氷の微笑
殆どの時計好きがアイスブルーと聞いて思い浮かべるモデルは一つしかないでしょう。そう、ロレックス、デイトナのプラチナモデルです。
デイトナの最上位モデルに位置するプラチナケースは重量が280gを超えるというとんでも無い時計です。いやもはやトレーニング用具と言うべきか。
私なんかには実用に耐えるとは到底思えない重量ですが、このモデルの存在のおかげでアイスブルー文字盤の認知度は高いでしょう。しかも存外格好良いな、と思えるわけです。
で、探してみるとあらゆる価格帯でこの文字盤は存在しています
Speedmaster 38 / OMEGA
Ref:324.39.38.50.03.001
ケース径:38.0mmケース厚:14.7mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:ステンレス・スティール
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:10気圧(100m)
価格:550,000円(税抜)
結構有名かも知れませんが、スピマス38のアイスブルー文字盤です。これは中々綺麗だと思いませんか?
そもそも38mmのスピードマスターはその使いやすいサイズ感が魅力的な素晴らしい時計なのですが、こんな綺麗なアイスブルー文字盤があるなんて僥倖です。
サンレイ仕上げのアイスブルーはまさに氷床のような美しさがあり、シャープなインデックスと針が氷の結晶のようにマッチしています。
クロノグラフ関係の針をネイビーに統一し、可読性を高めるとともに、デザイン上のアクセントとしても効かせています。
ネイビーのベゼルでダイアルを囲むことで輪郭が引き締まる効果も得られていますね。ただここはポリッシュ仕上げのベゼルでも綺麗だったかな?と思います。
それにしてもよくよく見るとこのスピマス38という時計は色々面白いデザインをしています。
横三つ目のインダイアルは正円に外接する楕円で縁取られており、ベゼルにはタキメーターの目盛に準じてスリットが入っています。
この辺りは古典的なクロノグラフには見られないモダンな意匠と言えるでしょう。
デイト窓は極力なくて良い派のMinority’s Choice ですが、6時位置ならギリギリ許せます。だけど丸い窓は好きではありません…
しかし文句と言えばそれ位で、総じて特徴がありつつもよく纏まったフェイスであると思います。
プッシャーやリューズの大きさも適切で、操作性は良好でしょうし、コマが小さめの5連ブレスレットも腕馴染みが良さそうです。
型番:OMEGA 3300
ベース:ETA 7753
巻上方式:自動巻
直径:30.0mm
厚さ:7.90mm
振動:28,800vph
石数:31石
機能:スモセコ3針デイト、クロノグラフ
精度:COSC認定(日差 -4/+6秒)
PR:52時間
搭載するOMEGA 3330は、ETA7753を大幅に改良したムーブメントです。
殆ど別物と言って良いほど改造されていますが、それでもエボーシュベースという事で、完全自社製のマスタークロノメーター機への更新が進む現在ではさほど人気のある機械ではないかも知れません。
しかし、シリコン製ヘアスプリングとフリースプラング・テンプを採用し、脱進機はコーアクシャル・エスケープメントに改められるなど、その性能はベース機の比ではありません。
クロノグラフ機構もカム式からコラムホイール式となりコストが掛かっています。もはやカムに対して機能的に優れているとは言い切れないコラムホイールですが、“高級感”を出すためにはカム式では物足りないという事でしょうか。
精度もCOSC認定をパスしており、8振動/秒で52時間パワーリザーブと、スペック的には今持って一線級と言えるでしょう。
スピマスといえば手巻きのスピマスプロしかあり得ん!という人は多いかも知れません。特に満を辞してマスタークロノメーター化した新作はスピマスの完成形といっても過言ではないでしょう。
ですがやっぱり手巻きノンデイトのクロノグラフなんて好事家専用のパッケージです。自動巻でデイトありかつ10気圧防水を備えるスピマス38の方が実用性が高いことは間違いありません。
我々時計ヲタのように何個も機械式時計を買い集めるアホでもなければ、50万円以上もする時計にはキチンとした実用性を求めるのが普通です。
その意味では、サイズ感含めて最も使いやすいのはこのスピマス38だということになるでしょう。
いや、それにしてはアイスブルー文字盤はややキャラが立ち過ぎやろ、と思われたそこの貴方、そうでもないんですよ。
<まったく悪目立ちしないアイスブルー>
上のリストショットを見ると分かりますが、アイスブルーというのは実は全く悪目立ちはしません。光が当たると白く光るので、その色味は希釈されます。これなら遠目では殆ど目立たないでしょう。
リストショットを見て思うのはむしろ紺系スーツにはかなり合うし、若々しく爽やかなイメージを演出できるのではないかということです。
この時計が税抜55万円というのは高バリューでしょう。
高い実用性に加えてコーアクシャル・エスケープメントを実装したアイスブルー時計がこの値段というのは納得です。
気になるとすれば、そのうち3330もマスタークロノメーター機に更新されるんでないの?という点です。その可能性は大いにありそうですが、かといってこの色が存続するかどうかは疑問です。
ディスコンでプレミア化するとは言いませんが、珍しいカラーリングでかつ外装&中身も素晴らしい時計なので、今夏爽やかさをアピールしたい人にはうってつけじゃないでしょうか。