日頃から懇意にさせて頂いているオーディオ技術者の方から、アキバで開催のアナログオーディオフェアを紹介されたので行ってきた。
このフェア、タイトルにアナログと銘打っている通りアナログレコードに関わる究極的技術やその試聴をテーマとする展示会なので、いきおい、来場者の大半が金持ち(っぽい)男性、しかも一癖ありそうなウルサ型年配者だらけという、実にコアでディープなめっちゃ濃い展示会だった。逆に学生などは殆ど見かけなかったのだが、そもそもアナログレコードなんて見たこともなければ、まして取り扱い方なんぞ知る由もない世代の輩にしてみれば、「何がそんなにいいの?」な世界だろうからいなくて当然だろう。
今日びの若い人にとって音楽メディアはCD、もしくはネット配信によるMP3がデフォルト。CDはデジタル処理されているからサンプリングによる量子化ノイズ以外のアナログノイズは発生しないので、ずっと聞き易い。しかも取り扱いも楽。一方、巷には強いこだわりを持って気を吐く往年のアナログレコードファンもいる。お互いに不可侵状態でもある。そんなところがオーディオ世界に於けるこれまでの大まかな構図だろう。
ところが最近になって、アナログレコードが若年層で見直されているらしい。
これは年配者にとって、もしも自分たちが絶えてしまえばアナログレコード文化も絶滅してしまうという危機感からの開放であり 、自説やうんちくを聞いてくれる若い人が増えることでもあり、さぞかしニンマリしていることと思う。尤も、そういう話を長々と聞かされる方としては、多少ウザいかもしれないが。
ところで、このアナログレコード回帰理由の一つに、アナログレコードが「新しいメディアとしてオシャレだから」という理由もあるそうなのだ。なるほど、と思った。つまり、
彼等、若い人にとってアナログレコードは「新しいもの」なのだ。
確かにこれまで見たこともないだろうし、どうやって操作するのか知らない人が大多数だろうから、あの黒い大きな円盤はかなり不思議なモノなのかもしれない。また、アナログレコードはCDに比べてサイズが大きいのでジャケット写真も大きく、ビジュアル的にインパクトが大きいのも確かだ。
しかも実際に聴いてみた感想としては、CDに比べて音は優しく柔らかく、ずっと聞いていても疲れないなどと評価していると聞く。いわずもがな、CDには可聴音のカットオフ周波数があるなどの理由によるのだが、近年は若人たちもハイレゾの音を好む様になってきていることも確かなので、このムーブメント、すなわちCDのカットオフを不快と感じてハイレゾへ、さらにカットオフなしというアナログレコードへの回帰は、老若問わずオーディオを趣味とする人々に於ける一つの流れとして拡大傾向にあると言ってよいだろう。
また、本当かどうかはよく判らないが、MP3の様な可聴レベル以下の音や聴覚特性に影響のない音がカットされた音をずっと聞き続けると、高音に対する聴力が退化するという話を聞いたことがある。アナログ音への回帰は、本能的にそういう危険から 回避しようとしているということもあるかもしれない。
ともかく、アナログレコードの再生音が若い人の間でも見直されているということは大変興味深い。
しかし、本当にアナログレコードの音を忠実に再生させるためには、アナログターンテーブルからスピーカーまでの、
オーディオシステムに於いて、たとえその一部にせよ手抜きがあってはだめなのだ。
これまで市場には、 CDにせよDVD-Audio、或いはSACDでも、アンプからスピーカの経路までの音声伝達経路技術に関しては、高度な技術による再生装置が現在までに多く存在している。が、アナログオーディオを評する場合には、メディアから音を取り出す部分、実はここが重要なのである。早い話、どんなに優秀な再生装置があったにしても、完全なる音のピックアップが出来なければ、再生される音は素材の不出来を隠す様な厚化粧が施された音に過ぎない。つまり、音の再生に当たっては、四の五の言わず、とにかく原音を忠実に取り出すという作業が必要なのだ。CDや磁気ディスクはデジタルデータの取り出しであるが、アナログレコードからのデータ取り出しは、メカ的な微小振動を電気信号に変換するという、まさに職人芸なアナログ世界だけで出来る世界なのである。
そこに敢えて提案を持ち込んだ製品がある。パナソニック、テクニクスブランドの新製品ターンテーブルだ。
これ、「高まる市場要求に対し、満を持して」なのか、「時期を見計らって、市場に仕掛けを持ち込んだ」のか、どちらだろうか。
音の再生は。アナログレコードからピックアップされた物理的振動がスピーカーの振動へと伝送され、更にそれが空気の振動として鼓膜に伝達されるというシステムで稼動するのだから、最終的に再生された音が良くなかった場合、その責任の所在がはっきりしないから、良いターンテーブルだけを出してもシステムとしてはあまり意味はないのだ。
「音、うまくピックアップしたから、後は頼むよ」では、無責任なのである。
それゆえ、パナソニックはテクニクスブランドの復活として、まずはアンプを中心とする再生環境を提供し、次の展開として音の流れを遡上する様にターンテーブルの開発へと駒を進めたのだろう。解説によれば、この新発売のターンテーブルは、かつての商品と概観上はよく似ているもののメカや電子回路、部材等々、総て全く別物だという。
アナログレコードはCDより音が良いという巷の意見。これはプラシーボ効果みたいなもので、正確に言えば「アナログレコードは再生装置によってCDより音が良くなる」なのだ。しかもそこには「飛躍的に」という副詞も加わる。その辺り、違いを知るためにも、ぜひ本当に良い音を生成できる装置でアナログレコードの音を聴いてみて欲しい。
いよいよ、日本技術の棚卸しが終わり、新しい年度が始まった。
今、小生の手元には、昔買ったたくさんのアナログレコードがある。それらの音を忠実に再生できる環境で再度聴き直してみたい。もちろん、それを実践するためには自宅に最高級の再生装置を揃えれば良いのだが、先日バイクを買い換えたばかりだし・・・


























