分子栄養学のススメ -24ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

日本で最初に新型コロナ患者が報告されたのは2020年1月16日でした。

1年以上が経過し、世界各国でワクチン接種が始まるなど、感染対策は新たな局面に入ったように見えますが、コロナ禍での生活に疲れやストレスを感じ、体調がすぐれない方も少なくありません。

特に春は天気が変わりやすく、生活環境の変化なども加わります。

このようなストレスは、必要な栄養素を消費させてしまう他、自律神経や代謝を乱す要因になります。

さらに、毛髪代謝のバランスが乱れる原因にもなり、毛髪の様々なトラブルにつながります。

●毛髪の基礎知識

毛髪は皮膚から出ている「毛幹」と、皮膚の中に隠れている「毛根」に分かれています(下図)。

私たちが“髪の毛”と呼んでいるのは、毛幹の部分です。

毛根の底部には、「毛乳頭」「毛母細胞」があり、それらを「毛包」が包んでいます。

毛髪には、「ヘアサイクル」(下図)があり、表に出てきているのは3割程度といわれており、残りの7割は皮膚の下で成長し、次の抜け代わりに備えています。

一生のうちに15~20回ぐらいヘアサイクルを繰り返しますが、一つひとつの毛包が別々の周期を営んでいるため、平均して1日に50~100本近く抜けますが、犬や猫のように大量に抜け毛が生じることはありません。

 

①   成長期

成長期は、毛細血管から取り入れた栄養をもとに、毛球部で毛髪がつくられている状態です。毛母細胞が活発に分裂を繰り返し、作られた毛を上部に押し上げている期間です。成長期はおよそ2~6年で、健康なヘアサイクルの人では、頭髪全体の90%が成長期です。

 

②   退行期

毛母細胞の分裂が急激に衰え、毛髪の成長が止まるのが退行期です。期間はおよそ2~3週間です。毛髪の色を決定する色素細胞も活動を緩めます。この時期の毛髪は全体の1%程度です。

 

③   休止期

退行期の次は休止期で、毛髪の成長が完全に止まります。頭髪全体の10%が休止期です。約3~4ヶ月続きますが、再び成長期に入り、新たな毛髪が伸びてくると同時に抜け落ちます。

 

●ヘアサイクルと脱毛

原因不明の脱毛症の場合には、このヘアサイクルに異常をきたしていることが多くみられ、通常2~6年かかると言われている成長期が短くなり、3~4ヶ月程度の休止期が長くなる結果、毛髪が成長できず、量と太さに影響を及ぼします。

また、円形脱毛症は、ストレスも誘因の一つですが、直接の原因は、自己免疫疾患と考えられており、リンパ球が毛根を異物と間違えて攻撃してしまうために発症すると考えられています。円形脱毛症患者の組織病理検査では、脱毛部分の毛包の中や周辺が炎症を起こし、リンパ球がそこに集まっているといわれます。

その他、脱毛と結びつくものとして抗がん剤が挙げられます。抗がん剤は分裂が活発な細胞に強く影響します。そのため、細胞分裂が盛んな毛母細胞は、抗がん剤の影響を受けやすく、脱毛が引き起こされると考えられています。

 

●毛髪と栄養

毛髪の成長は毛先が伸びるのではなく、血液が運んでくる栄養分によって毛根部の毛乳頭で細胞が分裂して毛髪が作られ、外へ外へと押し出されて伸びていきます。

また、毛母細胞は分裂増殖のスピードがとても速いので、たくさんの栄養を必要としています。

毛髪の材料となるのは良質タンパクを中心に、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(亜鉛、銅、セレン、カルシウム、マグネシウム)などです。

さらに、細胞分裂を正常にしていくためにビタミンAやビタミンEが関与し、レシチンに含まれるイノシトールは毛髪の合成のサポートに働きます。

ストレスが多い場合には、体内で多く発生した活性酸素により、毛細胞を作る機能が正常に働かなくなることがあるので、抗酸化栄養素(ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、コエンザイムQ10、セレンなど)が大切です。

