水穂の小説置き場とひとりごと -9ページ目

水穂の小説置き場とひとりごと

ファンタジー小説を執筆中……のはずw


「ベティ!!」

 その姿を見て、ミンティは悲鳴に近い声で少女の名を呼んだ。

 昼間買ったばかりのワンピースがボロボロになっている。そんなになるまで、一体何をされたのか……

 ミンティはブライムを睨みつけた。

「あなたベティに、何したの!? イルザくんは…?」

「……貴様が、ミンティという女か……」

 質問には答えず、一人ごちるブライム。ラズルはさっきの態度とは一転して、姿勢を正し直立している。

「ご苦労だったな」

「は。しかし、鼠は取り損ねました。すみません」

「かまわん。きっとその鼠は、畑の外れでぐっすり眠っているだろう。あとは、私に任せたまえ」

「はい」

 鼠、というのがイルザのことだと、ミンティには分かった。

 眠らされたということは、殺されてはいないのだろう。そう、信じたかった。

 ブライムは、少女を放り出すように手を離した。そのまま地面に座り込む少女。

 そしてゆっくりと、ミンティの前に立つ。

「ベティ…!」

「初めまして。ブライム・ハーバーだ」

 無表情のまま、一方的に話し始めるブライム。

「私の娘、レイスがお世話になったようだな。礼を言うぞ」

「娘…!?」

 彼の発言に驚いたのはミンティだけではなかった。彼の背後に控えているラズルすら、驚愕の表情を隠せないでいる。

「そうだ。だから引き取りに来た。……しかし、レイスはお前の事が気に入っているようだ。そこで相談なのだが、我々に協力する気はないか? 協力すれば、レイスと一緒にいられるぞ?」

 ブライムの眼光が怪しく光る。

 もちろんミンティは、素直に応じるつもりはなった。

「協力って……一体、あなたはベティとわたしをどうするつもりですか?」

「話したら、協力してくれるのかね?」

「何も知らなければ、協力もできないわ」

 ミンティは強気に発言する。今の状況を把握してないわけではないが、どうせ殺されるならば真実を知りたいという思いが強かった。

 そんな彼女の態度にブライムは、

「……まあ、よかろう。それで協力しないのならば、殺すまでだ」

 言い放ち、煙草を取り出す。火を付け、煙を吐く。

「レイスの力は、知っているな? 何人たりとも寄せ付けない、消去の力。しかし、お前には何の影響もなかった。それは、何故か――」

 煙草を吸い、ミンティの目を見据える。

「お前は、この村の出身ではない。違うか?」

「…!」

 唐突に真実をつかれ、動揺するミンティ。

「両親はなく、孤児として育ち、やがてこの村で一人暮らしをはじめた」

「ど、どうして…?」

 心拍数がどんどん上がっていく。もしかして、この人は……

「私は、お前の正体を知っているからさ」

「!」

 思わず、目を見開くミンティ。

「…わたしの、正体――?」

「なんだ、やはり無意識だったのか。偶然とは、恐ろしいものだな」

 薄笑いを浮かべ、ブライム。

「ちょ、ちょっと待って。さっきから、何を言ってるの? わたしが、何――?」

「お前もまた、レイス同様、人ではない」

「―!!」

 人ではない。その言葉に、ミンティは今度こそ言葉を失った。

「おそらく、天使の眷族に連なる精霊族の末裔だろう。人との間に生まれたのか、純粋な精霊族かは知らんが、人に近いという意味では、レイスとは大きく違うがな」

 精霊族――それは、人とは違う世界に存在しているが、自然のバランスを保つため、人や動物、さまざまな形になってごく稀に現れる種族である。しかし、出身が不明だったり、やや変わった能力があるなどない限り、はっきりとした特徴もないため、実際に確認されている精霊族はほとんどいないに等しい。今現在、精霊族を見分けるための研究がなされているという噂は聞くが……。

 本当に、本当だろうか? ミンティは動揺する心を抑えつけるかのように、疑いのまなざしをブライムに向ける。

「確たる証拠があるわけではない。が、証明できるものならある」

 言うなり、左手首の蒼い宝石がついたバッチを見せる。

「これは、ティアーズ・サファイアと呼ばれる宝石だ。数少ない精霊族の涙を特殊な技法で凝固・圧縮させて造られた物だ。レイスの力を相殺することができる。お前がレイスの側にいても平気な理由、これで分かったんじゃないか?」

 再び煙草を吸い、煙を吐く。

「レイスが着ている服を見ても分かる。お前の力が及ばないものには、レイスの力がダイレクトに現れる。しかもお前自身だけではない、村全体に与えていたレイスの力をも押さえつけ、復興させるほどの能力だ。これ以上ない、証明になるだろう」

「……」

 ミンティは、何も言い返せない。本当に、自分が精霊族なのか、信じることができなかった。

 ちらっと、ブライムは座り込んだ少女に目を向ける。

「我が娘とはいえ、あの力には手を焼くのでね。レイスが持つブラッディ・ルビーを介して、このティアーズ・サファイアでコントロールできなこともないが、限界がある。だから、お前に協力してほしいのだよ」

「…あの、ペンダント…」

「あぁ、あれはティアーズ・サファイアと対象の宝石だ。レイスの意識に反応し、力をコントロールする役割がある。狂った研究者が何千万という人間の血を圧縮・精製して作り上げたものだ」

 ミンティのつぶやきに、恐ろしい説明をさらっと答えるブライム。

「な、何千万……」

「精霊族の涙を無理やり絞り取るのも悲惨だがな。どっちも狂った宝石には違いない」

 自嘲気味に口をゆがめ、残り少なくなった煙草を吸うと、足元に吸い殻を落とし、踏みつける。

「そろそろいいだろう。答えを聞こうか」

「…ベティの力をどうするつもりなの?」

「大きな力を欲するのに、理由は一つしかないと思うが?」

 それを聞き、ミンティは大きく深呼吸した。覚悟を決める。

「なら……協力できません」

 体中が強張るのを感じた。手が、足が、小刻みに震える。

「そうか……残念だよ」

 ブライムは静かにつぶやくと、数歩下がり、距離をとる。

 ゆっくりと、腰に携えている剣を抜いた。

「悪く思わないでくれ。レイスの力の脅威となる存在は、消しておかなければならなのでな」

 おもむろに剣を構えた、その時――

 ヒュッ

 風を切る音と共に、

「させるかぁ!」

 キィイィン!

