それぞれの「もったいない心理」
【運営側のもったいない心理】
阪急阪神HDのステージ事業の売上高から考えると、組ごとに細かな数字の違いはあるとしても、おおむね一組数十億の売り上げがあるようです。
そんなドル箱事業ですから早く稼働して稼いでもらわないと日に日に儲けが減るわけです。
こういう考えの人たちにとっては、収入の数字が減る事に恐怖を感じても、人の悲しみや怒り、喜びなどの「感情」に共感する事が出来ないため他人が何で悲しんでいるのか、何で怒っているのかが分かりません
彼らが、悲しみを感じたり、喜びを感じたりするのはあくまでも数字を通してのことであり、悲しんでいるように見えたり、喜んでいるように見えたりするのは、その場その場に合った表情や言葉、動きなどを学習した結果です。
会見で「申し訳ない」と言いながら「証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい」などと言ってしまったのは根底に「こっちは迷惑かけられて大損してるんだよ
何で世間はこっちに同情せず避難してばかりなんだ」と言う思いが溢れ出た結果「上手に殊勝な風を装えなくなった」という事なのでしょう…
【出演者側のもったいない心理】
毎年、春になると高い倍率を勝ち抜いた宝塚音楽学校の合格者発表の様子がニュースで流れますね。
彼女たちは、幼い頃からクラシックバレエや声楽、日本舞踊などのほかピアノや茶道、華道まで習う子も珍しくはないそうです。
これらを習い続けるには親の経済力は勿論のこと、送り迎えや健康管理などのサポートが絶対条件になり、これらをクリアーしてはじめて受験を目指すスタートラインに立つことが出来るわけです。
そんな努力の中で合格したならよほどの事が無い限り「辞める」なんて事は考えないものです。
ましてや、その道で経歴というものが付いて来るようになったなら尚更です。
それは、ただ単に「これだけ努力したのにもったいない」という心理（別名コンコルド効果）だけではなく、これまで自分を支え応援してくれた親兄弟、親類や友人などに「申し訳ない」という気持ちや「ここで辞めるのは自分のわがままなのかもしれない…」など複雑な気持ちがシーソーのように浮いたり沈んだりする事が余計に判断を迷わせる事になります。
12月5日現在、幕を上げた組もあるようですが特に宙組に関しては世間の目が厳しいのは勿論ですが、今後の自分の身の振り方に悩まれている方も多いようですね。
ま、そりゃそうでしょう。
事は宙組で起こったわけですから、退団までは考えていないにしろ「このまま宙組でやってくれ」と運営に言われても、宙組に在籍している子にとっては今後、芸能界を目指すにしろ、結婚などをするにしろ足枷にしかならない事ですから。
では、ここからは何がどう足枷になるのかをお話ししていきましょう。
一部では、トップだろうが最下級生だろうが基本皆お嬢様なので最後の最後は結婚っていう逃げ道を親が用意するのでは
と言う人もいますが、多分これが上手く行くのは下級生で上級生になればなるほど難しくなります。
今回の会見は、夕方のニュースで各局が生放送するほどに注目された騒動の会見だったので、ほぼほぼ知らない人はいない話題です。
そして、その後から次から次へと「出て来ちゃマズイだろう…」っていう話が出て来て、とうとう「宙組の有志がパワハラ環境の是正を求める意見書を提出していたのに、会見では無視され、11月16日には宝塚の雪組生が集まり、新理事長やプロデューサーと話し合う場が設けられたが、その場で新理事長は“法的にはパワハラに該当しませんが、いじめはあったのでしょう。一昨日の会見では言いませんでしたけど”と衝撃の発言をしたという内部情報が出て来ていると報道されています
また、その後、別の組では演出担当が稽古場と同じフロアにある休憩スペースに酒を持ち込み、上級生たちと飲み会を始め、その様子を見た下級生が抗議したところ、その上級生は「先生に対して言い方が失礼。先生に謝れ」と“逆ギレ”したという話しも出てきて、これについては演出担当が事実と認めているそうです
では、この二つの話から何が分かるかというと「パワハラ環境の是正を求める意見書も握り潰してしまう新理事長が爆誕した。」という事と「人が亡くなって騒動になっている事よりも、先生におもねる事しか頭にない旧体制から何も変わっていない思考の上級生がいる事が証明された」って事です。
それでは話を「寿引退」へ戻しましょう。
あなたがもし宙組や酒盛りしていた組の中から結婚相手を選ばなければならない時、誰を選びますか
今回の場合なら一番スキャンダルリスクの少ない下級生が人気でしょう。
先にも書いたように宝塚にはお嬢様たちがゴロゴロいます。
て、事は娘の親としては、お相手もそこそこ財力のある人を探して来るでしょう。
つまり、財力が見合う相手って事ですね。
名のある企業や、財力のある家の結婚で一番敬遠されるのはスキャンダルです。
結婚した後に「△△と結婚した○○は在籍中下級生をイジメていた
」なんて報道されて巻き込まれ事故になるのは結婚相手本人じゃなくても避けたいものです。
つまり、宝塚のカーストを考えると、今や上級生というだけで結婚相手としてリスクだと思われてしまうって事です。