血流が悪いと栄養素が行き届かなくなり、細胞分裂が十分に行えないということが起こります。血流を改善するために重要な栄養素は、ビタミンE、イチョウ葉フラボノイドなどです。

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私たちが毛髪を実際に見ることができるのは、抜けた毛や皮膚の外に出ている部分だけです。

そのため、外側のケアに重きを置きがちですが、これから成長する毛髪のためには、内側からのケアとして、毎日の栄養摂取、特に良質タンパクが大切です。

 

 

参考:「専門医が語る毛髪科学最前線」板見智著(集英社新書)


太平洋側の乾燥

 

日本の本州の真ん中には北から南まで背骨のように連なっている山脈があります。冬になると中国大陸からの風が暖流の流れる日本海で水蒸気をたっぷり含み、日本列島に上陸してきます。この風が山脈にぶつかると、上昇気流が起こって雲をつくり、日本海側に大雪を降らせます。
山脈の西側で雪を降らせた風は、高い山々を乗り越えて、太平洋側に吹きおろしてきます。含んでいた水蒸気はほとんど雪として降らせてしまったので、この風は乾いています。
関東地方に乾燥注意報が多いのはこのためです。


お肌と乾燥


空気が乾燥すると気になるのはお肌の乾燥ではないでしょうか?
乾燥からかゆみが起きたり、マスクや服による擦れで炎症を起こしたりとトラブルも多いのではないかと思います。
皮膚の一番外側にある皮脂膜と角質層には外からの刺激や細菌から身体を守るバリア機能が備わっています。しかし、乾燥や刺激などによりそのバリア機能が正常に働かないと細菌やアレルゲンの侵入が容易になり、炎症や痒みが起こりやすくなります。

皮脂膜は角質層の表面(皮膚表面)を覆っている天然の保護膜です。 皮脂腺から分泌される皮脂と汗腺から分泌される汗が混ざりあってできています。 皮脂腺の脂質は脂肪酸、スクワレン、リン脂質、コレステロールなどです。
角質層は角質細胞と細胞間脂質で構成されています。角質層は人体の一番外側の細胞で15~25層あり、手のひらや足の裏では200層にもなります。
セラミドなどの細胞間脂質と角質細胞内の天然保湿成分(NMF)が皮膚のうるおいを保つのに大きな働きをしています。細胞間脂質は、角質の細胞の隙間をうめるセラミドを中心とする脂質です。天然保湿成分(ナチュラル・モイスチャーライジング・ファクター、NMF)は、角質細胞内のアミノ酸や尿素や乳酸などの水溶性成分です。この2つが皮脂膜と一緒に皮膚のバリア層を作って、サランラップのように体をおおい守っています。



お肌を守る栄養対策

それでは、どうすれば肌を乾燥から守れるのでしょうか?
まずは、角質層のバリア機能を構成している細胞の機能を正常化する必要があります。
血管の通っていない表皮には真皮から酸素や栄養が供給されています。そのため、真皮の細胞も正常に機能していなければなりません。
角質細胞をはじめ皮膚を構成する細胞の機能を正常化するためには良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ミネラルなどの栄養素が必要です。
また、角質細胞内の天然保湿成分(NMF)は半分がアミノ酸やアミノ酸由来成分で構成されていますので、良質タンパクは不足なく摂ることが重要です。
細胞間脂質は脂質ですが、合成されるまでに多くの酵素が関与しています。酵素はタンパク質でできていますので、ここでも良質タンパクが必要となります。
角質細胞は表皮細胞から分泌されたケラチンという硬いタンパク質で満たされています。ケラチンは硫黄を含むアミノ酸「システイン」を多く含くんでいるため、含硫アミノ酸の摂取も大切です。


