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分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

血管内で血液が固まったものを血栓といい、血栓によって生じる病態を血栓症といいます。

血栓症が起こった場所によって、脳では意識障害、肺では胸痛や血痰など、心筋では不整脈や突然死、下肢静脈では痛みや浮腫などと、様々な症状があらわれます。

血栓症のリスクファクターとしては、ストレス、運動不足、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、脱水などが挙げられています。

血栓の本来の役割は止血

ヒトの循環血液量は、体重の約1/13(約8%)とされており、通常4~5kgもの血液が身体中をぐるぐると巡っており、組織に栄養や酸素を運搬します。

外傷などによって、大量に出血すると生命に関わる危険な状態になるため、身体には血を止めるシステムが備わっています。

一つは血小板で、もう一つは血漿の中にある血液凝固因子(プロトロンビン、フィブリノーゲンなど)です。血小板と血液凝固因子は、密接な関りをもって止血のしくみに働きます(下図)。

血液凝固因子は、アミノ酸を原料に肝臓で作られます。そのため、肝機能が低下すると出血しやすくなることがあります。また、胆汁の分泌が低下すると、ビタミンKの吸収が悪くなり、これも出血傾向を助長します。

血栓を溶かすしくみ

丈夫な血栓がいつまでも存在することは、血流を妨げるリスクにもなります。そのため、身体の中には、血栓形成や凝固に対する制御機構が備わっています。さらに、血栓を溶かすという方法が用意されていて、血栓によるトラブルを抑制しています。この血栓を溶かすしくみを『線溶(線維素溶解)』といいます。

『線溶』の主役はプラスミン(タンパク分解酵素)で、血管壁内皮細胞が放出する酵素により活性化され、フィブリン(フィブリノーゲンから形成された線維状のタンパク)を溶かします。

 

血栓対策と栄養

血栓が生じる主な条件は、血管壁に異常がある場合、血流に問題がある場合、血液凝固因子に異常が生じた場合とされています。

そこで、丈夫でしなやかな血管を形成し、維持することは血栓予防に欠かせません。

血管を構成する主な材料はタンパク質ですが、血管の弾力や強さを保っていくには、良質タンパクをはじめ、ビタミンA、ビタミンB群(特にビタミンB6、B12、葉酸)、ビタミンC、ミネラル(特に銅)などが必要です。

血管内皮細胞が作り出す一酸化窒素(NO)は、血管拡張作用や血小板凝集抑制作用があり、血栓予防に欠かせない物質です。一酸化窒素産生には、アルギニン(アミノ酸の一種)と協同因子としてビタミンB群、ビタミンCなどが必要です。

ビタミンEは、過酸化脂質の生成を抑制し、血行促進に寄与します。ビタミンAは、血液凝固抑制成分(ヘパリン)の材料となり、魚油に多く含まれるEPAには、血小板の凝集抑制作用があります。また、イチョウ緑葉フラボノイドが持つ血管拡張作用は、血流障害の予防に働きます。

 

ストレスと血栓

ストレスは自律神経系の働きに影響を与えます。交感神経が優位になると、アドレナリンノルアドレナリンというホルモンを分泌します。ノルアドレナリンは、末梢の血管を収縮させ、血流を遅くします。アドレナリンは、血小板に働きかけて、血液を凝固させ易くします。

アドリナリンは不安のホルモン、ノルアドレナリンは怒りのホルモンともいわれますが、大きなストレスによって心筋梗塞などを発症するメカニズムとして理解されています。

抗ストレスホルモンを体内で合成できるように、材料である良質タンパク、ビタミンC、ビタミンEを十分に摂取して備えることも大切です。

 

 

 

人は、肝臓、腎臓、あるいは脳が損傷されても数日間は生き延びることができますが、呼吸が約5分間停止すると酸素の欠乏により死に至ってしまいます。
現在、私たちはマスクをしていて呼吸が浅くなったり、運動不足で呼吸機能が低下していたり、気づいていないところで肺の健康レベルが低下している可能性があります。
今回は肺の健康レベルを上げるために日々できることを考えていきたいと思います。

呼吸とは・・・
呼吸の大切な働きは脳や身体に酸素を供給することです。
呼吸をすると肺は空気の出し入れで伸びたり縮んだりするように思われがちですが、実際はそうではありません。肺そのものに自動的に動く仕組みはなく、肺を収容している胸郭(きょうかく)の容積が変化することで、間接的に伸ばされたり、縮んだりしています。

 



 

胸郭の容積を変化させる方法は、大きく2つあります。
①外肋間筋(ろっかんきん)を使う方法 (胸式呼吸)
外肋間筋は、肋骨の間にある筋肉で、収縮すると肋骨を上げて胸郭を広げます。これによって胸腔が広がり空気を取り込みます。外肋間筋が弛緩すると胸郭が狭まり、空気が排出されます。



