別々の家庭で育った他人が
新たに家庭をつくり、
ひとつ屋根の下で暮らし始める。
お互いの生活習慣を
合わせていくその過程で、
どちらかが「我慢」をして
口をつぐんでいても、
最後にはストレスが爆発する。
とはいえ、気に入らないことを
ひとつひとつ指摘して
自分の思うようにしてもらうのも
なんだか違う気がしていた。
結局のところ私は、
自分の生活環境に
他人の痕跡が残ることが
許せないだけではないのか？
……そういえば、
誰かと暮らすことに
憧れていた学生時代にも、
インテリアデザインの
雑誌をめくって見ては、
「なんでこのお宅、
ダンナさんと一緒に
暮らしているのに
こんなに統一されていて
綺麗なんだろう？」
と思っていた。
私にとって「同居人」とは、
自分の環境を侵す人
だったのだ。
だから私は、まずは
自分に自分だけの聖域を
与えてやらなくてはならない。
そもそも、
なぜ同棲を始めたかと言えば、
当時、ジロウの住む家が
他になかったという理由だけ。
状況の変わった今、
別に無理に一緒に住み続ける
必要なんてひとつもない。
そうだな、たとえば。
いつか沖縄に
住みたいと思っていた。
2019年は、鎌倉に移住して
ちょうど10年目だった。
今まさに、
単身で沖縄に旅発つときが
来ているのではないか？
と、思いたった。
沖縄移住の本を買った。
住むならどのエリアがいいだろう？
車の運転に自信ないから、
やっぱり最初は
モノレールのある那覇市内かな。
引越するなら、
溜まりに溜まった本を
処分しなくちゃ。
なるべく持ち物を少なくして……
そんなことを考えながら、
那覇市の不動産屋のサイトを調べる。
頻繁に沖縄まで通えないから、
ある程度当たりをつけておきたい。
そうやって真剣に移住の準備を進めていたら、
何だか違うような気がしてきた。
私は本当に
沖縄に住みたいのだろうか？
家族みたいに
親しい人たちが大勢住む
この鎌倉を離れて？
10年前に単身で鎌倉に
越してきた頃のように、
また、たった独りで一から
知り合いをつくっていくのだろうか？
途方も無く、淋しくなった。
（つづきます ↓）
目次
6）誰かと暮らすのは「あきらめる」ことの連続なのかもしれない
8）私に「自分だけの聖域」を与えてやらなくては。
みあんご！
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