『フランケンシュタイン』(2025)東京建物 Brillia HALL
2014年韓国初ミュージカル。原題『프랑켄슈타인』(フランケンシュタイン)。
日本では2017年、2020年、に次いで3回目。
脚本・歌詞 ワン・ヨンボム
音楽 ブランドン・リー
潤色・演出 板垣恭一
訳詞 森雪之丞
振付 黒田育世、当銀大輔
ビクター・フランケンシュタイン/ジャック:中川晃教、小林亮太
アンリ・デュプレ/怪物:加藤和樹、島太星
リトル・ビクター:鈴木琉音、下永龍正
リトル・ジュリア:森田みなも、杉山穂乃果
(ダブルキャスト※太字は観劇日のキャスト)
ジュリア/カトリーヌ:花乃まりあ
エレン/エヴァ:朝夏まなと
ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
ステファン/フェルナンド:松村雄基
アンサンブル:笠原竜司、栗山絵美、石川新太、松村曜生、三木麻衣子、齋藤桐人、宇部洋之、山田裕美子、宮野怜雄奈、半澤昇、 荒木啓佑、りんたろう、伊宮理恵、吉田萌美、松田未莉亜、江見ひかる、杉山真梨佳、荒川湧太、田中真由
スウィング:高木裕和、大川永
19世紀。戦時中もう一歩のところでビクター・フランケンシュタイン(小林亮太)に命を救われたアンリ・デュプレ(島太星)。幼少期、医者の父をもってしても母親をペストで亡くし助けられなかったことをきっかけに、命について考えるようになり、生命を創造することに夢中になった科学者ビクターと、軍医として活動をしていたアンリが意気投合するには時間がかからなかった。アンリはビクターの助手として共に研究実験を進める。
しかし戦争が終わると新鮮な死体、特に欲していた脳が入手しづらくなった。そこで葬儀屋を通して頭部を手に入れる手はずを整えるが、その葬儀屋に金のために殺人を犯され、ビクターがあらぬ疑いをかけられる。ビクターの考えに心酔しているアンリは、研究を続けて欲しい一心でビクターの身代わりになり処刑される。ビクターはアンリの意志も汲み、またアンリを復活させたい思いで実験室に籠る。そうして生まれた新しい生命は、見た目はアンリでも中身はビクターのことはおろか、自分のことさえわからない怪物(島太星)だった…。
怪物がビクターのもとを去って3年の月日が流れる。ビクターは幼馴染みのジュリア(花乃まりあ)と将来の約束を果たし、怪物(アンリ・デュプレ)は行方知れず。ただ、ここ最近森のあちらこちらで動物の死骸が発見され、人々は恐怖を抱いていた。
怪物はこの3年間、まさしく怪物として扱われ、闘技場を営むエヴァ(朝夏まなと)、ジャック(小林亮太)夫婦によって拾われ見世物にされる。ここで同じく人間以下の扱いを受けているカトリーヌ(花乃まりあ)と出会い、言葉を覚え、人間のいない地に行きたいというカトリーヌに心を寄せる。しかし、金貸しのフェルナンド(松村雄基)にそそのかされ、雇い主のエヴァ、ジャック、そして唯一心を許し合えた怪物を裏切る行動に出る。カトリーヌを失い、居場所もなくなった怪物は再び彷徨うことになる。
昨今の不穏な状況に、とうとうジュリアの父ステファン(松村雄基)の刺殺体が見つかる。その犯人にビクターの姉エレン(朝夏まなと)が仕立て上げられ、処刑されてしまう。エレンの遺体の前でまたも命の復活を施したい思いに駆られるビクター。そして前後して全てを思い出したかのような怪物が現れる。ビクターへの復讐を誓って…。
怪物として命を与えられ不遇の道を歩むことになった者、命を繋ぎ留めたい純真な思いから怪物を造ってしまった者、怨恨と贖罪、復讐と後悔、二人は対外的には分かり合えないまま、その一生を終える…。
一幕の始まりが一幕の終わりで説明づけられる。そして新たな展開となる二幕へ続く構成はとても良かった。同じく二幕の始まりも、一幕がビクターの記憶を中心に語られるのに対して今度は怪物の記憶で語られるのもわかりやすい。ざっくり言うと、一幕はビクターのそれまでの人生、二幕はその後の怪物の人生だった。
この作品の見どころとしては、一幕と二幕とで、メインキャストが、キャラクターが正反対の二役を演じるところらしい。なるほどそうで、比べてみるとどちらのキャラクターが合っているかとか、魅力的かとか考えてしまう、そういう楽しさがあった。ちなみに、ビクターよりもジャック、ジュリアよりもカトリーヌ、ルンゲよりもイゴール(しゃべらない)の方が役者が魅力的に見えた。特に小林亮太の声質がジャックにピッタリのように思えた。
ビクターとアンリの友情がひょっとするとBLのノリにも見えて、邪ながら萌えポイントも多かった笑。それがカーテンコールでのお互いやりきったという喜びにあふれたパフォーマンスで昇華された感じだった。キャスト陣のそういった高揚感が見られると、やはりこちらも満足度が上がる。
笑いもあるし―主にビクターの執事ルンゲ(鈴木壮麻)とのやりとり―、話の流れもスムーズだし、中盤までは良かったが、ラストへ向かう流れが冗長。しつこい。その上、ビクターが救われないし、アンリの気持ちも救われないで終わる。ただの逆恨み物語になっての終焉はどうなんだろう? 必要な言葉がなく、余計な言葉が重なっていく。せっかくの友情、生命の冒涜ではあるけど理想に燃える思い、人間愛がすべて潰された印象。そしてラストは北極の地という設定だと思うのだが、すでにその設定が無理があるんで陳腐。北極は怪物とカトリーヌが辛く悲しい人生を共有し合うシーンで楽園として出てくる。その流れ上持ってきたのだろうけど、その地を実際に使う必要はない。目指すだけで充分伝わる。
見どころはあるし、ミュージカルを堪能するには充分な歌唱が続くので、それなりに楽しめる。
ブリリアホールは音響いいと思う。席は遠かったり色々だけど、だいたいいつも真ん中で観られてるせいか?
(観劇日20250416)
東京:東京建物Brillia Hall 0410~0430
愛知:愛知県芸術劇場大ホール 0505~0506
茨城:水戸市民会館グロービスホール 0510~0511
兵庫:神戸国際会館こくさいホール 0517~0521