分子栄養学のススメ -20ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

健康レベルを大きく低下させる原因の一つとして、外から侵入する病原微生物が挙げられます。
病原微生物は、大まかに、細菌・ウイルス・真菌(カビ)・寄生虫などに分類されます。
これらが、気道、消化管壁、皮膚などから体内に入り込み、そこで定着、増殖することを感染といいます。
このとき、体内ではこれ以上感染を拡大させないように、免疫という仕組みが働きます。

 

しかし、身体を傷害するのは、病原微生物ばかりではありません。

食品に残存している農薬や食品添加物、薬剤などの他、自然界には毒性物質が色々あります。

体内でも、細胞の仕事の副産物として有害物が作られています。

身体はこれらの有害物質を解毒し、排出する仕組みを備えており、これを薬物代謝と呼びます。

 

現代に生きる私たちは、毎日誰もが、体内に何らかの毒性物質を取り込んでいるといえます。

薬物代謝はこれらの物質に対抗する最大の武器なのです。

 

●肝臓は最大の解毒器官

薬物代謝機能を持つ器官は、肝臓・腎臓・脾臓・小腸壁・皮膚などですが、中でも肝臓は最も重要な解毒器官です。

薬物代謝のシステムは、脂溶性物質を水溶性に変える第一段階と、硫酸・グルタチオンなどを結合(抱合)して、さらに排出されやすくする第二段階との組み合わせで進行します。

第一段階を受け持つ酵素としては、チトクロームP450が有名です。

チトクロームP450は、細胞内小器官の小胞体に存在しており、肝細胞に最も多いことが分かっています。

薬物代謝系には、エネルギー代謝と同じような電子伝達系があり、その過程で活性酸素が発生します。

活性酸素は、生体膜脂質の過酸化や、酵素タンパク、DNAの傷害因子となります。アルコールの過剰摂取による肝障害にも活性酸素が関わっています。

そのため、肝臓におけるヒドロキシラーゼ(脂質過酸化物を水酸化し活性を失わせる酵素)の量や、グルタチオンペルオキシダーゼ(活性酸素の除去を担う酵素)の活性は、肝臓が最大といわれています。

 

●黙々と働く肝臓

肝臓は脳に劣らず大きな臓器で、エネルギー産生量も多く、酸素の消費量は身体全体の20%にもなります。

肝臓はアミノ酸を揃えて、身体の構造タンパクや各種酵素などのタンパク質を組み立てたり、体内の「アミノ酸プール」の状態を監視し、調節したりしています。

タンパク質だけでなく、核酸などの窒素を持つ化合物を作るのにも、窒素の供給源としてアミノ酸プールが役立てられています。

 

アミノ酸プールには、20種類のアミノ酸が適正な割合で用意されていることが大事です。

食品中のアミノ酸の種類や割合が問題になるのはこのためです。

体タンパクの分解や合成は絶えず行われているので、良質タンパクを毎日摂取することが必要不可欠といえます。

 

糖代謝の中心も肝臓です。ブドウ糖をつないでグリコーゲンとして貯蔵し、需要に応じて血中へ出します。貯蔵ブドウ糖がない場合には、糖新生もしています。

 

その他、コレステロールの合成ビタミン類の貯蔵ホルモンの活性化胆汁の分泌など、肝臓は多くの役割を果たしています。

 

●肝臓の機能維持に必要な栄養素

肝臓は再生能力の高い組織として知られ、絶えず作り変えを行いながら機能を維持しています。

 

薬物代謝を円滑にするためにも、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄など)、レシチンなどの多くの栄養素が必要不可欠です。

 

発生した活性酸素への対策としては、ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノールなどの抗酸化成分が大変重要です。

私たちの身体は、37兆個とも60兆個ともいわれる膨大な数の細胞でできています。そしてその細胞のほとんどに『ミトコンドリア』という細胞の活動に必要なエネルギーを産生するエネルギー発生装置があります。1つの細胞に1~数千個含まれています。
細胞の活動エネルギーの90%以上がミトコンドリアで産生され、それぞれの細胞に供給されています。ミトコンドリアがしっかりと働いてくれることで、細胞が正常に働き、生命が維持されています。
また、ミトコンドリアは核のDNAとは別にミトコンドリアDNAと呼ばれる遺伝情報を独自に持っています。このミトコンドリアDNAの遺伝情報は100%母親からの遺伝で父親のミトコンドリアDNAは次世代へ遺伝されることはありません。

                (イラスト)沢井製薬HPサワイ健康推進課より

エネルギー産生だけではない『ミトコンドリア』の働き
ミトコンドリアは赤血球に含まれるヘモグロビンに必要なヘムの合成やステロイドの合成、リン脂質の合成、カルシウムや鉄の細胞内濃度の調節、細胞周期やアポトーシスの調節など生体活動に大きく関わっているとされています。
また、免疫機能でも重要な役割を担っています。
免疫機能を司る免疫細胞のエネルギー源はミトコンドリアで産生されますので、エネルギー不足になると免疫機能は十分に発揮することができません。
さらに、ミトコンドリアは自然免疫の免疫応答の調節を行っていると言われています。細胞がRNAウイルスに感染すると細胞からインターフェロンや炎症性サイトカインなどのウイルス抑制タンパクが産生、分泌されますが、その分泌に関する細胞内のシグナル伝達の調節をミトコンドリアが行っていると考えられています。


ミトコンドリアと活性酸素
ミトコンドリアはエネルギーを作り出す際、副産物として活性酸素も一緒に作り出します。
活性酸素とは、強力な酸化力を持つ酸素のことでスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素の4種類があります。

