おりしも、東芝製のEH800という電気機関車、同社府中工場から試運転で出庫したところに偶然居合わせたことがあった。EH800は、交流20kV/25kVどちらもオッケーな北海道新幹線と共存する在来線用の電気機関車。自分的には大変ラッキーなことだった。 なにせ、新車だから、ブレーキの軋み音はハンパない。すさまじい音を立てて停止していた。だから気付いたわけだ。
ところで、そのとき、この車両は直流用ではないのだがなぜ直流区間な府中から単体で出てこれたのかという疑問が起きた。
EH800が開発された背景は次の通りである。
かつて、北海道へ列車で行くためには、青函連絡船で車も列車も船で運ばれた。石川さゆりの「津軽海峡冬景色」がそれだ。それから幾年か経て青函トンネルが完成した後に青函連絡船は廃止され、本州と北海道は津軽海峡を経て文字通り陸続きとなった。この青函トンネルは、ずっと後に予定されていたとはいえ、北海道新幹線の開通を考慮して掘削されたトンネルでもある。
その青函トンネルが開通してから北海道新幹線が開通するまでの期間、青函トンネルには各種客車や貨物の列車が往来してきたが、北海道新幹線の運用が始まってからは北海道新幹線がその役割を担うことになり、在来線は総て廃止された。しかし乗客は新幹線で運べるものの、貨物は新幹線で輸送することが出来ない。従って貨物を輸送するためには、貨物を牽引する電気機関車が新幹線と共に青函トンネルを通過する必要がある。つまり新幹線とトンネルを共用できる電気機関車、即ち貨物輸送の送電線電圧交流20kVと新幹線送電電圧25kVの両電源から受電できるシステムを持つ電気機関車がが必要になったわけだ。EH800はそういう目的のために新設計された電気機関車である。
この青函トンネルという箇所は海底ということもあり、長距離を走行する上では、温度20℃、湿度90%という他と異なる環境を走行する必要がある。冬などはその環境で長時間晒された後で地上に出ると、たちどころに結氷する。これに対する対策が必要となる。
また、津軽海峡の水深140mの更に下を走るので、12パーミルという勾配を20km走る。そのためのブレーキシステムも異なってくる。通常のブレーキだけだと危険なので、電気ブレーキの採用も必要だろう。これらの条件出しを行ったうえで、EH800は2011年7月に開発着手となった。
このEH800については色々な疑問があったのだが、先日さいたま市にある鉄道博物館で「青函共用走行用EH800形式交流電気機関車の開発」という講演会が開催されると聞いて、万難排して聞きに行った。 そこでは色々なことが判り、大変勉強になった。それと同時に、とにかくこの車両は直流回線区間では走れないということも判った。北海道から本州に入ってきたときは、東北本線を経由して宇都宮線の黒磯までの交流区間のみ走行可能ということだ。
ということは、東芝府中工場からの出庫は、北府中の駅から見た時、単体に見えたのだがおそらくディーゼル機関車が牽引していたのではないかということになる。ようやく疑問が解けた。ただし、本当のことを言うと、あの時ディーゼル車量は見えなかった気がしている。従っていまだに腑に落ちない気もしているのだが、直流区間を走れないということは事実な様なので良く見なかっただけ、ということなのだろう。まさか、気合や念力で動いたわけじゃないだろうし。ひょっとすると、この区間だけ東芝管轄として交流を送電しているのだろうか。。。
日本狭しといえど、様々な規格や自然条件が存在する。そこを駆け抜けるということは、一般に知られない多くの苦難がある。先のEH500もこのEH800も車体の色は赤。白い雪の中での赤は識別し易いので、危険回避になるという。そんなことも知ると、機関車を見る目も変わってくる。
「見て知ること、そして知ってからもう一度見ること」。それは、知っていて見ることと異なるアプローチで記憶されていく。