 激しい鍔迫り音が響く。

「…ラズル…貴様…」

 背後から切りかかったラズルに、気配で察したブライムは、振り向きざまその剣を受けたのだ。

「レイスの捜索協力にミンティちゃんの捕獲。依頼された仕事はここまでだ。彼女を殺すことは内容に含まれていないぜ」

「だから、邪魔をするというのか? ふん、愚かな奴め!」

 押し返し、その勢いで離れ、体勢を立て直す。

「私に従っていれば、それなりの地位を与えてやったというのに」

「もう世界を取ったつもりかよ? 気が早えなあ!」

 言い終える前に、切りかかるラズル。

 臆せず、ブライムは軽く受け流す。

「そういうお前は、女を守るナイトのつもりか?」

「悪いか! 俺にとっちゃ世界なんざどうでもいいね!」

 絶えず攻撃を続けがら言う。

「だが、彼女を殺すって言うんなら、話は別だ!」

 カキィン!

 ラズルの剣が、ブライムの甲冑をかすった。

「むう…っ!」

 ブライムは、ラズルからいったん離れ、間合いを取る。

 荒々しい攻撃だが、的確に繰り出してくるその腕前は、雑魚のそれとは比べ物にならない。やや圧倒されているかのように見えるブライムだが、その表情にはまだ余裕があった。

「レイスを連れて、俺とミンティちゃんの前から消えてくれませんかねぇ?」

「無理な相談だな。この女はいずれ邪魔になる。今のうちに消しておきたいのでな」

「なら……」

 ラズルは、隙を見せぬまま、スッと剣の構えを解く。

「お前の野望を断つまで!」

 言うなり、少女へ剣を向け、振り下ろす!

「――だめぇぇぇぇ!」

 ミンティの悲鳴が響く!

 しかし、ブライムは慌てた様子もなく、

「…ふっ、バカめ」

 にやりっと笑うと、左手の蒼い宝石が光を放つ。

「――ア、ア……アアア――」

 少女の胸元にも、同時に赤い光が宿る。

 ぶうぅぅぅぅん!!!!!!!

 鼓膜まで震えるような、振動音が響いたかと思うと、

「う、ぐ、うああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 少女の周りから、蜃気楼のように歪んだその力が広範囲に広がる。

 近くにいたラズルはあっという間に飲みこまれた。身体がどんどん、溶けるように消え始める。

「い、いやあ!」

 その光景をまともに見ることができず、ミンティは目をそらした。ぽろぽろと、涙が落ちる。

「ふ、ふふふ……はははははは! すごい! これはすごいぞ!」

 ブライムは歓喜に満ちた表情で、ラズルが消えていく様を最後まで眺めていた。



――続く――



OUT of HARMONY (11)

昨日、今日と。

ずーっと書き続けております、OUT of HARMONY。

身を切る思いで連続うpに相成りました。

なんかもー、説明台詞ばっかりで、どーつなげていいかも分からず、疲れましたw


あのさ、普通、ここでこんな反応しないよね?

てかさ、暴露しすぎぢゃね?


ってな突っ込みが来そうなもんですが。

だってー。いずれは説明しないといけない部分ですもん。

リアルで考えたらありえないことばっかりですけどぉー。

はい、言い訳です、すみません( ノД`)シクシク…

あぁ、自分の文才のなさと、構成力の弱さに打ちのめされました。


てかまあ、プロットも立てずに書くからだろーw


そんなわけで(何)

いろんな突っ込みが来ることを覚悟して、うpしましたよ!

きっとこの先も、そんな覚悟の上、うp予定(爆)

だいぶ書いてて、今(11)に入りましたww

でも、チキンなあたしは手直しや矛盾が怖くて即上げやめましたw

11終わって、問題ない(ことはないだろうけどw)って思ったら順次上げていきますね~。


さあ、ラストどーしよう!?(ぇ)


 ミンティは、木の根元に座り込み、月を見上げていた。

 頭の中は、ベティのこと、イルザのこと、隊長のこと、村のことがぐるぐると回る。

 本当なら、じっとできる状況ではない。でも、ここで待っているしか、彼女にできることはなかった。

(なんで、こんなことに――)

 平和な日常。優しい村人たち。明るいレストランの人たち。かわいいベティ。

 ごく普通の、あたりまえの日々を、平凡に過ごしたいだけなのに。

 はあ、とため息をつき、膝に顔をうずめた。その時――

 ガサガサッ…

「!」

 草木をかき分ける音。それはすぐ側だった。

「誰!?」

 その方向へ声をかけ、思わず立ち上がるミンティ。イルザでないことはすぐに分かった。

 彼が村へと向かってから、そんなに時間は経っていない。こんなに早く戻ってくるはずがなかった。

 ガサガサ…ザッ、ザッ!

 道を作るかのように、茂る草木を剣で薙ぎ切りながら、一人の男が現れる。

 それは、ミンティもよく知る男――

「いよう、ミンティちゃん」

「……隊長、さん……」

 隊長――ラズルは、いつもと変わらない声で、いつも通りの表情。しかし、今はそれが余計に怖く感じた。

 思わず、一歩後ずさる。

「こんなところで、何してるんだ? もう暗いし、一人歩きは危険だぞ?」

「た、隊長さんこそ、どうして、ここに?」

 恐る恐る、問うミンティ。

「イルザの小僧を捜してるんだ。あいつの仲間にこの隠れ場所の存在を聞いてな。そしたらイルザじゃなく、ミンティちゃんがいたってわけだ」

 素直に答える彼は、いたっていつも通り、優しい隊長のままだ。

 ミンティに正体がバレていないと、思っているのだろうか?

 それならば、ミンティもいつも通りを装い、なんとか彼から離れようと考えた。

「…そうだったんですか。わたしは、ベティを捜してたら、たまたまここに。あのあと、すぐに一人で出掛けちゃって。あんまり遅いから心配で捜してたんですけど、ここら辺にはいないみたいです。だからもう、戻りますね」

 きっと引きつっていたのではないか、と思うくらい無理な笑顔でそう言い、歩き出す。

「おう、なら送ってってやるよ」

「一人で大丈夫ですよ。隊長さんはイルザくん、捜してください」

「いや、そういう訳にはいかない」

 彼はミンティの前に立ち、行く手をふさいだ。

「本当に用があるのは、キミだよ、ミンティちゃん。……イルザから、聞いてないか?」

 低いトーンで言い、眼光が鋭くなる。彼の持つ剣が月明かりを不気味に照り返した。

「――!」

 彼の態度を見たミンティは、思わず背を向け、全力で走りだす!