これらの活性酸素はがんや心血管疾患、脳血管疾患などの生活習慣病に深く関わると考えられています。
私たちはエネルギーを消費するとき、つまり心臓を動かすときも、呼吸するときも、ものを考えるときにも食べたものを消化吸収するときにも、歩くときにも活性酸素が発生しています。
しかし、ミトコンドリアには、活性酸素除去酵素やビタミンE、コエンザイムQ10(CoQ10)などのスカベンジャー(活性酸素の掃除屋)が存在しているため、活性酸素がもたらす害を軽減する働きが備わっています。

さらにミトコンドリアは、この活性酸素を、ウイルスなどの病原体を攻撃する際にうまく活用するしくみも持っており、免疫機能にも貢献しています。

                           (イラスト)東邦大学HPより


エネルギーが不足するとウイルスに対抗できない?!
最近の研究では低栄養やエネルギー不足の状況があるとミトコンドリアは抗ウイルス応答を抑制させ、ウイルス抑制タンパクの分泌を抑制することが報告されています※。
ミトコンドリアの外膜にある特殊なタンパク質が細胞内のエネルギーの産生状況を感知し免疫応答を調節しているのではないかと考えられています。
エネルギー発生に関わる栄養素としてビタミンB群、ビタミンC、コエンザイムQ10、鉄、亜鉛、マンガン、マグネシウム、銅などを不足なく摂取することが大切です。


※ウイルス感染時の応答を制御するミトコンドリアの新しい機能を発見―細胞内のエネルギー状態を検知して、抗ウイルス応答の強さを調節―
https://www.amed.go.jp/news/release_20201111-02.html
https://www.nature.com/articles/s41467-020-19287-7
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(参考)
 

 

 

 

■疲労は生体アラーム

身体がだるい、寝ても疲れが取れない・・・そんな症状はありませんか?
疲れは誰にでも起こる生理現象です。
通常は一晩の睡眠や2~3日の休息によって回復します。
ところが慢性的な疲労が重なると、いくら休んでも回復しない状態が続きます。
疲労は、「発熱」や「痛み」とともに3大生体アラームと呼ばれ、身体のホメオスタシス(恒常性)の乱れを知らせる重要な警報信号の一つと言われています。


■疲労度チェック

疲労には、⾝体的疲労と精神的疲労があります。疲労度をチェックしてみましょう。

 

全くない(0点)、少しある(1点)、まあまあある(2点)、かなりある(3点)、非常に強い (4点)

 

文部科学省生活者ニーズ対応研究「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」(2005年、倉恒弘彦)より抜粋。

 

■疲労はどうして起こるの?

疲労は、生活環境のストレスが引き金になります。
①精神的ストレス(人間関係の軋轢など)
②身体的ストトレス(長時間残業、過度の運動など)
③物理的ストレス(紫外線、騒音、温熱環境など)
④化学的ストレス(ホルムアルデヒドなどの化学物質など)
⑤生物学的ストレス(ウイルス、細菌、寄生虫など)
これらの要因が複合的に絡み合い、神経系、免疫系、内分泌系のバランスが乱れ、疲労につながると考えられています。

 

■疲労が蓄積するメカニズム

 

■疲労の正体は活性酸素

疲労の原因は、活性酸素による酸化ストレスで、神経細胞が破壊されるからであると考えられています。
前述のとおり、疲労は、身体のホメオスタシス(恒常性)が乱れているという生体のアラームですが、ストレスや疲労により体内で活性酸素が過剰に作られると、細胞膜や細胞内のタンパク質が損傷されます。

通常であれば、体内で活性酸素除去酵素(SOD)が合成されて、活性酸素を除去するため問題となりませんが、活性酸素の発生量の増加や加齢やストレスなどによりSODの合成機能が低下した場合、SOD(活性酸素を除去する能力)よりも活性酸素の発生量が上回ってしまい、余ってしまった活性酸素は正常細胞や遺伝子(DNA)に傷害を与えてしまいます。

そこで、抗酸化成分の摂取が非常に重要となります。

 

■疲労回復に必要な栄養素

・活性酸素除去

活性酸素の除去には、ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、コエンザイムQ10、イチョウ緑葉エキスなどの抗酸化成分が必要です。


・エネルギー産生

エネルギー不足では、疲労を加速させますので、エネルギー作りに必要な糖質、良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンC、コエンザイムQ10、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、亜鉛など)などを十分に補給することが必要です。


・免疫の強化

疲労が蓄積すると免疫も低下します。
免疫を高めるためには、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ミネラル(亜鉛、鉄、セレンなど)などの栄養素の摂取が欠かせません。

 

■疲労回復のための対策

・睡眠
詳しくは、こちらをご覧ください。
コロナ禍における“質の良い睡眠”について | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)

・適度な運動
・入浴

入浴の効果はお湯の温度によっても違います。
42度以上の高温浴は、交感神経系の活動を高めて新陳代謝も促進され、抑うつ状態の改善や意欲の向上などの疲労回復効果が期待できます。
一方、39度以下の比較的ぬるめの入浴では副交感神経系の活動が高まり、リラックス効果が期待できます。
さらに、ぬるめの入浴では睡眠誘発効果も期待できます。
比較的ぬるめのお湯にゆったりとつかると、身体の深部体温が38度程度まで上昇しますが、入浴後に体温が下がり始めると眠気を誘発するといわれています。

※三石巌がお風呂で行っていたアイソメトリックスを実践していただくこともおすすめです。