て、事は問題の宙組にいて下級生を指導する立場だったならより敬遠される確率が上がるって事です
ならば芸能界へ活路を見出せばいい
これについては、以前も話しましたが現在、芸能界には宝塚出身の俳優が沢山いらっしゃいます。
今回の事について勿論口に出す事は無いですが内心「ええ加減にせぇよ」とは思っているでしょうね。
こんな問題を起こしながらも既に芸能界で地位を築いている方々の主戦場に参戦してやって行く自信と覚悟があるならそれはそれで自分の選んだ事ですからよいのでしょう。
今は運営が「イジメは無かったし今までも無かった」と言っているので何となく「守ってもらえてる」と見えるかも知れませんが、これはあくまで五つの組を今まで通りに稼働させたいからで、運営が「そうか首を挿げ替えればいいんだ」と気が付いたらあっさりとトカゲの尻尾にされるでしょう。
「遅かれ早かれ団員は入れ替わるわけで、今までもそうやって運営していたわけだから多少入れ替わりが早くなろうが、一組解散させようが、別の組へ問題が波及して事がこれ以上大きくなる方が損害が大きくなる」と気が付いたら…
しかも今は段々と出て来ちゃいけない情報が出て来ている状態で労基署が入り、これで第三者委員会が入ると「握りつぶした意見書」の事や「いじめはあったのでしょう。一昨日の会見では言いませんでしたけど」と発言した事も聴取されたら…
（そもそもこういう発言を大勢の前でしても統制がとれると思っているところが…もぅね…）
「マズイマズイマズイ…仕方ない、誰かをスケープゴートに差し出して世間の怒りを鎮めるしかないか…」と運営が考えたら…さぁ大変スケープゴートにされるのはさぁーて誰でしょうね。
企業のリスク・危機管理の甘さの危険性
企業や大きな組織で問題が発覚した場合、状況を正しく知る事が解決への近道ですが、そもそもそんな事が起きないようにする事の方が大事な事です。
このブログでは何度となく「ヒヤリハット」の話をして来ましたが、覚えていらっしゃるでしょうか
ヒヤリハットとは、1件の重大なトラブル・災害を頂点として、その下には29件の軽微なミス、事故や災害、その下にはヒヤリとしたりハッとした出来事が300件あるとされる危機管理の考え方の事です。
つまり、今回の問題から言うと劇団員が亡くなるという1件の重大なトラブルが発生したという事は、その下には29件の「亡くなる」という結果に繋がるトラブルがあったという事で、29件の下には助長させる300件のトラブルがあったという事です。
そして、今回の問題以外にも過去に学生との訴訟トラブルや演出家助手とのパワハラ示談トラブルなどが出て来ていて、この三つが同時期に起こった事ではないとはいえ企業の中で起こる重大なトラブルの数としては多過ぎです
勿論、これ以外の過去トラブルも出て来ていますから多過ぎの前に「異常」が付くくらいの多さです
（一つの重大なトラブルに対して末端のトラブルの元が300もあるわけですから、日々、どこかで、何かのトラブルが起きている組織だという事がわかります）
エンターテイメント界のガラパゴス組織
エンターテイメント業界で問題が起こって会見などで気を使わなければならないのは「ファンに向けて」です。
ビジネスとしては、ぶっちゃけ気を使う相手はスポンサーですが「ファンが一番」と言う事の方がファンは安心して、推し自身も安定した数字を保てるからです。
スポンサーもそこは分かっているので「何でこっちが一番って言わないんだ」なんて野暮な事は言いません。
これが一番円滑に回り、誰も傷つかない方法だと知っているからです。
この間の宝塚の会見でモヤモヤしたファンは多かったようですが、そのモヤモヤの一つは、ファンに向けての気遣いや配慮を感じられなかったからでしょう。
現実の話だと分かってはいても、会見ではひたすらに「自分たちは悪くない」をくり返し逃げを打つ、こんなおじさん達が運営するエンターテイメントに歓喜していたのかと現実に戻されたショックが大きかったのではないでしょうか
会見を聞けば聞くほど、後から出て来る情報を知れば知るほどフィルターが外れて生々しい現実を見る…そんな感覚なのではないではないかと思います。
また、宝塚というのは巨大企業が運営するエンターテイメントでありながら恐ろしいほどの時代錯誤な思考の上層部が多く存在するようで、ＳＮＳの拡散力や影響力をなめているかもしくは知らない…何なら「社内は伝書鳩通信もしかして未だに世間も伝書鳩使ってると思ってる」というくらいの時代認識の違いを感じます
遺族とは拗れ、イジメやパワハラの証拠が次々と出て来るわ、労基署が入るわ、第三者委員会が検討されるわ…のこんな中でも今まで通りの「何も無かった」を通そうとするにはさすがに無理があると判断したのか今年のフジテレビのFNS歌謡祭にも呼ばれていませんね
それだけテレビ局などは火の粉が降りかからないように警戒しているという事ですが…今の運営がこれを理解できるのか甚だ疑わしいところです
さてさて、これだけ大事になってしまってどう収拾つけるんでしょうかね
この問題はまだまだ長く続くと思いますので、また折を見てお話ししたいと思います。
このお話が誰かの心のヒントになれば幸いです
今回のおすすめ記事はこちら
【ヒヤリハット関係の記事】
【宝塚関係の過去記事】