「おっと、逃がさないぜ!」

 予測していたのだろう。ラズルは素早くミンティの右手首を掴み、引き寄せる。

「痛っ! 離して!」

 イルザに掴まれた時とは違う、禍々しい強制を感じる力に、ミンティは顔をしかめ、叫んだ。

「やっぱり、な。あの小僧め、いつも逃げ足と根回しが早くて困る」

 ラズルはイルザの行動を先読みしていた。直接追ったり、ミンティの家へ行っても捕まえられないと踏み、村の子供たちから彼の隠れ場所を聞きだしたのだ。

「ベティをどうする気なの!?」

 ミンティはなんとか逃れようと抗うが、ラズルは平然と掴んだままだ。その手は離れる気配すらない。

「自分のことより、あいつの心配か。ミンティちゃんらしいな」

 ラズルはそのままミンティの身体を木の幹に押しつけ、剣をその細い首に当てた。

「……っ」

「暴れると、怪我するぞ?」

 そう言うと、剣を地面に突き刺す。ミンティの両手首を左手でつかみ、彼女の頭上へ持ち上げ、空いている手でロープを取り出し、両手首を拘束する。残ったロープの端は、太い木の枝へ縛り付けた。

 ぶら下がる格好となったミンティは、ますます身動きが取れない。

「なんで、こんなこと……」

 声が震えているのが、自分でもよく分かった。

「わりぃな。これも仕事なんでね」

 全然悪びれた様子もなく言うラズル。

「どうする、つもりですか……?」

「そうだな。とりあえず、ブライム様をお呼びするか。……本当は、呼びたくないんだがな」

 冷静に答えると、小枝を集め、火をおこす。

「呼びたくない?……仲間、じゃないんですか?」

 ミンティの言葉に、ふっと笑うラズル。

「俺は、たんに雇われただけだ。報酬が破格だったから受けたが、出来ることならあんな奴に関わりたくはないさ」

 小枝がくすぶり始めた。少しずつ、煙が上がっていく。

「ベティのこと、何か知ってるんですか?」

「ああ、もちろん。……知りたいか?」

 ラズルはミンティを見つめ、ゆっくりと近づいた。恐怖なのか、ロープでの痛みのせいか、手が震える。

「教えてやるよ。俺は、ミンティちゃんの味方だからな」

 地面に刺さった剣を抜き、鞘に収めながら言う。説得力はない。

「……」

「その目は、信じてないな? まあ、無理もないか。でも、本当だよ。なぜなら、俺はずっと、ミンティちゃんが好きだったからさ」

「っ!」

 そっと、ラズルはミンティのほほに触れる。ミンティは反射的に顔をそむけた。

「だから教えてやるよ。キミがベティって呼んでたあいつは、人間じゃない」

「え?」

 思いもしない言葉に、ラズルを見る。その目は、笑っていない。

「死んだ人間に、全ての物質を消す力を与えて蘇らせた、造られたモノらしい。その力ってのは、ミンティちゃんも見ただろう。存在するだけで周囲のものを急激に劣化させてしまう、恐ろしい力だ。それがどういう訳か研究施設からいなくなっちまって、センターシティの偉いさん方が必死になってさがしてたって訳だ。だがブライムは、あいつの力を自分のものにするつもりらしい。大方、世界征服でも狙ってるんだろう」

 まるで人ごとのように語るラズル。ミンティは信じがたい話に、言葉が出ない。

「まあ、俺には関係のないことだ。でも、ブライムは何故かキミも利用しようとしてる。場合によっては、殺されるかもしれない」

 殺される――ミンティは、顔が青ざめていくのを感じた。それを見てラズルは、

「大丈夫。俺が守ってやるさ」

 そう言うとミンティの黒髪をなでリボンをほどき、顔を近づけた。サラサラと彼女の髪が肩に流れる。

「……う……」

「この仕事が終われば、遊んで暮らせるほどの報酬が入る。この村を出て俺と一緒になれば、何も心配することはない」

 耳元で囁き、スカートから覗く足に触れる。

「いや…っ」

 その感触に身体をひねって抵抗するが、逃れられない。嫌悪感に涙が滲む。

 ラズルは、髪に触れていた手を徐々におろし、ミンティの胸に触れた。

「……っ、やめて…」

「キミにとっても、良い条件だろ? あの子は危険な存在だ。本来なら、この世にいるべきモノじゃない。もちろん、キミにだって危険が及ぶ。俺は、キミを助けたいんだ」

「…わたしは……」

 ミンティの涙が、こぼれおちる。

「…わたしは…ベティと一緒にいたい…。わたしがどうなろうと、ベティがなんであろうと、ただ……今まで通り、普通に暮らしたい…」

 目を伏せ、訴えるミンティ。しかしラズルは小さく眉根を寄せるだけだった。

「それはもう、無理な話だ。だが、どうしてそう思うのか不思議だよ。まあ、その優しいところもキミの魅力ではあるんだけどな」

 ラズルは、愛おしい人形を扱うかのようにもう一度ミンティの髪をなで、その涙を指ですくう。

「ブライムが来れば、きっと気も変わるだろう。ゆっくり考えればいい。もう一度言うが、俺はミンティちゃんの味方だからな」

 そう言うと、ラズルはミンティから離れ、焚火のそばで立ち止まった。

「……意外と、早かったな」

 つぶやいたラズルの視線の先を追うと、生い茂る草木の間から、少女を引きつれたブライムの姿が小さく見えていた。



――続く――



OUT of HARMONY (10)


