ジロウと同棲して
7年目となるのその年。
鬱（うつ）になった。
ほとんどの時間を
家に引きこもって過ごす
ようになって、
ママゴトみたいな
同棲生活は終わりを
迎えようとしていた。
これはまた、ある日のこと。
50代の呑み友達が
ため息まじりにこう言った。
「うちの奥さんって食事の後、
汚れた食器をシンクに
つけとくだけなんだよね。
ボクはそういうの
許せないわけよ。
食べ終わったらすぐ
汚れた食器は洗うでしょ。
だって、そうしないと
次の料理するとき、
洗い物からしなきゃ
いけないじゃない。
……どう思う？ 」
他人と暮らすっていうのは、
そういうことの連続だ。
自分が正しいと思っているやり方と、
相手が良いと思っているやり方は違う。
お互いまったく違う
家庭環境の中で育ってきたのだから。
日々の生活で「あたりまえ」
だと思っていることは、
他の家庭ではまったく違うのだ。
私はそのすれ違いを
ホームステイをしていた
高校生のときに知っていた。
下宿先には同級生が3人。
「洗濯は、それぞれ
曜日を決めてすればいよね。
週に1回すれば間に合うでしょ？」
と言われたとき、
私は一瞬、何を言われているのか
よくわからなかった。
うちの母は、
毎朝2回、毎夕2回
洗濯機をまわす人だったから。
暮らし方の違いをすり合わせて、
お互いの新しいルールを
組み立てていく。
聞こえよく言えばそう。
誰かと暮らすのは、
「あきらめる」ことの
連続なのかもしれない。
たとえば、
シンクに汚れた食器が
溜まっているとか、
汚れた洗濯物が
溜まっていくこととか、
便座のフタが
開けっぱなしなこととか、
洗面所のカガミに
指紋がついていることとか。
小さくため息をついて、
自分が片づければ
それで済むことなのだ。
自分さえ我慢すれば……
それをやっていると、
ある日突然
ストレスが爆発する。
（つづきます ↓）
目次
6）誰かと暮らすのは「あきらめる」ことの連続なのかもしれない
みあんご！
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