おまけ:ウイルスと乾燥

理化学研究所と厚生労働省が連携した研究で湿度の違いによって飛沫・エアロゾルの飛散のしかたがどのように変化するかについてのシミュレーション結果が発表されています。
その結果では湿度が高いほど飛沫は下に落ち、湿度が低くなるにしたがって、小さな飛沫となり空気中に漂う量が増えることが明らかになりました。このことより、乾燥する冬の時期は夏以上に空気喚起を頻繁に行い、発生したエアロゾルをできるだけ早く室外に逃すことが重要です。
また、加湿器などで乾燥を防ぐことで空気中を浮遊する飛沫の量を減らすことも可能と考えられます。

理化学研究所計算科学研究センターHPより
https://www.r-ccs.riken.jp/jp/topics/pickup2.html

■2021年の花粉飛散予想

2020年春との比較で見ると、九州から関東にかけて多く、四国や東海、北陸、関東の所々で非常に多くなる予想です。
昨年は花粉症の症状が弱かった人も今年は注意が必要です。
 

■花粉症の症状

この時期に体調を崩してしまうと、まさか新型コロナウイルスに感染?と不安になる方も多いと思います。
花粉症は、主にくしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻の症状と、目のかゆみ、涙、充血といった目の症状を引き起こします。
またアレルギー反応を起こす花粉の種類によってはのどや皮膚のかゆみ、咳やたん、食欲の減退、微熱といった症状を引き起こすこともあります。
 

■花粉症はなぜ起こるの?

  1. 花粉が鼻や喉に入ると、白血球(とくにリンパ球)がそれを異物と判断します。
  2. 花粉を排除するために、リンパ球は肥満細胞などの表面に抗体(IgE抗体)をつくります。
  3. 再び花粉が入ってくると、抗体が反応し、肥満細胞などからヒスタミンなどの化学物質が分泌されます。
  4. このヒスタミンなどの働きで、くしゃみや鼻水が生じ、花粉を外に追い出そうとします。

■三石式栄養対策

花粉症の栄養対策について、三石巌は著書「医学常識はウソだらけ」で次のように述べています。
一部を抜粋してご紹介します。

アレルギーとは、簡単に言えば免疫システムの異常によってひき起こされるものです。
通常、免疫はウイルスや細菌に対する防除力として働き、いつも食べたり触れたりするようなものに対しては働かないようになっています。
これを「免疫寛容」と言います。
たとえば花粉は、季節がくればかならず空中に撒き散らされるものですから、人間はそれに触れずにはいられません。
しかも人体に害を及ぼすものではありませんから、免疫寛容の対象になります。
ところが花粉症にかかった人の免疫システムは、花粉を害のある異物として、防御力を発揮してしまいます。
このように免疫が過剰に働いてしまう状態を「閾値が低い状態」と言います。
花粉症の人は、花粉に対する閾値が低いため、同じ量の花粉が鼻や喉の粘膜に付着したときに、花粉症の人は鼻がグズグズしたり目がショボショボしたりするのです。
したがって対策としては、その閾値を上げてやればいいことになります。
そのために必要なのは、タンパク質とビタミンAです。
免疫という生体防御の仕組みには、病原体を直接、攻撃して殺す方法と、抗体というタンパク質を病原体に結合させ、虜にした後、処理する方法があります。
また、体内には炎症を起こす物質を蓄えたマスト細胞というものがあります。
異物が入り込んだことを察知すると、抗体はそのマスト細胞にくっついて刺激を与え、起炎物質を放出させます。その働きで中心的な役割を果たすのが、ヒスタミンという物質です。
そのため「アレルギーにヒスタミン剤」というのが常識になっています。
ただし、ヒスタミンは脳内では必要な情報伝達物質ですから、全部を力ずくで抑え込むのは問題です。


では、薬に頼らずにヒスタミンを抑える為にはどのような対策をとれば良いのでしょうか?
弊社では下記対策をおすすめしております。


●粘膜組織の正常化
良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、ミネラル(亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄)

花粉の侵入経路となる鼻・目・喉などの粘膜組織の状態を正常化するためには、代謝をスムーズにして、身体の機能を整える必要があります。
粘膜の表面は粘液で覆われていますが、この粘液の分泌が低下すると粘膜が乾燥してバリア機能が低下しやすくなります。
そこで、粘膜を粘液で保護し、粘膜の細胞自体を強化するためには、粘膜や粘液の材料であるビタミンAの摂取がとても大切です。
また、粘液が粘膜を覆う為には、レシチンが必要です。
 