 ゆっくりと。確実に近づいている。

 何故だか分かる。そして、それに近づいてはいけないことも。

 でも、だめ。行かなければいけないのだ。

 そこに答えがあるはずだから。

 気がつくと、村の畑が広がる一角にいた。

 その先には、人影。背が高く、がっしりとした体形。甲冑の隙間から見える肌色黒く、筋肉質だ。腰には大剣。

「……やはり、来たな」

 ベティの姿を見とめると、ひげを生やした口元を、にやりと歪める。

「……」

 無反応のベティ。その表情も変わらない。

「覚えておらんか? ブライム・ハーバーだ」

 名乗るも、ベティに変化はない。

「本当に覚えていないのか。それは寂しいな。私の全てを奪っておきながら!」

 言うなり、小型のナイフを投げる。

「――!」

 すっと目を細め、そのナイフを見つめる。

 むぅうん……

 微かな振動音と共に胸元のペンダントが赤く光り、ベティの周囲が歪んだ。そこにナイフが突き刺さる。

 空中に浮いた状態となったナイフは、ゆっくりと溶けるように霧散していった。

「その力、多少コントロールできるのか。成長するとは驚きだ」

「…シ、ラ、ナイ…。ワタシ、ナニ…」

 ベティは、ぼそぼそと、言葉を口にした。彼女の周りは、いまだ歪んだままである。

「なるほど。本当に言葉を覚えたのか。自らの存在を語らないように“造られた”はずが、不思議なものだな」

「!」

 ブライムの言葉に、ベティは初めて反応した。思わず目を見開く。

 それを見たブライムは、ベティの目を見つめた。

「教えてやろう。お前は、全ての物質を消す力を与えられ造られたモノ――つまり、人間じゃない。だから感情も思考も言葉も持たない。センターシティで研究された、破壊兵器、とでも言おうか」

 ブライムは淡々と語りだす。その言葉は、ベティには信じ難く、受け入れられなかった。

 しかし、それをよそに彼は言葉をつづけた。

「だが、元は人間だったのだよ。名はレイス――死んだ、私の娘だ」

 その瞬間。

 ベティを覆っていた歪みが消え、少女はその場に膝をついた。目線が、ブライムから外せない。

 死んだ――娘?

「必ず蘇らせるという条件で、センターシティの極秘実験に娘の死体を提供したのだよ。確かに生き返ったが、記憶もなく、言葉も話せず、その力すらコントロールできず、妻や息子たちを消し去り、そしてお前も消えた。それ以来、ずっとお前を捜していた。

 ……ショックか? 今までそんな表情を見せたことはなかったな」

 ゆっくりと、少女に近づくブライム。

「本能的にここへ来たのだろうが、分かっていたんじゃないか? そのブラッディ・ルビーと……」

 ブラッディ・ルビー。少女が首から下げている、ペンダントの紅玉。

 そして、ブライムは懐から小さなバッチを取り出した。そこには蒼い宝石が埋め込まれている。

「対となるこのティアーズ・サファイアが引かれ合ったのだろう。それは、いわゆる制御装置みたいなものだからな」

 ブライムはバッチを左の袖口につける。そして、少女の目の前に立った。

「このティアーズ・サファイアがあれば、ブラッディ・ルビーを介して、お前の力をこちらでコントロールできる、というわけだ。お前に感情や意思が芽生えていたのは計算外だったが、一応役には立ってくれたようだ」

 言うなり、少女の髪を乱暴に掴む。痛みに、少女は顔をしかめた。

「…ぅっ!」

「こんなに動揺してくれるとはな。力を持たなければ、所詮、子供か」

 ふんっと、鼻で笑い、手を離す。

 重力に逆らえず、そのまま座り込むように膝をつき、少女は力なくうなだれた。

 ワンピースの端がボロボロとほつれる。

 昼間、ミンティが買ってくれた、白いワンピース。突然色あせ、劣化し始めた。

「その服は、あの女が作ったものではないのか」

 見下ろし、冷静なブライム。

「…あの女の正体は、大方予測がついている。うまく利用できればいいが…」

 ふところから煙草を取り出し、火をつける。

「立て、レイス。あの女のところに案内しろ」

「ま、待て!」

 その声は、ブライムの背後から聞こえた。

 ゆっくりと振り向くと、そこにはイルザの姿。

「話は、全部聞いた。そいつ……ベティや、ミンティねーちゃんをどーするつもりなんだ?」

 声が震えているのがよく分かる。ブライムは、ふーっと煙を吐いた。

「……この村の少年か。それを聞いてどうする?」

「……」

 逆に問われ、言葉に詰まるイルザ。

「この村を守る勇者ごっこか? 残念だが、そんなお遊びには付き合ってられんよ。子供には何もできまい」

「や、やってみなきゃ分かんねーだろ! だいたいお前、父親のくせに、ベティを道具みたいに……なんでそんな卑劣なことできんだよ!?」

 子供となめられたことに腹を立て、イルザが叫ぶ。

 イルザは子供扱いさるのが一番嫌いだった。今までイタズラをしてきたのは、偉いといわれる大人のプライドを砕き、隊長や村人たちを困らせることで、イルザなりに子供の力を見せつける為だったのだ。

「私の娘だ。どうしようと勝手だろう? どけ小僧。邪魔をするなら、容赦はしないぞ?」

 言うなり、剣に手をかける。

 イルザの顔がサッと青ざめ、体中が緊張を始めた。汗が一気に噴き出す。

 相手は第一騎士団の団長。本気を出されたら、一瞬で殺されるだろう。

「……ベティとミンティねーちゃんを、どうするつもりだよ……」

 ブライムを睨みながら、震える声で、もう一度聞いた。

 目をそらしたら、殺される――イルザはそう言い聞かせ、極度の緊張で腰が抜けそうになるのを、必死でこらえる。

「……そうだな。どうせ死ぬなら教えてやるか。冥土の土産ってやつだな」

 無表情で、剣に手をかけたまま言う。

「センターシティのお偉方は、レイスの力を使って、近々隣国に戦争をしかけたいらしい」

「な……」

 思わず言葉を失うイルザ。

 センターシティーは平和を願う国だ。防衛の為の武装なり戦力なりはあっても、決して開戦する国ではなかったはず――。

「要は全ての国や地域を、牛耳りたいのだろう。世界征服と言えば分かりやすいかな? その為に研究され、造られたのがレイスだ。しかし、突然の暴走により姿を消したため、この研究がバレる前に探し出し捕える必要があった。それを一任されたのが、父親であり第一騎士団の団長である私だ」

 左手にある煙草の灰が、ハラハラと落ちる。

「もちろん、私一人じゃ捜しきれないのでね。あちこちに諜報部の人間を派遣し、やっと見つけたというわけだ。しかし、私も父親だ。娘のレイスを他人に好き勝手使われるのは面白くない。

 ……ならば、私がその力を使って、娘を提供した見返りに世界を頂くまで」

 にやっと口元のひげが歪む。

 イルザは、あまりのことに、言葉が出ない。

(研究――世界征服? 何を言ってやがんだこいつは!? んなこと、本当に――?)

