分子栄養学のススメ -23ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

「朝は身支度などを最優先して、食事の準備をする時間がない」「ダイエットをしていて朝食を抜いている」「そもそも食欲がわかない」など、朝食を摂らない理由は様々考えられます。

では、実際はどうなのでしょうか。

農林水産省が発表した「若い世代の食事習慣に関する調査結果」によると、20 歳代及び 30 歳代で、朝食を「ほとんど食べない」と回答した人が2割を超えており、特に、起床から外出までの時間が1時間未満の人では、約3割が朝食を「ほとんど食べない」と回答したことが分かっています。

 

食物の特異動的作用と脳の変化

 

食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます(下図)。

つまり、食事をすると体温が上がります。そのピークは1時間後に来て、約3時間後に元に戻ります。これを「食物の特異動的作用」または「食事誘発性熱産生」といいます。

体温の上昇は、脳に入る血液を温め、多くの化学反応の速度を上昇させます。

さらに、血液が温まれば、その粘度(粘り具合)が下がり、血管もいくらかしなやかになり、血行が良くなります。脳の血行が良くなれば、酸素や栄養物質の供給が増え、化学反応の速度が大きくなります。すなわち、頭の働きがよくなります。

 

血液は昼も夜も休むことなく、身体中を巡っています。それは全身の組織の細胞に酸素と栄養物質を配給するためです。

血液の通り道である血管は、身体の隅々まで網の目のように分布しています(下図)。血液は、心臓から出て全身へ送られ、また心臓へ戻ってきます。その循環のスピードは、平均して一回りが約50秒という速さです。

酵素は代謝の交通整理役

 

細胞の中には、タンパク質の材料となるアミノ酸や、エネルギー源であるブドウ糖や脂肪酸の他、ビタミンやミネラルが運び込まれてきます。身体の中で「酵素」に助けられて物質を作ったり、壊したりする作業を「代謝」と呼んでいます。エネルギーづくりをはじめとする各種の「代謝」が混乱なく、整然と進むのは「酵素」が交通整理役をしているからです。

酵素は常に決まった相手に、決まった反応を起こさせるように働きます。そのとき、「協同因子」としてビタミンやミネラルを要求する場合が少なくありません。

 

酵素反応の進行速度は、温度によって異なり、それぞれに「至適温度」が存在します。

 

脳の温度は酵素の至適温度であることが望ましいのですが、朝食抜きの場合、脳の温度はそれよりも低いはずです。

 

三石巌は、食物の特異動的作用について、“脳の出力増強”と表現しました。そして、学校でも職場でも“モノを言う”のは脳の出力であり、出力不十分では、集中など不可能であると指摘しています。

 

朝の身体はガス欠状態

 

脳の重量は体重の1/50に過ぎませんが、血液量は全量の1/6、エネルギー消費量は全身の1/5と、驚くほど大きいものです。

しかも、脳はブドウ糖だけをエネルギー源にするのが原則です。脳が要求するブドウ糖の量は1日120gといわれます(1時間に5g消費)。

 

朝食抜きなどで絶食が続くとケトン体(脂肪から肝臓で作られる)を利用するようになりますが、その場合にもエネルギー源の約半分をこれで賄うのであり、あとはブドウ糖です。

脳への物質の運び込みの関所である血液脳関門やニューロン、グリア細胞には、ブドウ糖の輸送役のタンパク質があり、エネルギー源を確保する仕組みです。

 

睡眠中にも脳のエネルギー消費が続けられるので、起床したときの血糖値は低くなっています。朝食を摂ることで血糖値が改善され、昼間の活動を保障します。朝食抜きでは脳の働 きは鈍くなってしまいます。

 

1日を通して元気に活動するために

 

身体の中には、体内時計と呼ばれる1日のリズムを刻むメカニズムがあります。それを形づくっているのが、数多くの時計遺伝子です。胃、腸、肝臓などの時計遺伝子は、朝の食事を摂り入れた刺激によってリセットされます。

 

体内時計を動かすためには、一つの食材を摂るよりも、炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質などをバランスよく摂ることが必要と考えられています。

これに加えて、ビタミンやミネラルなど、代謝をサポートする栄養素の摂取も必要不可欠といえます。

 

現代は、生活スタイルや勤務形態が多様化し、食事も不規則になりがちですが、栄養は“身体を活動させる条件”となるものです。

 

<参考書籍>

 

 

 

春は自律神経が乱れやすい?!


