『新幹線大爆破』リブート編Netflix映画版(2025)
原作は監督:佐藤純彌、脚本:小野竜之 による1975年の東映映画『新幹線大爆破』。
監督 樋口真嗣(『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』『シン・ウルトラマン』他)
脚本 中川和博、大庭功睦(おおばのりちか)
草彅剛、のん、細田佳央太、大原優乃、斎藤工、尾上松也、田中要次、要潤、尾野真千子、黒田大輔、豊嶋花、大後寿々花、松尾論、六平直政、屋敷紘子、今野浩喜、坂東彌十郎、ピエール瀧、森達也、西野恵未、佐藤貢三、青柳尊哉、さかたりさ、木原勝利、志武明日香、高柳良一、ゆりやんレトリィバァ、白石和彌、キンタカオ、前田愛、岩谷健司、谷口翔太、丹波義隆、田村健太郎、他。
車掌高市和也(草彅剛)、藤井慶次(細田佳央太)、運転士松本千花(のん)、キャビンアテンダント二宮(大原優乃)が乗務する新青森発東京行きの東北新幹線「はやぶさ60号」に爆弾を仕掛けたという電話が入る。それは時速100キロを下回ると自動的に爆発するというもの。どこに仕掛けられたのかわからないし、いくつあるのかもわからない。犯人は嘘ではない証拠に制限想度を下回った貨物列車を爆破させてみせた。JR東日本新幹線総合司令所の指令長笠置雄一(斎藤工)を中心として警察や政府との連携から対策を始め、松本運転士には走行速度を120キロに保ち、状況に応じて105キロまで落とすことを命じる。車内にもアナウンスされ、乗客は騒ぎ出すものの、乗務員はもちろん、スキャンダルで話題の衆議院議員加賀美裕子(尾野真千子)とその秘書林(黒田大輔)が乗り合わせていて、イメージ回復のためパニック回避に尽力する。
解除条件は1000億円。とうていすぐに用意できる額ではない。が、国民一人当たり1000円の計算になることから、同乗客の一人、起業家でYouTuberの等々力満(要潤)はさっそくクラウドファンディングを立ち上げ寄付を募り始める。最終的には1000憶をクリアするが…。
「はやぶさ60号」には他に、ヘリコプター差配会社の元社長で業務上過失致死を起こした後藤正義(松尾論)、高校の修学旅行生、電気工事士、医師なども乗り合わせ、揉め事を起こしながらも危機的状況に向かい合う。
犯人との連絡が途絶える中、東京駅を通過するしかなくなってくる。同時に問題になるのは爆発物の在処で、解除より前に出来ることをしなければならない。とりあえず爆弾が仕掛けられている車両を特定し、安全とした後部車両に乗客を移動させ切り離し、救助を第一に動くことに。しかし修学旅行生の一人小野寺柚月(豊嶋花)の姿が見当たらず、高市、等々力、加賀美、林、後藤、そして担任教師の市川(大後寿々花)らが前車両に残されてしまう。そして犯人も判明するが、解除は不可能と知ることになる。とはいえ、爆発物の在処がわかったため、今度はその車両を離すべく司令室と残された面々の協力のもと秒単位の作戦が進む…。
複雑な運行表を組み立て直すところは唸る。デジタルでパパパッと入力するのではなく、アナログで線を引き計画を立てるのは、ああ社会は、少なくともこの国は、基本人力と頭脳で保っているのだと思った。根底は情と正義。当たり前か。
さて。そうとうに腹が立った小野寺柚月。その背景がどうのこうのが言い訳になるなら、この世のどれだけの人が暴挙に出るか…とイラつかせてくれたくらいには面白かったのかもしれない。
で、ネタバレすると、爆弾を仕掛けたのは柚月だ。母親が亡くなってから父親に精神的にも肉体的にも暴力を受けていた。その父親小野寺勉(森達也)は1975年の新幹線ひかり109号爆破未遂事件の犯人古賀勝を射殺したと英雄視されており(事実は違う)、当人もそれにすがって生きてる面があった。そんな父親を柚月は心底嫌っており、同時に新幹線に対する私怨にもつながっていた。柚月はネットでたまたま古賀勝の息子で発破技士の古賀勝利(ピエール瀧)と知り合い、爆弾作りの協力を得る。古賀は古賀で父親の犯罪と自殺を抱えており、協力するに躊躇はなかった。
という…なんやねん、それ。ですわ。
柚月は「普通」の「嘘」を壊したいという。そんな高二病みたいな理由で新幹線利用者を殺すのかと。いくらDV被害を受けてるからといって、柚月は家にも爆弾を仕掛け、父親を殺す。なら、それで良かったじゃん。柚月には持病があり心臓モニターが内蔵されていて、それが起爆装置になっている。つまり柚月を殺さない限り爆発は避けられないということ。待て待て、最初から死ぬ気なら家に仕掛けた爆弾で父親と対峙して死ねよ。その他大勢の「普通」の「嘘」まで壊すなよ、と。
柚月の存在はエッセンス程度にして、古賀勝利が犯人でも良かったし、なんなら小野寺勉でも英雄に仕立て上げられたんだから、その苦悩によって、という理由付けも可能だ。
ところで、爆弾はいつどのように誰が仕掛けたんだろう? 犯人は柚月。協力者は古賀勝利しかいないんだけど。
あと、藤井が負傷するのだけど、けっこうな深手に見える。ラストに向けてかなりな衝撃にも耐えなきゃなのに、大丈夫な感じなの?と不思議だった。
乗客は世相を表していて、これがまた数年後、十数年後観たら懐かしかったり古臭かったり興味深かったりするのかなと思った。
残念だったのは、クライマックスのひとつでもある高市が柚月の首を絞めるシーンで、顔に力は入ってるものの手に力が入ってなかった点。無理もないけど、そここそリアリティが欲しかった。
あと、のんを使った意味がわからなかった。正直誰でも出来る役だった。
パニック映画の要素もあるので、VFXにしろ演出上の緊迫感、映像満足度は高い。
前作というか、1975年の『新幹線大爆破』を踏襲しており、現実に起こった事件だったかと勘違いするドキュメント性もあった。続編ではなく、因縁で続いているのが良い。ただ、その事件を起こす理由が腹立って仕方ないだけ。
そんなわけで、1975年版も観てみることにする。
★★★