 現実味があまりにもなく、困惑と憤りが入り乱れる。

 愕然とするイルザをよそに、くっくっくと低い声でブライムは笑った。

「センターシティのやつらの思い通りになってやるものか。試しに、この村を消して見せてやろう。やつら、驚くに違いない」

「!!」

 とんでもないことを言い出したブライムを、イルザは再び睨みつけ、身構えた。

「その為にも、あの女をどうにかしないとな。小僧、居場所知ってるんじゃないのか? 素直に案内すれば、助けてやってもいいぞ?」

「誰が……」

 言いながら、一歩後ずさり、背中に手をまわす。

「てめぇに教えるかよ!!」

 叫び終えると同時に、隠し持っていた石を素早く投げ付けた!

「うぐっ!」

 スピードがついた石は、甲冑と甲冑の隙間を正確に捕え、ブライムの右わき腹をえぐる。

「ベティ! こっちに!」

 ブライムの後ろにいるベティに叫ぶが、その目は焦点が定まらず、反応がない。

「くそっ!」

 ブライムはフラフラとしているが、倒れるまでに至っていなかった。ベティに近づけない。

「この村を消させるもんか!」

 もう一度、ブライムに向かって石を投げる。

 しかし、ブライムは紙一重で石をよけ、一気にイルザとの間合いを詰め――

「っ!」

 ガッとイルザの右腕を掴んだ。

「……残念だったな、勇者くん」

 言うなり、左手に持っていた煙草をイルザの腕に押しつけた。

「―っぅうあああああああああああ!」

 ジュウッと音を立て、皮膚が焼ける。

 ブライムは手を離し、間髪いれずみぞおちに拳をねじ込んだ。

「ぅ……っ!」

 まともに喰らい、イルザは地面に倒れ伏した。

「小僧のくせに、なかなかやるな……」

 わき腹を抑え、低く呻く。

 ブライムは腰の袋から、ビー玉くらいの黒い果実を取り出した。イルザの身体を蹴り、仰向けにする。

 顎を掴み、無理に口を開かせ、黒い果実を潰して果汁を注ぐ。

 微かに甘い果汁と独特な香りを感じた瞬間、視界が揺らぎ、イルザの意識はどんどん遠のいていった。

「褒美にソンヌの実をくれてやる。睡眠薬として使われている実だ。貴様の勇気をかって、今は殺さないでやろう。そこで大人しく寝ているんだな。運が良ければ、生き残れるかも知れんぞ」

 ふんっと鼻で笑い、立ち上がる。見上げれば、遠くから細く煙が立ち上がっていた。

「……見つけたか」

 つぶやき、放心した少女の元へ戻った。

「行くぞレイス。あの、女の所へ」

 少女の左腕を掴み、無理やり立たせ、引きずるように歩き出す。

「…、……、…――」

 呼吸とも取れるような微かな音で、少女は何かをつぶやく。が、その言葉は聞こえず、誰にも届かなかった。



――続く――



OUT of HARMONY (9)

迷走中な水穂です(死)

もうずーっと小説書いて、現実逃避しまくっていますが(駄)


まとまらない!


あのね。やっぱり上げなくてよかったと思った。

大きな書きなおしっていうか、ちょー追加w

書きたいことが多すぎて、まとまらなくなっております。


あぁそうだ、こここーしようと思ってたんだ!

でもそーすると繋がらないぞ? あれあれ?

どーしよう(´・ω・`)

うし、ここに注釈入れて、ここでこう行動させて、こうすればいけんぢゃね?

あー、文章変!


みたいな繰り返しでございます。

なんかもう、先が思いやられる……w


頭の中で妄想が一人突っ走っておりまして。

そろそろエンディングの絵が見えてきそうなくらいw

仕事中も割とOUT of HARMONYのことばっかり考えてて。

そーいえば、ミクロフィラの方全然進んでないや(;´Д`A ```

とにかくもう、短編の方を終わらせないとむりぽw


なんだろうな、もうちょっとこう、かる~くさっくり終わらせる短編のはずが。

いろいろ思いついちゃったのがいけないのね、きっと。

この妄想力をミクロフィラでも発揮できるといいのですが……。


さて、もちょい苦しんで書いてきまー☆(爆)

OUT of HARMONYの8話?を書き終えたくせにうpってない水穂でございますよー。

場面切り替えで、区切りも付いて。

上げようと思えば上げれるんだけど。

なんかね。

いいのかな、これ?って迷ってる。


たとえば。

いろんな人からたくさんプレゼントもらって。

中にはネタ的な実用性のない物や、いらない物も、入ってそうなもんだけど。

全部欲しいものだったり、良いものだったりして、

「え、何? 本当にもらっていいの? なんか悪い気がするよ、大丈夫? 本当にいいの!? 罰当たらない?」

みたいな(何)

たとえが分かりづらいですねwww


一気に書きすぎた感があるのです。

ラストに向けての内容なので、仕方ないのかもしれませんが(;´Д`A ```

このままうp見送って、続きの9話?を書こうと思っています。

それでバランス見て、つじつまが合わなくなったり、重複する部分とか出てきたりしたら、書きなおしたりしようかなーなんて。


実は、細かいところなんで気付かないかもですが、最初の方の1、2辺り、少しだけ書きなおしてたりw

なんか、そういう修正じゃなく、もしかしたら大きく変わるかもしれないので、うp見送ろうかと。

修正の過程も面白そう!なんつってうp希望する人、いないよね…?w

ぶっちゃけ、これ読んでくれてる人ってすっごい少ないから、うpってから大幅に変更しても気づかれなさそうで、なんともえないけどwww


ピグのお散歩でお話ししてくれた人で「読みますね」って言ってくれた人いたけど、コメorペタがないから本当に読んでくれたかどうか分からないんだよねw

まあ、あまりの面白くなさ(暗さ?)に読む気失せたか、コメントするまでもないかw

あ、でも、読んでくれてるだけ本当にありがたいんで、別にコメ&ペタを要求してるわけじゃないですからね!w

いやまぢで。


そんなこんなで、現実逃避しまくって、ゆるゆる書き続けておりますよ報告、でした☆

強制連行された飲み会中な水穂で~す
なんか、いろいろカオスw

明日4時起きなのにぃー

あ、仕事じゃないっす。
完全に知り合いの人達。
あー、帰れるのかしら…小説書こうと思ってたのに…(´・ω・`)

久々の休日を使って。

続きうpってみました。

んで。

普段はワードに小説を書いているので、ブログに上げてるとどのくらいの量書いたか分からなくて。

ちょこっとワードにコピペしてみたところ。

割と書いてない・・・orz

でもお話は進んでるし、かなりざっくり書いてるんだな~と思いました。

ってか要は雑?w

まあ、短編にしようと思って書き始めたものだから、しかたないのかなぁ?