②横隔膜(おうかくまく)を使う方法 (腹式呼吸)
横隔膜は胸郭の下部にあるドーム型の筋肉で、収縮すると胸腔を広げて空気を取り込み、弛緩すると胸腔が狭まり、空気が排出されます。

通常はどちらか一方ではなく、外肋間筋と横隔膜、両方の働きによって呼吸運動が行われています。


肺の構造
肺は肺胞という極めて小さな袋の集合体になっています。その袋は気管から枝分かれした気管支の先端にブドウの実のように房になってついています。呼吸によって一つ一つのブドウの実が膨らんだり縮んだりを繰り返します。

肺胞の内壁では吸気から酸素を受け取り、二酸化炭素を放出するガス交換が行われています。
肺胞壁は扁平な上皮細胞で作られています。また、細胞壁はリン脂質で覆われています。肺胞のリン脂質は他の細胞のリン脂質とは違い、不飽和脂肪酸が含まれていません。
不飽和脂肪酸が存在すると酸化されやすくなり、過酸化脂質の脅威にさらされる可能性がある為だと考えられます。

肺の機能を守るには
①呼吸筋を鍛える
呼吸筋とは呼吸をするときに肺の動きを支える筋肉のことで主に外肋間筋と横隔膜を指します。
浅い呼吸をしていると筋肉の動きも小さくなり、その結果筋肉が衰えてしまいます。呼吸筋の衰えは酸素不足につながり、様々な不調の原因になるともいわれています。
そこでおすすめなのが風船を膨らませたり、吹き戻しを吹いたりして呼吸筋を強化する方法です。口周囲の筋肉も鍛えられるため、口呼吸予防やオーラルフレイル予防として高齢者施設でのトレーニングに使用されています。
また、息を吐くと自然と息を吸うことができるので、息を吐くことを意識しながらウォーキングをしたり、心肺機能の強化として良く知られている水泳もおすすめです。



【吹き戻しを使った強化方法】
1、吹き戻しを唇でくわえ、吹き伸ばします。
2、吹き伸ばしたまま、吹き戻らないように5~10秒吹き続けます。
3、1~2を10~30回繰り返します。
強度のついた吹き戻しも市販されていますのでぜひ試してみてください。

②栄養対策
肺の強化に必要な栄養素
良質タンパク・ビタミンA・ビタミンB群・ビタミンC・ビタミンE・レシチン・ミネラル(鉄、亜鉛)

肺には粘膜が多く存在しています。粘膜の合成にはタンパク質をはじめ、糖やビタミンAが必要です。粘膜の表面は粘液で覆われており、この粘液が正常に分泌されないと粘膜が乾燥し、バリア機能が低下します。粘液の分泌を正常に保ち、粘液を粘膜に定着させるためにはレシチンの摂取が大切です。
肺胞は良質タンパク、ビタミンB群(特にエラスチン合成に必要なビタミンB6)、ビタミンC、レシチンなどで主に構成されています。ビタミンEは、細胞膜の保護や強化のために働きます。レシチンには肺胞の膜の弾力を助ける働きもあります。

<参考書籍>

 

 

 

 

腸には、食べ物を消化する・栄養素や水分を吸収する・不要なものを便として排出するという働き以外に、免疫器官としても重要な働きがあります。

便には腸の状態を知らせる情報が、たくさんつまっています。

 

まずは、便の状態を確認しましょう。

チェックポイントは主に3つです。

1.かたさ

 

※ブリストルスケール:英国ブリストル大学のHeaton博士が1997年に提唱

ブリストルスケールとは便の形状と硬さで7段階に分類する指標であり、便秘や下痢の診断項目の一つとして使用されています。

 

1、2は便秘の可能性あり、3~5が正常の便(4が理想)、6~7は下痢の便です。

健康的な便は、おおよそ全体の70~80%程度が水分といわれています。

水分量が60%以下では硬くコロコロした便になり、便秘の状態になります。

水分量が90%以上になると下痢の状態になります。

2.におい

便の固形成分には「食物の残りカス、腸内細菌、はがれ落ちた腸の粘膜」があり、「におい」に影響するのが「腸内細菌」です。

腸内細菌には「善玉菌」「日和見菌」「悪玉菌」があります。

この中でも「悪玉菌」は肉などのタンパク質や脂質をエサとして好み、おなかの中で分解するときにイヤなにおいを放つ物質を作り出します。

においが強いときは便秘に陥っていることが多いと言われています。

一方で「善玉菌」が多くなると、便のにおいは抑えられると考えられています。

3.色

健康な便の色は黄土色~茶色です。

便がお腹の中にとどまっている時間が長いほど、便の色は濃くなります。

次のような色の便が出たときは要注意です。早めに医療機関に相談しましょう。

 