●ヒスタミン対策 
ビタミンC、ビオチン(ビタミンB群)、イチョウ緑葉エキス

ビタミンCには、痒みや炎症などのアレルギー反応の元となるヒスタミンを抑える働きがあります。ビオチンやイチョウ緑葉エキスには、アレルギー反応の軽減作用があります。
ビオチンは、卵黄やオートミール、大豆、エンドウ豆、落花生、鶏肉、豚肉、バナナなどにも含まれています。
 
●炎症対策(免疫機能の正常化)
ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、ビタミンA、ビタミンD、EPA、DHA、γリノレン酸、水溶性食物繊維、オリゴ糖

花粉症の症状には、炎症反応が関わっていますので、抗酸化作用のあるビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノールなどの摂取が必要になります。
さらに、炎症を引き起こす1つの要因となっているのが、免疫異常です。
免疫の調節には、ビタミンA、ビタミンD、EPA、DHA、γリノレン酸などが働きかけます。
また、免疫の大半は腸で担っているため、腸内環境の乱れが、免疫異常を引き起こし、アレルギーの根本原因になっているケースが多いといわれています。
乳酸菌の摂取や善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維やオリゴ糖の摂取が腸内環境改善につながります。
 
●ストレス対策
良質タンパク、ビタミンC、ビタミンE

アレルギーなどの免疫異常は原因不明で起こるといわれていますが、その背景にはストレス(自律神経)との関連性が指摘されています。
ストレス時には、抗ストレスホルモン合成が促進して、良質タンパク、ビタミンC、ビタミンEなどの栄養素を多量に消費しますので、摂取を強化する事が大切です。
 

◎その他の対策
・外出時の服装

マスクや眼鏡を着用し目や鼻への侵入を防ぐことは大切ですが、花粉を室内に持ち込まないためには、外出時に花粉がつきにくい服を着るのがポイントです。
ウールなどの繊維は、木綿や化繊よりも花粉が付きやすいと言われています。
ポリエステルやナイロン素材、革製品など、表面がツルツルしている素材を使った服を着るのがおすすめです。
織物における花粉の付着傾向を調べた研究では、合成繊維や加工糸を使った表面の凹凸が小さい織物ほど、花粉の付着が少ない傾向が認められたことが報告されています。
出典:笠原敬子「繊維工学」2003:56(4):22-25
 
・換気の工夫
窓から入ってくる花粉は、どう防げばいいのでしょうか。
花粉の飛散量の多い日には、花粉の侵入を防ぐため、窓や扉を閉める方が効果的ですが、
新型コロナウイルスの感染を予防するためには換気も必要です。
この季節の上手な換気法は、窓を細めに開け、レースのカーテンを通して風を入れることが良いとされています。
3LDKのマンション1戸で窓を全開にして1時間の換気した場合、侵入する花粉は約1000万個ですが、窓を10cm幅程度に開いてレースのカーテンを通せば約4分の1に減らせることが報告されています。
出典:環境省「花粉症環境保健マニュアル」
 
・空気清浄機
室内への花粉の侵入は、約4割は衣類や洗濯物への付着によるもの、約6割が換気によるものとされています。
空気清浄機を使うことで室内の花粉は軽減できますが、置き場所にも工夫が必要です。
窓から室内に侵入した花粉の動きをシミュレーションした研究によると、空気清浄機を窓と反対側の壁の近くに配置した場合に、捕獲する花粉の量が最も多くなることが報告されています。
一方、窓の直下に空気清浄機を配置した場合には、乱気流が発生して室内に花粉を多く引き込んでしまうという結果が報告されています。
出典:中川翔太朗ほか「室内環境」 2016;19(1):1-10
 
今年は早めの対策でつらい花粉シーズンを乗り切りましょう。