そんなこんなで。

OUT of HARMONYもだいぶ佳境に入ってきた気がしますw

ここから一気にラストへ……!

と思っているのですが、どうなることやら。


いやね。キャラがさ。

まさかこんなことになるとは思ってもいなくてさ。

だってさ。

隊長さんだって、最初は名前も決めてない状態で。

ただの店の常連客で終わらせようと思ってたのに、なんか重要ポジションになっちゃったしさw

イルザくんだって。ほんとうはあんなに熱いキャラじゃなかったのにw

もっと活躍する予定だったルドさんはすでに出番ないしwww

あの、レストランでのお話って、もっといっぱい書く予定だったの!w


ちょっとここで裏設定の話し。

ルドさんには奥さんがいて。

その奥さんとミンティはすごく仲良くって。

時たま夫婦喧嘩の間入ったりするの、ミンティが。

奥さんは、ミンティと一緒で、仕込み兼ウェイトレス。でも、メニューの料理も作れるから、ルドさんの手抜きとかを見抜いては喧嘩、みたいな感じ?w

あとはその日の仕入れ材料によってメニューも変わったりするから、それのいざこざとか?w

んで、ミンティが間に入って、事良く収まる、とw

そんな日常を描きたかったの。本当はw

んで、ベティがやってきて。

その後もミンティはそのお店で働くんだけど、ルドさんとか奥さんとか、ミンティのこと心配してくれて。

お客さんからも、「あの子、そばに置いてちゃいけないと思うよ。ミンティちゃんに意地悪で言ってるんじゃないよ。心配なだけだから」みたいなこと言われる、と。

もっと村人たちから人気者で愛されてるミンティを描きたかったのに、なんかいろいろ端折ってざっくり書いたら、嫌われものみたいになってて(;´Д`A ```

ミンティ可哀想過ぎる・・・( ノД`)シクシク…

この村は別に閉鎖的ではなくて。

よそ者とか平気で受け入れる村ではあるんだけど。

今回の話で、特別異例なよそ者ばかりがやってきたので、村人たちが渋ったり追い出したがったりしてますが。

旅行者が多く立ち寄る村で、中立地帯であることを誇りに思っているので、どの国からどんな人が来ようと、平気なんです、本当は。誰とでもすぐ仲良くなれちゃうのが得意ないい村なんですよ、本当は!w

だからみんながみんなこの村を愛しているし、村人たちを愛しているんです。

それを表現したくて、代表がイルザくんになったんでしょうね、たぶんw


さてここからの話は、ラストへ向けての展開が待ち受けているわけですが。

またざっくり書いてしまうんでないだろうか?w

そうなったら、またこんな感じで裏設定話しを設けます(何)

っつーことで。

続き、書いてきます!

ジャ-ネ-♪(o・ω・)ノ))ブンブン!!


 パキッ

 その瞬間。

(――しまった!)

 思うと同時に、心臓が早鐘を打つ。足の下には折れた小さな小枝。

 こうなったらコソコソしている場合ではない。

「誰だ!?」

 部屋の中から声が掛かる。しかしその時はすでに走り出していた。

 隊長のことだ、きっと感づいただろう。そして、次にどうするのか――

 彼――イルザは走りながら考えていた。

 中立地帯であるこの村を、センターシティの騎士団が無理やり占拠するなんて何かおかしい。そう思って宿に忍び込んでみたのだが、彼の感は当たっていたようだった。

 しかし、核心に触れた話は聞けなかった。結局、あの少女が何者で、彼らはその少女をどうするつもりなのか。そして、あの隊長が裏切り者だったことが、かなりのショックだった。

 いろんなことが分からないままだったが、今ミンティが危険な状態であることは確実である。

 彼らより早く、ミンティの所へ行かなければ――

 イルザは村近隣の地理は完璧に把握している。裏道や近道を使い、確実に彼らより早くつける自信があった。

 でも、ミンティはこの話を信じてくれるだろうか? そして、あの少女をどうすべきか?

 イルザは湧き上がる葛藤と思考でパニックになりそうだった。

 それでも、衝動にまかせて行動するしかなかった。

 すでに日は落ちきり、あたりは闇に沈み、わずかな虫の音と遠くから村人の団欒が小さくきこえる。

 彼女の家に近づいてきた時、追手がいないかあたりを見回す。

「……いねーな」

 息を整えながら、自分を安心させる意味も込めて、小さくつぶやいた。

 もたもたしている暇はない。イルザは急いで近づき、家の扉をたたく。

「ミンティねーちゃん! いる?」

 間もなく「はーい」と、明るい声と共に扉が開く。白いエプロンをしたミンティが姿を見せた。

「イルザくん。……どーしたの?」

 いつもの笑顔から一変、汗だくな彼の様子を見るなり、驚くミンティ。

「…あ、あいつは?」

 隙間から部屋の中をのぞき見る限りでは、ベティの姿が確認できない。

「あいつ? ベティのこと? ちょっと外に出るっていってから、まだ帰ってきてないけど。その辺にいなかった?」

「とりあえず、ここにいちゃまずい! ミンティねーちゃん、来て!」

「え? ちょ、ちょっと!」

 彼女の腕をつかみ、イルザは走り出した。

「待って、一体どうしたの?」

「急がないとヤツらが来ちまう! 説明は後でするから、とにかくついて来て!」

「でもベティが……」

「いいから! あとで何とかする!」

 訳が分からずも、その力強さに腕も振りほどけず、ミンティは彼についていくしかなかった。

 正直、あの少女がいなくて、少しホッとしていた。すんなりミンティを連れ出せたから、だけではない。

 やっぱり、イルザはあの少女が怖かった。あのブライムたちが話していたことも脳裏によぎる。

 近づくこともできないと言っていた“あの力”。あの力ってなんだ? 話し方から察するに、決していいものではないだろう。
 そんなことを考えているうちに、やがて二人はイルザの安らぎの場所へ辿りついた。