春は、寒暖差や気圧の変化、生活環境の変化、花粉症による免疫力の低下などで身体に対する影響が出やすい季節です。
身体は目まぐるしく変化する状況の中でも正常な状態を保とうと自律神経が酷使されるため、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
その結果、イライラや緊張、怒りっぽい、不眠、動悸、めまい、むくみ、ほてりなどのさまざまな「不定愁訴」を感じやすくなります。
季節の変わり目に病院へ行くほどではないけど、なんか調子が悪いと思ったことがあるのではないでしょうか。
コロナ禍でのストレスが原因でこのような症状を経験された方もいるのではないでしょうか。
多くの場合、検査をしても原因となる器官の異常が見当たらないため、不定愁訴症候群とか自律神経失調と言われます。



自律神経とは


情報を伝える神経は大きく2つあり、脳から脊髄へとつながる中枢神経と、そこから全身の隅々へと伸びる末梢神経です。末梢神経は体性神経と自律神経があります。体性神経は感覚を伝える知覚神経と筋肉を動かす運動神経があります。自律神経は内臓の動きや血液の流れなど自分の意志ではコントロールできないところで身体の機能を維持するため24時間休むことなく働き続けています。
自律神経は交感神経と副交感神経に分けられます。活発に活動しているときは交感神経が優位になり、リラックスしているときには副交感神経が優位になり、1日を通して必ずどちらかが優位になっています。

通常、人間は日中に交感神経が優位になり、夜は副交感神経が優位になります。しかし、現代人は不規則な生活習慣、ストレスなどが原因となり、自律神経のバランスが乱れがちです。
また、加齢も自律神経の働きに大きく影響していると考えられています。
男性では30代半ば、女性では40代以降で自律神経の働きが低下し始めると言われています。



自律神経を整えるには


自律神経は自分でコントロールできませんが、自律神経のバランスが整うように働きかけることは可能です。

〇正しい生活習慣
規則正しい生活やバランスの取れた食生活を心がけることで自律神経は整っていきます。
自律神経の働きは時間帯によって変化しているため、規則正しい生活リズムを心がけることが自律神経を整える為の第一歩となります。


〇適度な運動
運動は自律神経を整えるうえで必要不可欠です。デスクワークなどで長時間座ったままでいると、血流が悪くなります。血流が滞ると細胞への栄養素の供給も滞り、体の不調の原因にもなってしまいます。
デスクワークの合間に少し動く、エレベーターではなく階段を使う、歩くときは背筋を伸ばしお腹に力を入れて歩くなど、少しずつ動くことを習慣にすると負担にならずに生活の中に運動を取り入れることができるのではないでしょうか。

〇メンタルケア
強いストレスは交感神経を急激に高めてしまい、バランスを乱してしまいます。しかし、ストレスのない生活を送ることは難しいと思います。
自分がリラックスできるのはどんなときか、どんな音楽を聞いているときかあらかじめ考えておくのも良いと思います。また、笑顔は心身をリラックスさせ、免疫力を高める効果があります。

 


自律神経を整える栄養素


自律神経を含め身体にとって一番大切な栄養素は良質タンパクです。良質タンパクは、私たちの組織の材料である他、生きるために必要なエネルギーの産生や代謝を正常に進める役割を果しています。良質タンパクが不足すると、疲れやすい・めまい・頭痛・凝りなどの代謝の低下、胃腸(粘膜)や免疫の機能の低下、骨粗鬆症など組織(細胞)合成の低下、栄養素の体内利用効率の低下などの症状が起こりやすくなります。
ビタミンやミネラルは、体内ではタンパク質と結合して、組織に運ばれ初めて働くことができます。良質タンパクに不足の状況があると、どんなに他の栄養素を摂取しても、それが働けない状況が確立されてしまいます。
ビタミンB群、ビタミンCはタンパク質を効率よく働かせるために必要な栄養素です。水溶性ビタミンであり、身体にため込むことができないので、こまめに摂取するのがおすすめです。
脳の働きや神経の正常化には、脳の血流を促進して栄養素をきちんと運ぶこと、脳細胞の材料を補うこと、脳内伝達物質のバランスを調整することが必要になります。
脳の血流を促進し、栄養素をきちんと運ぶためにはイチョウ緑葉フラボノイド、EPA、ビタミンEなどの摂取がお勧めです。また、脳細胞の構成成分としてレシチン、DHA、アラキドン酸などの摂取も大切です。さらに、脳内伝達物質の材料としてレシチン、ビタミンB6、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどの栄養素も重要な働きをしています。




マスクと自律神経


私たちは1分に20回程度呼吸すると言われ、1日に28800回も呼吸を繰り返しています。
現在、外出時にはウイルスや花粉症対策のためにマスクをする生活を強いられていますが、マスクをしていると呼吸が浅くなってしまうと言われています。
様々な機関でマスク内酸素濃度の実験やマスクをした時の飽和酸素濃度の実験などが行われているようですが、何もしていない時よりマスクをしている時の方が息苦しいのは確かです。実験データは様々ですが、マスクをしていて頭がぼーっとしてしまうときには血中の酸素が不足している可能性があるので、マスクを取って深呼吸をしたり、ノールズの呼吸法※で体の中から二酸化炭素を追い出しましょう。

