誰かと暮らすことなんて
この先ないと思ってた。
でも、ジロウと暮らし始めたら、
なぜか6年も一緒に住んでいる
ような気がしていた。
それはきっと、
ちょうど6年後の自分の感覚を
時空を超えてキャッチしていたんだ。
変化が起きたのは7年目だった。
最初の6年は、
確かに同じ部屋で
暮らしてきたけれど、
よく考えたらその間、
お互いがほぼ家にいなかったし、
顔を合わせることも少なかった。
私は出張ばかりだったし、
ジロウは深夜か明け方まで
仕事をしていた。
家はほぼ「荷物置き場」で
手を掛けるゆとりもない。
それは、
「一人暮らしの人が二人いる」
みたいな生活だった。
それは、
ママゴトみたいな同棲生活だった。
7年目、状況が変わる。
鬱（うつ）になった私は、
ほとんどの時間を
家で過ごすようになった。
そこからが本当の
「同棲」の始まりだったのだと思う。
同棲し始めたばかりの頃も、
同棲してから6年間も、
荷物置き場が一緒だっただけで、
たいした変わりはなかったのだ。
「もう、6年間も一緒にいるみたいだね」
暮らし始めた頃に
ふとこぼれたそのセリフは、
6年後の未来の自分が
言わせたものだったのだ。
そしてそれは、
「7年後」も同じではなかった。
7年目。
ジロウのお母さんが逝った。
そういえば暮らし始めた1年目は、
私の母が逝ったのだった。
そのとき、天涯孤独になった私を
支えてくれたのはジロウだった。
だから今度は、
喪主となったジロウを
私が支える番だと思った。
母親を亡くすという
哀しみを支え合うこと。
それだけが、
この結婚の役割だったのかもしれないと
7年目の私はぼんやりと思っていた。
（つづきます ↓）
みあんご！
目次
5）それはママゴトみたいな同棲だった
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