 森の中に小さく開かれた場所。すっかり闇に落ちてはいたが、月明かりがうっすらと入り込み、イルザが的にしている岩が照らし出されていた。

「……ここまでくれば、たぶん、大丈夫……」

 はあはあと息を切らし、イルザ。そして、ミンティから手を離した。

「……」

 ミンティも息を切らし、膝に手をつく。

「ごめんよ、ミンティねーちゃん……こうするしか、なかったんだ……大丈夫?」

「うん、大丈夫」

 息を整えて、顔を上げるミンティ。いつもの、とはいかない弱々しい笑顔。

「説明、してくれるよね? 一体、どうしたの?」

 ただ事でない、ということはさすがに分かっているのだろう。イルザをまっすぐ見つめてくる。

「うん……俺なんかが言っても、信じられねーかもしんねーけど……」

 木にもたれかかり、ふぅっと息を吐く。

「俺、この村が好きだ。この村でずっと暮らしたい。だからこの村を、村の人たちみんなを守りたい。俺、悪ガキで、嘘ついたり、イタズラばっかりやってるけど、これは本当なんだ!」

 イルザもミンティを見つめ返し、訴える。

 ミンティは静かに頷いた。

「うん、知ってるよ。イルザくんが、本当はいい子だって、わたしは知ってたよ」

「……ミンティねーちゃん……」

 熱いものが込み上げてくるが、ぐっと抑え、

「だから信じてほしい。今から、話すこと……」

 イルザは、宿で聞いた話を、寸分違いなく話した。ブライムと隊長が話をしていたこと、隊長がラズルという裏切り者だったこと……。

 彼が話をしている間、ミンティは一切口を挟まず、終りまで黙って聞いていた。

「……で、俺、ミンティねーちゃんが危ないって思って、ここに連れてきたんだ……」

 しばらくの、沈黙。やがてミンティが口を開いた。

「その騎士団の人は、ベティの正体を知っているのかしら?」

「うん、きっと知ってると思う。でなけりゃ、捕まえに来ないと思うし。でも、なんで捕まえるのかは、わかんねーけど……」

「…あのね、さっき家に、隊長さんがきたの」

「えっ!」

 突然のミンティの発言に、イルザは声を上げた。

「あ、騎士団の人が来る前だったんだけど」

「何、話したの?」

「ベティのこと。もう追い出せって言わないって。わたしの味方になってくれるって」

 うつむき、地面を見つめるミンティ。

「嘘だ。あいつ、ミンティねーちゃんを利用しようとしてるんだよ」

「そう…イルザくんの話を信じるなら、そうなるよね…」

 悲しみに染まった声が、小さく震える。

「俺は嘘じゃない!」

 思わず叫んだ。

 隊長は村によく尽くし、村人からの信頼があつく深いものということは、イルザもよく理解していた。実際、あの話を聞くまで、イルザ自身も信頼を寄せていたからだ。そうでなければ、今まで度が過ぎたイタズラなどしてこなかっただろう。

 自分の話をすんなり信じろ、という方が難しい。

「…あ、ごめん」

 声の大きさに驚いたミンティを見て、イルザはハッと我に返った。

「うん、信じてないわけじゃ、ないの。ただ、ショックで……」

 味方だと思っていた人間に裏切られる……そのショックはイルザも同じだ。

 ミンティは再びうなだれる。

「…俺が、味方になる!」

「え…」

 イルザの突然の決意に、ミンティは思わず顔をあげて、彼の顔を見る。

「俺が、ミンティねーちゃんの味方になってやるよ! あの…ベティも、一緒に暮らせるように…俺がなんとかする!」

「イルザくん…」

「隊長の代わりには、程遠いかもしれねーけど……」

 きっと強がりだって、見抜かれているだろう。そんな約束ができる根拠なんてこれっぽっちだってない。こんな子供にできることなんて、限られている。それでも、やれることはやってやりたかった。

 しかし、ミンティは優しく微笑み、

「ありがとう」

 そう言って、イルザの頭をくしゃくしゃっとなでた。

 ミンティの微笑みを見て、イルザはホッとしたと同時に、急に顔が熱くなるのを感じた。

「あ、お、俺、ベティ捜してくる!」

 なぜどもってしまうのかよく分からなかったが、決意が揺らがぬうちに、イルザは走り出した。

「ミンティねーちゃんは、ここで待ってて!」

 振り向きざまにそう言うと、

「気をつけてね!」

 と背中越しからミンティの声が聞こえた。

 まずはベティを捜して、その先は、三人そろってから考えればいい。

 イルザは、慣れた森の道なき道を抜け、村へと走って行った。

 その時、一つの影とすれ違っていたことを、全く気付かずに――。



――続く――



OUT of HARMONY (8)


 カツン、カツン、カツン……

 足元の石を拾っては、岩に描かれた的に向かって投げる。

 何度繰り返しただろうか。イルザはイライラしながら再び石を投げる。

 カツン!

 乾いた音を立てて、的の中心に命中した。

「……あの、悪魔めっ……」

 村から少し離れた、森の中。ここは彼のいつもの居場所だった。

 秘密基地、というほどの場所ではないが、ここにいると落ち着くのだ。

 イルザはベティの顔を思い出していた。何も語らない、あの表情、そしてあの力。

 投げられた石が、もし、自分だったら――

 ぶるっと身震いする。そして、「っち」と舌打ち。

「くそっ、どんだけチキンなんだ俺は……!」

 少し大きめの石を拾い、感情に任せて投げる。

 正直、イルザは怖かった。あの力を目の当たりにしたから、だけではない。

 彼には、この場所以外に、秘密基地があった。しかし、最近その秘密基地が無くなっていたのだ。

 壊された、というわけじゃない。ここよりももっと離れた森の中にあったのだが、その森の木々ごと無くなっており、更地になっていたのだ。

 そして、あの少女が現れた。

 ミンティの店での一件、そしてさっきので確信した。あれは、あいつがやったんだ、と。

 更地になっていたのは、かなり広範囲だ。そんな力を持つ者に恐怖を覚えない方がどうかしている。

 それでも、恐れおののく自分が悔しくてたまらなかった。

「なんでミンティねーちゃんは、あれを見ても、あいつを追い出さねーんだ…?」

 不思議だった。他人をほっとけない性格なのは知っているが、村人たちから反感をくらってまで守る必要があるのだろうか?

「ヘタしたら村が、更地になっちまうかもしれねーのに…」

 想像したくなかった。そんなことになる前に、なんとかしなければ。

「ミンティねーちゃん、聞いてくれるかなぁ…」

 はあ、とため息一つ。しかしすぐに石を拾い、思いっきり的に投げつける。

 ガキィン!