・黒い便

真っ黒なタールのような便は、食道や胃、十二指腸、小腸で出血している可能性があります。

※鉄剤を飲んでいる場合に便が黒くなることがあります。

 

・赤い便

鮮血のように真っ赤な便は、肛門に近い場所で出血している可能性があります。

大腸の炎症やポリープ、大腸ガン、いぼ痔、切れ痔が考えられます。

 

・白っぽい便

一時的な場合の原因として多いのが、暴飲暴食により胆汁の分泌が不足することで白い便になります。

肝臓や胆のうに炎症があると、胆汁が分泌できなくなってしまい、白い便がでます。

■コロナ禍で便秘に悩む人が増加!

コロナ禍で便秘を訴える人が増加していると言われています。

原因として、不規則な食事、マスク生活による水分の摂取不足、不規則な睡眠サイクル、ストレス、外出自粛による運動不足などがあげられます。

便秘を予防・改善するためには腸内環境を整え、腸の働きを良くすることが重要です。

■便秘を防ぐ栄養対策

・腸の機能の正常化

腸機能の正常化に、腸の材料やエネルギー源となる、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、 ビタミンC、コエンザイムQ10などの摂取がおすすめです。

 

・便量の確保

便は、便量が確保できないと、便意を身体(脳)が感じることができずに、腸内に溜まったままになってしまいます。

便量を増やすためには、便の約半分を占めている腸内細菌を増やすことが有効です。

そのためには、腸内細菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖の摂取が不可欠です。

 

 

◎食物繊維

食物繊維は、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。

 

・水溶性食物繊維

小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。また、コレステロールを吸着し体外に排出することで血中のコレステロール値も低下させます。さらに、ナトリウムを排出する効果もあるので、高血圧を予防する働きもあります。

 

多く含む食品

・ペクチン ・・・りんご、みかんなど

・グルコマンナン ・・・こんにゃく

ムチン ムチレージ ・・・納豆、山芋、オクラ

・アルギン酸 ・・・海藻のぬめり成分 (昆布、もずく、めかぶ)

 

・不溶性食物繊維

水分を吸収して便の容積を増やします。便が増えると、大腸が刺激され、排便がスムーズになります。

また、有害物質を吸着させ、便と一緒に身体の外に排出するため、腸をきれいにして大腸ガンのリスクを減らす働きもあります。

 

多く含む食品

・リグナン ・・・カカオマス (ココアやチョコレートの原料)

・セルロース ・・・穀類の外皮やふすま、大豆

・キチン・キトサン ・・・カニの甲羅やエビの殻

 

また、どちらの食物繊維も大腸内の細菌により発酵・分解され、ビフィズス菌などの善玉腸内細菌の餌になるため、善玉菌が増え、腸内環境が改善されます。

ただし、食物繊維の摂取量が多すぎると、亜鉛や銅などの必須ミネラルまで吸着し、体外に排出するので、注意が必要です。

<オリゴ糖>

ビフィズス菌、乳酸菌などのエサとなり、便通を改善し、お腹の調子を整えます。

さらに、腸内で発生する有害産物の生成を抑制する働きがあります。

 

多く含む食品

牛乳・乳製品、バナナ、はちみつ、大豆、とうもろこし、たまねぎ、アスパラガス、キャベツ

【腸の働きを良くする習慣】

●朝食を食べる

胃と大腸には「胃・結腸反射」というシステムが働いています。

空っぽの胃に食べ物や水分が入ると、1時間以内に大腸が激しく動いて便を肛門へと送る大蠕動運動が始まります。

 

●軽い運動をする

腸の蠕動運動を促すために、1日30分、8,000歩を目安に歩きましょう。

 

●水分摂取

コロナ禍で、マスクを着用する生活は、喉が渇きにくく、慢性的な水分不足に陥っていると言われています。

便秘の原因の一つに、水分不足があげられます。

喉が渇いていなくても水分を摂ることを心がけましょう。

 

<理想のトイレの姿勢>

理想の姿勢は、「ロダンの考える人」だと言われています。

前傾姿勢になり、かかとを上げると、便の出口である直腸から肛門がまっすぐになり、便が通りやすくなります。

 

 

 

◎便秘薬の使い方には注意必要

長期的に便秘薬を使い続けると、薬がないと大腸が動かなくなります。

また、薬への耐性によって、効果が薄れ、慢性便秘に繋がります。

 

※ムチンを含む食品として、納豆、山芋、オクラと記載しておりましたが、正式にはムチン(Mucin)は動物粘膜を指し、植物粘膜はムチレージ(Mucilage)と呼びます。ここに訂正いたします。

(2021年7月21日)