アルテミスⅡを見て思ったこと
宇宙船は「自由に飛ぶ」のではなく、「落ちながら進む」
アルテミスⅡのニュースを見ていて、私はひとつ大事なことに気づきました。
それは、現実の宇宙船は、アニメやSFに出てくるように宇宙を自由に飛び回るものではない、ということです。
宇宙船というと、多くの人は、強いエンジンでぐんぐん進み、向きを変えればそのまま好きな方向へ飛んでいく乗り物を思い浮かべるかもしれません。
けれども、本当の宇宙船はそうではありません。
現実の宇宙船は、まずロケットでとても速く打ち上げられます。
そして、月のほうへ向かうための「ちょうどよい向き」と「ちょうどよい速さ」を与えられます。
そのあとも、ずっとエンジンで飛び続けるわけではありません。
主に地球と月の重力に引かれながら進んでいくのです。
つまり宇宙船は、自由に走り回る乗り物というより、
宇宙の中へ正確に投げられたもの
と考えたほうが、実際の姿に近いのです。
宇宙船は、ずっと落ちている
ここでとくに大事なのは、宇宙船は飛んでいるというより、ずっと落ちているということです。
たとえば、人工衛星も地球のまわりを回っていますが、実は地球に向かって落ち続けています。
ただし、とても速く横向きに進んでいるため、地面にぶつからず、地球のまわりを回り続けるのです。
これが「軌道に乗る」ということです。
月へ向かう宇宙船も同じです。
宇宙船は地球の重力に引かれながら進みます。
そして遠くへ行くと、今度は月の重力の影響も強くなります。
そのため進む向きが少しずつ変わり、月の近くを回りこむように進み、また地球へ帰ってきます。
つまり宇宙飛行とは、
どのように落ちれば、どこへ行って、どう帰ってこられるかを計算すること
なのです。
宇宙では、向きを変えただけでは曲がれない
地上の車なら、ハンドルを切ればすぐに曲がります。
しかし宇宙では、そのようにはいきません。
宇宙には空気がないので、宇宙船は向きを変えただけでは進む方向は変わらないのです。
進む方向を変えるには、ロケットの噴射で速度そのものを変えなければなりません。
しかも、燃料は限られています。
だから現実の宇宙船は、好きなようにあちこち飛び回ることはできません。
この意味で、現実の宇宙船は、SFに出てくるような「自由な宇宙船」ではなく、
重力と勢いに従って動く、とても繊細な乗り物
だと言えます。
宇宙船は、少し砲弾に似ている
宇宙船の飛び方は、少し砲弾に似ています。
最初に強い力で打ち出され、そのあとは重力に引かれながら飛んでいくからです。
もちろん、ただの砲弾と同じではありません。
宇宙船は途中で少しだけ向きを直したり、軌道を修正したりできます。
そして何より、人が乗って安全に帰ってこなければなりません。
それでも基本の考え方としては、
宇宙船は自由に飛び回るというより、精密に投げられたもの
と考えるほうが、本当の姿に近いと思います。
アルテミスⅡの本当のすごさ
アルテミスⅡというと、多くの人は大きなロケットや打ち上げの炎に目を向けるでしょう。
たしかに、それも大きな見どころです。
しかし、本当にすごいのは、そのあとの飛び方です。
宇宙船は、地球と月の重力をうまく利用しながら、ぶつからず、外れすぎず、最後には地球へ帰ってこなければなりません。
ほんの少し速さや向きがずれただけでも、結果は大きく変わってしまいます。
つまりアルテミスⅡのすごさは、ただ強いロケットを作ったことだけではありません。
地球と月のあいだで、宇宙船がどう落ちていくかを、ものすごく正確に計算していること
にあるのです。
私はアルテミスⅡのニュースを見て、宇宙船とは自由に飛び回る機械ではなく、
重力の中へ精密に投げ込まれた物体なのだ
と思いました。
宇宙飛行とは、力まかせに進むことではありません。
地球や月の重力を読みながら、その中でちょうどよい道をたどることです。
そのように考えると、宇宙船の飛び方は、アニメやSFのイメージとはかなり違っています。
しかし、だからこそ現実の宇宙開発はおもしろいのだと思います。
自由自在に飛び回れないからこそ、そこには正確な計算と高い技術が必要になります。
アルテミスⅡは、そのことをはっきり教えてくれる出来事でした。

















