監督:ショーン・ベイカー
主演:マイキー・マディソン、マーク・エイデルシュテイン、ユーリー・ボリソフ
「タンジェリン」「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」「レッド・ロケット」などで高い評価を受けてきたショーン・ベイカー監督が手がけた人間賛歌の物語。ニューヨークを舞台に、若きストリップダンサーのアノーラが、自らの幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘する等身大の生きざまを描いた。2024年・第77回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。第97回アカデミー賞では作品、監督、主演女優、助演男優、脚本、編集と6部門にノミネートされた。
ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすロシア系アメリカ人のアニーことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァンと出会い、彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルの報酬で「契約彼女」になる。パーティにショッピングにと贅沢三昧の日々を過ごした2人は、休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚する。幸せ絶頂の2人だったが、ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いて猛反発し、結婚を阻止すべく、屈強な男たちを2人のもとへ送り込んでくる。ほどなくして、イヴァンの両親もロシアから到着するが……。
2024年製作/139分/R18+/アメリカ
原題または英題:Anora
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2025年2月28日
ズタボロのシンデレラ
これは面白かった!
カンヌでパルムドールを取ってるんだけど、
カンヌは面白い作品選ぶよね。
もう完全にうまくいかない恋だと思っていたけど、
そこからの予想もしていなかったストーリー展開がとても良かった。
グッときた点
①アノーラの魅力
マイキー・マディソンが最高にキレキレだった。
「スクリーム」でも最後は燃やされ続けてきたマイキーが、
これでもかとスクリーンで躍動する。
ストリップシーンのリアルさもそうだけど、
イヴァンの父親の手下との格闘や罵倒合戦でも感情出しまくりで、
その迫力はまさにクレイジーそのもの。
豪邸でアノーラが拘束された時、
トロスという手下の一人のオッサンと口論になるが、
余りにも会話の内容がひどくて、
思わずにやけてしまった。
ラストでもイヴァンの母親と口論になるところも痛快。
クズ息子の親もクズなわけで、
そいつに鉄拳を喰らわせるがごとし口の悪さ。
エロカッコいいという表現が正しいのか分からないが、
彼女がアノーラを演じたことで、
この映画は大いなる魅力を手に入れていた。
②中盤以降の珍道中
前半のアノーラとイヴァンの甘く狂った、
シンデレラストーリーから一転、
恋の行方は予想通りの地獄絵図に突入していく。
が!
その予想はいい意味で裏切られる。
まさか、イヴァンの父親の手下チームと一緒に行動し、
その手下の一人と恋に落ちていく展開になるとは、
全く予想していなかった。
中盤以降は逃げたイヴァンを探すことになるのだが、
行く場所行く場所で手下チームの面々がドタバタを巻き起こす。
特に、車をレッカー移動されたり、切符きられたり、
車でゲロ吐かれたりと、
トロスの振り回されっぷりが悲しくも最高だった。
というわけで、
当初思っていた予想を大きく外して来る。
後半は、アノーラに恋心を寄せる手下のイゴールの優しさが甘酸っぱく、
僕は完全にイゴールサイドで彼にエールを送っていた。
まさか前半と後半でこんなに感情がグチャグチャになるとは、
この作品の振れ幅に没頭した。
③ラストの激情
ラストでイゴールに送迎されたアノーラは、
イゴールがトロスからかすめてきた4カラットのダイアモンドを受け取る。
そこで、イゴールの本気を感じたのか、
突然アノーラはイゴールにセックスを仕掛ける。
これはいけるぞ!
と、思ったイゴールがキスをしようとしたらアノーラはそれを拒絶。
さらにイゴールはひっぱたかれてしまう始末。
だが、次の瞬間、何かが決壊したかのようにアノーラは号泣する。
そんな彼女を強く抱きしめるイゴール。
そのまま無音のエンドクレジットへ。
最初は、
「え?ここで終わり!?もうちょっとイゴールの恋の行方を見たかったのにー!」
とも思ったが、
冷静になって考えると、
ベストな終わり方だったと思った。
最後の最後でラブラブハッピーエンドを見せつけられるくらいなら、
これはこれで良かったし、
アニー(アノーラのあだ名)から、
本当のアノーラになった瞬間だったかもと思うと、
この終わり方は正解だった。
感想
このクレイジーな物語を2時間たっぷり堪能した。
僕は20年以上前、
アメリカに留学していた時期があって、
そのタイミングでカナダのストリップバーに行ったことがある。
そこはまさにアノーラが働いているようなシチュエーションの小屋だった。
映画の冒頭のシーンと同じく、
僕の手持ちの現金がなくなり、
ショーガールにATMに連れていかれたことがあったので、
ストリップバーの雰囲気が懐かしくも感じた。
それはさておき、、、
非常にパワフルな作品だった。
こんなにもハチャメチャなのに、
アノーラにも、イゴールにも、
何とかうまく結ばれて欲しいと願う僕がいて、
後半の二人の絶妙な距離を見守るソワソワ感はたまらなかった。
18禁なだけあって、
青少年が見れたものではないのだが、
敢えてそこに振り切ったからこそ、
上質なエンタメになっていたと思った。
やっぱりアカデミー賞がらみの作品は、
一癖も二癖もあって面白い。
セックスや罵声に対して耐性のある方には、
大いにお勧めしたい作品だった。
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