 激しい音と共に的の岩がすこし削れた。

 その時、

「やっぱりここにいた! おい、イルザ!」

 彼の後ろから、ひとりの男の子が声をかけた。イルザの仲間だった。

 走ってきたのだろう、息を切らしている。

 その表情は、焦りと戸惑いが入り混じっていた。

「なんだよ、どうした?」

「今、センターシティの騎士団がいきなり来て、村を前線拠点にするって!」

 息を整えつつ、言う。

「はあ? 俺らは戦争に関わらない約束じゃねーのか?」

「なんか、偉い人からの命令らしくて、警護隊の隊長も間に入ったみたいだけど、断れなかったらしいよ。おれ、ヤンさんの宿に案内されるの見たんだ」

 イルザは動揺を隠せなかった。なんでこんな時に……

「…分かった。あのクソ隊長もついてんだろ? なんとか、なるさ…」

 そう言いつつも、不安を隠せなかった。あの少女に、戦争に関わる騎士団。平和な村が、どんどん壊されていくようだった。

「とりあえず、探りいれてみるしかねーな」

 小声で呟くと、イルザは急いで村へと向かった。

 日が、少しずつ傾いているのだろう。空が赤みを帯びてきているころだった。



 狭い部屋だ。

 部屋に入るなり、ブライムはそう思った。

 田舎の小さな村とセンターシティに比べるのも申し訳ないと思うが、我々をもてなすには不十分極まりない。

 軽く荷物整理を済ませた後、小さな椅子に腰かけ、煙草に火をつけた。

 木造の宿での喫煙は禁止と言われていたが、知ったこっちゃない。

 彼は長旅をそれで癒すかのように、ゆっくりと煙草を味わった。

 やがて、扉のノック音が聞こえた。その独特のノックの仕方で、名乗る前に誰が来たが大方予想がつく。

「お休みのところ失礼します。ラズル・パウエルです」

「ああ、やっときたか。入りたまえ」

 言いながら、テーブルの上にあるランプに火をつける。だいぶ日も落ちて、暗くなっていた室内がぼんやり映し出された。

 ギィ…と音を立てて扉が開き、男――ラズルが入ってくる。ランプの明かりはそこまで届かない。

「失礼いたします」

 扉を閉め、そのまま直立不動で口を開く。

「ずいぶんとお早い到着でしたね。もう少しかかるかと思っておりました。しかも第一騎士団の方がいらっしゃるとは思いもしませんでした」

 センターシティに属する騎士団は十三。第一騎士団は最高階級の騎士団であり、戦場において右に出る者はいない軍団である。

「そうか? まあ、事が事だからな」

 ふーっと、煙を吐く。

「それで? どういう状況か、説明してもらおうか」

「はい。ヤツは、約2週間前にこの村のレストランに姿を現しました。おそらく、その前から近くにいたと思われますが、はっきりとした出現日時は把握しておりません」

 微動だにせず、淡々と語る。

「ふむ。続けたまえ」

「レストランに現れた時、“あの力”を発動していたようです。現場を検証したところ、割れたガラス、吹き飛ばされたと思われるテーブルと椅子、ヤツが使ったと思われる食器類、全てが劣化しておりました」

「なるほど。“あの力”は衰えることなく、健在ということだな。ブラッディ・ルビーは持っていたか?」

「はい。確認済みです」

 それを聞き、ブライムは煙草を吸い、煙を吐く。そしてランプの灯を見つめた。

「で、今、どうしている?」

「それが……」

 ここで、ラズルが初めて言い淀んだ。ブライムは目線を彼に戻す。

「レストランで働いていた村人の一人に介抱され、そのまま一緒に暮らしています。言葉も少し話せるようになったとか……お聞きした情報なら、あり得ないことです。他の村人から反感をくらってはいますが、村全体は活気を取り戻し、良くなっていく一方で……」

「その、村人の名は?」

 ラズルの言葉をさえぎり、ブライムが問う。

「…ミンティ、という娘です。ヤツにベティという名を付けています」

「ふむ……」

 ブライムは、煙草の火を甲冑の篭手に押しつけて消し、足元に捨てた。

「そのミンティという女、邪魔かもしれんな」

「邪魔、といいますと?」

 ブライムの発言に、今度はラズルが問う。ブライムは新しい煙草に火を付け、

「ヤツをコントロールするという意味では、役に立ってくれそうだが、我々の目的に賛同するとは思えん。いずれは邪魔な存在になるだろう。とはいえ、すぐに消してしまってはもったいない。その女が何者か、調べる必要がありそうだな」

「ヤツは、どういたしましょう?」

「我々で捕える。その為に来たんだからな」

 煙草を吸い、ニヤリ、と笑った。

 そう、この村を前線拠点にする事は、本来の目的ではない。この村に我々を支援できるほどの物資が揃えられないことは、はなから承知している。

「捕える、とおっしゃいますが、“あの力”がある限り、近づくことも出来ないのでは?」

「案ずるな。ちゃんと切り札を用意してある。それより、ミンティという女を連れてこれるのか?」

 ブライムの問いに、今度はラズルがにやりっと笑った。

「造作もないことです。自分は、村人たちの信頼を確固たるものとするため、努力してきたのですから」

「そうだったな。ラズル・パウエル“隊長”殿」

 隊長と呼ばれたラズルは、苦笑した。

「自分はただの諜報部員です。警護隊の隊長なんてガラじゃありませんよ」

「にしては、なかなか様になってたぞ。転職でもしたらどうだ?」

「御冗談を。これ以上面倒なことは御免ですよ」

 ひょいっと肩をすくめて見せる。しかしすぐに姿勢をただし、

「では、いつ頃実行いたしましょうか?」

「早い方がいい。我々も、暇ではないのでな」

 パキッ

「!」

 小さな音だった。しかしそれは確実に、二人の耳に届いた。

「誰だ!?」

 ブライムが声を上げる。音は外からだった。

 素早くラズルが動く。窓を開け放ち、見渡すと、遠くに小さな人影が去っていくのが見えた。

 日が落ちた暗闇とはいえ、その後ろ姿には見おぼえがった。

「……っ!」

 舌打ちし、外へと向かう。

「ブライム様、自分は鼠を捕まえにいってまいります」

 そう言い残し、ラズルは急いで宿を後にした。

「…神は、もっと急げとおっしゃるのか…」

 小さくつぶやき、煙草の火を消す。ゆっくりと立ち上がり、窓の外を眺めた。

「ならば、仕方あるまいな」

 ブライムは立てかけていた剣を手に取り、部屋を出て行った。



――続く――



OUT of HARMONY (7)