鈍色の箱の中で | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『鈍色の箱の中で』(2020)

原作は篠原知宏の漫画。

脚本 大北はるか(『午前0時、キスしに来てよ』他)

演出 久万真路(くましんじ)

 

同じマンションに住む幼馴染みの、17歳の高校生になった5人+32歳大人女性1人の話。

以下、ざっくり関係性と物語の進行。↓

 

406号室の桜井美羽(久保田紗友)は子供の頃から基秋に恋している。基秋しか見えてない。本当に好きな人と出会った時のためにキスの練習をしようと持ちかけるが、自分ばかり盛り上がり、やがて基秋には忘れられない女性がいることを知ることになる。さらに、利津が自分に想いを寄せてること、夏美が唯一のなんでも相談できる相手だったが、夏美からは嫉妬の目で見られていたことなどを知り、これまで周りの人間のことなどまったく見てなかったことを反省する…。

 

405号室の辻内基秋(萩原利久)は幼い頃母を亡くし、そんな時マンションの集会所でバイオリンを奏でる年上の女性綾芽に密かに想いを寄せるようになるが、ある日引っ越して行ってしまった。美羽とはキスはするが姉妹のようにしか見ていなかった。美羽の存在が特別なものに感じてきた頃、綾芽がマンションに戻ってきてることを知る。おまけに綾芽から好意を示される。けれど、美羽のことが好きになってること、綾芽には母親の面影を重ねているに過ぎなかったことに気づき、綾芽から卒業しようとする…。

 

106号室の真田利津(神尾楓珠)は、幼い頃、母親(西田尚美)に女装させられていた歪んだ家庭に育つ。母親にDVを繰り返していた前夫にそっくりになっていく利津が目障りだったのだ。今は妹がいるので女装はさせられないが、新しいお父さんとの家族家庭に自分の居場所はなかった。他の4人とは一線を引いてシニカルに見ているし、一番人をよく見ているので、同じマンションに住む幼馴染みというだけの友達ごっこが癇に障るし、昔から好きな美羽が基秋しか眼中にないのも気に入らず、わざとトラブルになるよう仕向ける。最終的には美羽の優しさに救われる…。

 

315号室の高鳥あおい(岡本夏美)は悟と交際しているが、それはカモフラージュで、本当は利津のことが好きだった。利津の子を妊娠してマンション中の噂になってしまう(が、そこはそんなに重要でない描き方だったので、周知させた意味がわからん)。昔からかわいくて人気もある優しい美羽に嫉妬心を持っている。(4人の中では一番友達思いで、かつ切なさを持った人間らしい人間に思える。)

 

201号室の庄司悟(望月歩)は誰とでも仲良くなれる明るい性格。あおいと交際しているが、本当は子供の頃、女装させられていたとは知らなかった利津に惹かれ、以降、男であると知ってからもずっと利津が好きなのは止められずにいる。明るさは内に抱えた誰にも言えない悩みの裏返し。(あおい同様、友達思いで優しい人間に思える。)

 

502号室に出戻ってきた河野綾芽(筧美和子)は昔最愛の人を亡くしており、その彼への想いを断ち切る意味でも結婚を決め一度はマンションを出て行ったが、出戻ってきた32歳。愛する人を亡くしたうえ、見限られた自分の不幸と比べ、まだ外を知らず、マンション内で友情と恋愛に一喜一憂している5人が腹立たしく思え、自分に好意がある基秋をはめていく…。

 

前半3話はどうなるんだろうと引きこまれたが、ラストに向けしょぼさが目立ってきた。サスペンスじみて見えたのに、ただのこじらせだったという終結。残念。

毎回キスシーンがあるのが思わせぶりでさすがに鼻についた。まったく意味がないとは言わないが、それほど重要ではないキスシーンを受けなければならないお仕事、大変だなと思った。深夜帯と言っても午前3時くらいにやっていたドラマだったようで、なんとなく納得してしまった。

 

★★(★)

 

 

綾芽がこんな狭い箱の中で惚れた腫れたをやってる若者を嘲笑するのだが、自分こそがそこに救いを求めてるとか、ただただ愛されたいその実感を体で得たいって思いが哀れだった。綾芽が主人公のドラマ、きつそうだけど面白そうだなと思った。喪失感と渇望がうまく描ければだけど。

ラスト、その狭い箱のしがらみから1番に足抜けする美羽の狡猾さにはまいった。悪い意味で。誰よりも強く、誰よりも良い星の下に生まれてる。一番傷つかないタイプ。

 

 

 

 

傷心してる美羽をナンパする男達の中に内藤秀一郎がいるのだが、もったいない、そんな役だけなんて。