夏バテの症状には、食欲不振、胃もたれ、倦怠感、下痢、不眠など様々ありますが、胃腸に関係したものが多く、夏バテは「胃バテ」などといわれることがあります。
胃は、毎日休まずに食べ物を消化してくれる大切な臓器です。
また、胃の働きは自律神経にコントロールされており、ストレスの影響を受け易くもあります。
胃が日本人の弱点であるとされる背景には、栄養摂取の問題点があります。
毎年、胃の不調や夏バテを繰り返してしまう方は、胃の対策を見直してみませんか。
●胃の構造とはたらき
胃は粘膜で内側を覆われた筋肉の袋で、食物が入ると膨らみます。
食道と胃との境界は、「噴門」と呼ばれますが、ここを通過した食物は、「胃体部」にとどまり、胃液の影響を受けます。
胃液の主成分は塩酸、タンパク質分解酵素(ペプシン)、粘液および水分です。
胃液は1日に1~2リットル分泌され、強い酸性を示します。
胃液は塩酸の力で、食物中のかたい繊維を柔らかくしたり、紛れ込んでくる細菌を殺したりします。また、ペプシノーゲンを活性型のペプシンに変える役割も果たしています。
胃体部に続く「前庭部」は、発達した筋肉によって盛んに収縮を繰り返し、食物を細かくします。
また、胃液と食物を十分に混ぜ合わせます。胃袋の筋肉は消化管の中でも一番発達していて、食物の撹拌(食物と胃液のかき混ぜ作業)に好都合です。この筋肉の運動は「ぜん動」といわれます。
胃内の食物が一定の段階まで消化されて粥状になると、「幽門弁」が開き、食物を少しずつ十二指腸に送り出します。
食物が胃の中にとどまっている時間は、通常1~4時間ぐらいですが、量が多いほど、また脂肪が多いほど、胃内での撹拌に時間がかかります。これが、油ものは腹持ちがよいといわれる所以です。
●胃壁を守る粘液
さて、胃の内壁は、粘膜、筋層、漿膜に分けられます。
粘液は胃壁表面の粘膜層を覆って、粘膜層に胃液が直接触れないようにして胃壁を保護しています。
また、粘液層にはアルカリ性の成分が含まれていて、胃酸を中和したり、ペプシンを不活性化する働きもあり、胃壁を守る物理的・化学的バリアとなっています。
粘液の主成分は粘質多糖体(コンドロイチン硫酸)ですが、これを合成する代謝にビタミンAが介在しています。そして、胃壁細胞の細胞膜にあるレシチンは、粘膜表面を粘液でしっかりとコーティングするために必要な栄養素です。
粘液に悪影響を及ぼす要因としては、アルコールの過剰摂取、ストレスなどが挙げられます。
●胃の不調を起こさないための対策
マウスの実験では、強いストレス環境によって胃粘膜の上皮細胞が壊れ、簡単に出血することがわかっています。
人間の場合でもストレスが原因で潰瘍ができることは珍しくありません。胃壁の破壊は粘膜からはじまり、やがて内側の筋肉まで次々と崩されていきます。
胃粘膜の炎症により、活性酸素が発生すると、胃壁の細胞膜を構成するリノール酸が酸化して、過酸化脂質に変化し、細胞が傷害されます。この場合に重要になってくるのが、ビタミンEなどの抗酸化作用を持つ栄養素の存在です。
ストレスがあると、身体は抗ストレスホルモンを合成して対抗しようとしますが、この合成代謝にビタミンEやビタミンCが動員されるため、これらのビタミンが不足してきます。ビタミンEの不足が胃壁の細胞膜に影響を与えたと考えることができます。
胃壁の作り変え作業は、頻繁に行われており、胃壁は2日程度で新しくなっています。新生細胞が正常に成長していくためにはビタミンAは欠かせない栄養素であり、良質タンパク、レシチン、ビタミンAをしっかり補充することが、胃の内側を整備するのに役立ちます。
私たちの顔かたちが様々であるように、胃の形も同じではありません。
痩せた人、筋肉の弱い人、内臓を固定する結合組織の弱い人は、胃アトニー(胃の筋肉の緊張が弱くなり、胃の運動が低下した状態)がみられ、もたれなどの症状があらわれやすいといわれます。
筋肉や結合組織の強化策として、良質タンパクやビタミンC、ビタミンEの摂取が大事です。