※ノールズ呼吸法とは
ウィリアム=ノールズは、無残気呼吸を提唱して、多くの慢性気管支炎や肺気腫の患者を救いました。彼によれば、この呼吸法は呼吸器の病気に良いのです。肺のなかの酸素の濃度が高いことは、血液中の酸素が多く、二酸化炭素が少ないことを意味します。これが全身の細胞の活動にとって有利な条件で、呼吸器の機能の改善に役立ち、気分は爽快になり、夜はよく眠れるはずです。
ノールズは呼吸法について次のように教えます。まず、息を吐きます。すっかり吐きおえたところで、口をすぼめて狭い出口を作り、さらに息をしぼりだすのです。 また、別の方法として朗読もあります。息を深く吸い込んでおいて読みはじめ、一息でこなせる行数を数えます。毎日これを続けると、行数が増え、無残気呼吸の練習と肺活量の増大と、一石二鳥の効果をあげることができるそうです。また、吸気には3歩、呼気には7歩という歩行法もあります。


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参考書籍

 

 

 

 

 

●亜鉛の働き

亜鉛は体内で作ることができない「必須微量ミネラル」です。

体内に約2g存在し、筋肉(60%)、骨(20~30%)、皮膚・毛髪(8%)、肝臓(4~6%)、消化管・膵臓(2.8%)、脾臓(1.6%)、腎臓、脳、血液、前立腺、眼などの全身に分布しています。

 

<主な働き>

・300種以上の酵素の活性化

・DNAの合成

・タンパク質の合成

・ホルモンの合成や分泌の調整

・皮膚の健康維持

・骨の発育促進

・味覚、嗅覚の保全、唾液の分泌

・組織の修復を促進

・免疫反応の調節

・アルコールの分解

・視力の維持

●亜鉛が不足するとどうなるの?

・免疫力低下

・脱毛

・爪の変形

・肌荒れ(ニキビなど)

・創傷治癒の遅れ

・体力、活力の低下

・食欲不振

・情緒不安定、うつ症状

・下痢、胃腸障害

・味覚障害

・二日酔い

・貧血

・生殖機能の低下

・骨粗鬆症 

・記憶力低下 

・褥瘡 など

 

◎なぜ亜鉛が不足すると味覚障害になるの?

人が味を感じる場所は舌です。

舌の中でも、味蕾(みらい)と呼ばれる部分にある味細胞は、身体の細胞の中でも新陳代謝が非常に活発な細胞で、約1カ月ごとに生まれ変わっています。

そして、この味細胞の再生には亜鉛が重要な働きをしています。

亜鉛不足になると味細胞が早くからその影響を受け、正常な働きができず、味覚障害を発症します。

 

●亜鉛はどのぐらい摂ればよいの?

 

●亜鉛を多く含む食品は?

牡蠣

1個(20g)約3mg

 

帆立貝

1個(20g)約0.4mg

 

うなぎのかば焼き

80g 約2mg

 

牛肉

100g 約5mg

 

豚肉

100g 約3mg

 

卵          

1個(50g)約0.7mg

 

ただし、亜鉛を含む食品を沢山摂取しても、そのまま全てが吸収されるわけではありません。

●亜鉛の吸収率は加齢とともに減少

食べ物から摂取された亜鉛は小腸で吸収されますが、その吸収率は加齢とともに低下し、

20歳代では約35%ですが、65歳以上になると約17%に減少すると報告されています。

さらに、消化機能が衰えることで、せっかく摂取しても体外に排出されてしまい、必要な量が確保できません。

 

●亜鉛の吸収を阻害する要因

・フィチン酸(主に玄米に含まれる)

・シュウ酸(ほうれん草、タケノコなどに含まれるが、ゆでると減少する)

・食物繊維の多量摂取

・食品添加物

・アルコールの多飲

・薬剤(薬剤が亜鉛と結合して尿中に排泄される)

・ダイエットによる偏食

・ストレス

●亜鉛の過剰摂取には注意が必要

高齢者では、皮膚炎、免疫力の低下、食欲不振、褥瘡、味覚障害、認知能力の低下などの原因の一つに亜鉛不足があげられていますので、サプリメントなどでの補完は非常に重要となります。

ただし、亜鉛を過剰に摂取した場合、吐き気、嘔吐、食欲不振、胃痙攣、下痢および頭痛などの症状が出ることもあります。

さらに、亜鉛だけを単独で大量に摂取すると、他のミネラル不足が生じる可能性があります。

鉄や銅やセレンとは拮抗関係(物質同士が互いにその効果を打ち消し合う作用)にあるので、他のミネラルとバランス良く摂取することが大切です。

 

体調や生活状況などの個体差・状況差によっては、推奨量でも足りないケースはありますが、上限を超えないように注意して摂りましょう。