こる。それらに翻弄され、生活のサイクルが狂っていき、鬱憤がたまっていく…。

 

結局、修は亡くなり、拓哉は九州で結婚生活を送り、依子は緑命会が何も救ってくれてないことに気づく。

 

というか、誰にでも起こり得る人とのすれ違い、誤った選択、人生の一片を見せられた。その中に水木の人生が物悲しく描かれてる。時に面白おかしく、時にアイロニカルに見えて、東日本大震災から居住空間の時が止まっているのだ。知り得ない他人の生き方、生活をのぞき見る感じがなかなかにヒリヒリした。

 

緑命会の教祖にキムラ緑子、信者の中に江口のりこ平岩紙。ぴったり。

 

★★★★

 

 

 

 

配給 ショウゲート

 

『のら犬』(2023)

フランス映画。原題は『Chien de la casse』。意味としてはジャンクヤード(ガラクタ、廃品置き場)の犬、らしい。

 

監督・脚本 ジーン・バプティスト・ドゥランド

 

南フランスの田舎町。大麻の売人をやっている愛犬マラバールを連れ歩くミラレス(ラファエル・クナール)と、日がなゲームに明け暮れるドッグ(アントニー・パジョン)は、ミラレスがこの町へやってきた15年前からの友達同士。だけど、ミラレスは仲間の前に限らずどこでもドッグをからかいの対象にする。バカにして無能扱いして、それがウケると思っている。それでも二人は一緒にいる。退屈な田舎町で、仲間といることがどんなにか大切かを示してるかのように。

ところがある日、ヒッチハイクをしていた一人の女子大生エルザ(ガラティーア・ベルージ)を拾ったドッグは、それからエルザと過ごすことが多くなる。エルザはドッグをからかうミラレスに難色を示す。相手にされなくなりつつあるミラレスはドッグはもちろんエルザにも嫉妬から敵対心を燃やす。けれどドッグとエルザの仲もそう長くは続かず、ドッグもミラレスも互いに一人の時間を過ごすようになる。そんな折、以前ドッグがからかった女(マリソル・フェルタール)の仲間が復讐をしに現れる。ドッグの危機的状況にマラバールを連れたミラレスが助けに行くが、その喧嘩はマラバールの犠牲で終結する…。

 

愛犬の献身的な姿に、二人はまた共に居るようになる…。

 

田舎の若者あるあるな青春。たいして面白くもない話題やネタでその場をやり過ごし、将来を描く者(作品内でも店を出すカップルもいた)、刹那を生きる者、といるが、この先の人生をなるべく考えず流れに身を任せる者が多い。そんな若者像が描かれている。何もないから映像的にもだるい。だるいけど、内面を描くのはうまく出来ていて、そこが耳目を引く。でも、若者といっても二十代半ばから後半の設定なんだよな.たぶん。これも田舎町あるあるこもしれない。世界共通。

 

ミラレスの母親(ドミニク・レイモン)は画家で家事を一切やらない。夫が亡くなってから様子が変わったという。そうであろうとなかろうと、ミラレスは母親思いだし、町の人たちとの交流も描かれているから、あれでいて人を、ドッグを大切に思っている。

田舎町を恥じ、己の可能性を過信し、でも、だから、どうにもならない焦燥感に苛まれる、という、田舎町の青年がとてもよく出ている作品だった。

 

★★★(★)

 

 

 

 

『キンキーブーツ』(2025)シアターオーブ

 

脚本 ハーヴェイ・ファイアスタイン

音楽・作詞 シンディ・ローパー

演出・振付 ジョニー・ミッチェル

日本語版演出協力・上演台本 岸谷五朗

訳詞 森雪之丞

 

チャーリー・プライス:東啓介、有澤樟太郎

ローラ:甲斐翔真、松下優也

ローレン:田村芽実(たむらめいみ)、清水くるみ

[以上ダブルキャスト]

 

ニコラ:熊谷彩春(くまがいいろは)

ドン:大山真志

ジョージ:ひのあらた

パット:飯野めぐみ

トリッシュ:多岐川装子

ハリー:中谷優心

 

エンジェルス:穴沢裕介佐久間雄生(さくまゆうせい)、シュート・チェン大音智海(おおとともみ)、工藤広夢、轟晃滛(とどろきこうよう)

エンジェルススウィング:本田大河、長澤仙明(ながさわのりあき)

 

ヤングチャーリー:奥田奏太、星駿成、村山董絃

ヤングローラ:古澤利音、見﨑歩誠(みさきあゆみ)、髙橋維束(たかはしいつか)

 

以上、太字は観劇日のキャスト。

 

