毒親育ち16
はじめて心を通わせることのできる人と出会い、わたしは幸せだった一緒にいるのが楽しかったけれど、心を片隅で「この時間には限りがある」という感覚がずっとあったケンカをする度にもう、これで終わりなんだもう、わたしから離れていってしまうんだそれが怖くて、自分の反省すべき点を必死で考え、謝っていた29才のとき、彼から別れを告げられたわたしは今まで、生きてきたなかで自分の気持ちを貫き通すことや反抗や抵抗することもしなかった小学校のとき、祖母の体調がおもわしくなくなってから、ずっと、自分を押し殺して生きていたから、物分かりのよさはピカイチだった本当は嫌でたまらない彼からの告げられた別れをどうやって受けとめていいのかわからなかった何もできなかったわたしの心には、ぽっかり穴が空いた自分の中の26才で結婚するという計画も崩れていた母は「女性の幸せは結婚し、子どもを育てることだ」「女性の使命は男性を立てることだ」「だから、男性より稼いではいけない」「男性より、できるようになってはいけない」と、わたしによく言っていたわたしは、それを疑うことなく飲み込んでいたわたしは、無職から一年少したった時、地元の企業に就職していた今までで一番、家から近い地元企業だ高校も大学も評判もそこそこで、周囲の目が届かない場所を選んできた今までのわたしにはあり得ない選択だった腰掛けのつもりでやっていこうそう、思って就職した彼にフラれて、心にぽっかり穴が空いた29才のわたしは、仕事をすることでその穴を埋めようしていた母の唱える「幸せな女性のあるべき像」と、娘のわたしは少しずつかけ離れはじめていた