サイモン・シニア:藤浦功一

ミスター・プライス:石川剛

リチャード:聖司朗

マージ:舩山智香子

マギー:伊藤かの子

ルイーズ:熊澤沙穂

フーチ:竹廣隼人

マット:趙京來(ちょうきょんれ)

 

スウィング:上條駿、加藤文華

 

 

 

テーマはなりたい自分になる。ありのままを受け入れる。互いを認め合う。

 

イギリスの田舎町ノーサンプトンの老舗靴工場「プライス&サン」は時代的な影響もあり経営難、倒産寸前。そうとは知らない一人息子のチャーリー・プライス(有澤樟太郎)は次期社長と目されながらも、婚約者の二コラ(熊谷彩春)の希望もあって共に新しい生活に夢を抱きロンドンへ出る。しかしほどなくして父ミスター・プライス(石川剛)が急逝、チャーリーはノーサンプトンへ戻り、なんだかんだ従業員のこともあり工場を立て直すべく継ぐことになる。でも今まで通りでは売れない。友人の靴工場は閉鎖されるなど状況は厳しい。そんな中、従業員のローレン(田村芽実)の新しい市場を開拓するべきとのアドバイスに、ロンドンで知り合ったちょうど靴にこだわりを持っていたドラァグクイーンのローラ(甲斐翔真)を思い出し、さっそくデザイナーとして協力を頼む。斬新なデザインのローラの「キンキーブーツ」が誕生する。ノーサンプトンでは田舎町ゆえ、ローラはその見た目から馬鹿にされたが、そんなのは持ち前のキャラクターで跳ね返し、従業員も少しずつ味方になっていく。ずっと反目していた靴作りの要を担う従業員ドン(大山真志)ともボクシング対決で分かり合え、ミラノの見本市のショーに出品すべく、試作に試作を重ね「キンキーブーツ」が完成に近づく。ただ、その一方でロンドンに置き去りししてしまってる二コラとは別れることになってしまう。それに、完璧を求めるチャーリーに従業員の負担がかさみ、予算不足の判明などのトラブルも発生、その上ローラとチャーリーの「キンキーブーツ」へのそもそもの考えにぬぐえない違いがあることがわかる。ローラは男でも履きたい者が履ける「キンキーブーツ」を、チャーリーは女が履くための「キンキーブーツ」を作ろうとしていたのだった。従業員らこそ懸命にショーに合わせて「キンキーブーツ」を完成させるが、ローラとチャーリーは喧嘩別れをしてしまう。予算がなくてとうとうチャーリーは自ら「キンキーブーツ」を履いてミラノのランウェイに上がることになるが…。

 

 

 

 

冒頭、観劇マナー注意喚起はお約束のドンによる笑いと煽りを含めたもの。ここでもう気持ちが上がった。

楽曲はもちろん、テンポ、スピードが全てロックのノリなので息つぐ間も無く次のシーン、次のシーンと展開する。作品自体がいいので悪くなりようがない。客席もノリが良く、私自身もラスト、エンディングは歌い出して踊りたいくらいだった。完全に「キンキーブーツ」が日本に根づいたと思った。とても楽しかったし面白かったしじんわりした。

カーテンコールも、会場が明るくなりアナウンスがあったのに鳴りやまない拍手に応えてくれた。久しぶりにこういうの観た。それだけ観客の満足度が高かったということだろう。

 

有澤樟太郎のチャーリーは普通の男性だった。熊谷彩春の二コラもそんなチャーリーに合うほどの女性。田村芽実のローレンもアクがそれほど目立たない可愛らしさが目立った。そして甲斐翔真のローラは、なるほど、そういう解釈(と言葉にするのが難しい)かという感想。甲斐ローラは全体的におとなしめで品がある。

今公演が通算150回目となるものだったようで、有澤樟太郎自身はまだ8回目だとか言っていたから、これから変化していくかもしれない。

 

次は東啓介×松下優也で観に行く予定。


 

ところで、今さらだけど、ライセンスを持ってるのはアミューズなので、だからローラが甲斐翔真であり松下優也なのかなと思った。とすれば、前回の城田優は異例であり、本当に三浦春馬の追悼の意味もあったのではないかと思った。チャーリーは小池徹平だったし、ローレンもソニン(アミューズだけど)、ニコラもドンも変わらない。前回も「キンキーブーツ」が観られて良かった。城田優のローラはサイモン時との違いがはっきりしていて素晴らしかったし、小池徹平のチャーリーはもっと頑固だったし、ソニンのローラはもっと弾けてクセ強で個性的だったし、玉置成実のニコラももっと女の嫌な面が見えてた。(全て褒めてる)

 

 

(観劇日 20250508)

 

東京:シアターオーブ 0427〜0518

大阪:オリックス劇場 0526〜0608

 

 

 

 

 

 

 

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