コロナ禍の今こそ知っておきたい、毛髪の基礎知識 | 分子栄養学のススメ

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分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

日本で最初に新型コロナ患者が報告されたのは2020年1月16日でした。

1年以上が経過し、世界各国でワクチン接種が始まるなど、感染対策は新たな局面に入ったように見えますが、コロナ禍での生活に疲れやストレスを感じ、体調がすぐれない方も少なくありません。

特に春は天気が変わりやすく、生活環境の変化なども加わります。

このようなストレスは、必要な栄養素を消費させてしまう他、自律神経や代謝を乱す要因になります。

さらに、毛髪代謝のバランスが乱れる原因にもなり、毛髪の様々なトラブルにつながります。

●毛髪の基礎知識

毛髪は皮膚から出ている「毛幹」と、皮膚の中に隠れている「毛根」に分かれています(下図)。

私たちが“髪の毛”と呼んでいるのは、毛幹の部分です。

毛根の底部には、「毛乳頭」「毛母細胞」があり、それらを「毛包」が包んでいます。

毛髪には、「ヘアサイクル」(下図)があり、表に出てきているのは3割程度といわれており、残りの7割は皮膚の下で成長し、次の抜け代わりに備えています。

一生のうちに15~20回ぐらいヘアサイクルを繰り返しますが、一つひとつの毛包が別々の周期を営んでいるため、平均して1日に50~100本近く抜けますが、犬や猫のように大量に抜け毛が生じることはありません。

 

①   成長期

成長期は、毛細血管から取り入れた栄養をもとに、毛球部で毛髪がつくられている状態です。毛母細胞が活発に分裂を繰り返し、作られた毛を上部に押し上げている期間です。成長期はおよそ2~6年で、健康なヘアサイクルの人では、頭髪全体の90%が成長期です。

 

②   退行期

毛母細胞の分裂が急激に衰え、毛髪の成長が止まるのが退行期です。期間はおよそ2~3週間です。毛髪の色を決定する色素細胞も活動を緩めます。この時期の毛髪は全体の1%程度です。

 

③   休止期

退行期の次は休止期で、毛髪の成長が完全に止まります。頭髪全体の10%が休止期です。約3~4ヶ月続きますが、再び成長期に入り、新たな毛髪が伸びてくると同時に抜け落ちます。

 

●ヘアサイクルと脱毛

原因不明の脱毛症の場合には、このヘアサイクルに異常をきたしていることが多くみられ、通常2~6年かかると言われている成長期が短くなり、3~4ヶ月程度の休止期が長くなる結果、毛髪が成長できず、量と太さに影響を及ぼします。

また、円形脱毛症は、ストレスも誘因の一つですが、直接の原因は、自己免疫疾患と考えられており、リンパ球が毛根を異物と間違えて攻撃してしまうために発症すると考えられています。円形脱毛症患者の組織病理検査では、脱毛部分の毛包の中や周辺が炎症を起こし、リンパ球がそこに集まっているといわれます。

その他、脱毛と結びつくものとして抗がん剤が挙げられます。抗がん剤は分裂が活発な細胞に強く影響します。そのため、細胞分裂が盛んな毛母細胞は、抗がん剤の影響を受けやすく、脱毛が引き起こされると考えられています。

 

●毛髪と栄養

毛髪の成長は毛先が伸びるのではなく、血液が運んでくる栄養分によって毛根部の毛乳頭で細胞が分裂して毛髪が作られ、外へ外へと押し出されて伸びていきます。

また、毛母細胞は分裂増殖のスピードがとても速いので、たくさんの栄養を必要としています。

毛髪の材料となるのは良質タンパクを中心に、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(亜鉛、銅、セレン、カルシウム、マグネシウム)などです。

さらに、細胞分裂を正常にしていくためにビタミンAやビタミンEが関与し、レシチンに含まれるイノシトールは毛髪の合成のサポートに働きます。

ストレスが多い場合には、体内で多く発生した活性酸素により、毛細胞を作る機能が正常に働かなくなることがあるので、抗酸化栄養素(ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、コエンザイムQ10、セレンなど)が大切です。

血流が悪いと栄養素が行き届かなくなり、細胞分裂が十分に行えないということが起こります。血流を改善するために重要な栄養素は、ビタミンE、イチョウ葉フラボノイドなどです。

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私たちが毛髪を実際に見ることができるのは、抜けた毛や皮膚の外に出ている部分だけです。

そのため、外側のケアに重きを置きがちですが、これから成長する毛髪のためには、内側からのケアとして、毎日の栄養摂取、特に良質タンパクが大切です。

 

 

参考:「専門医が語る毛髪科学最前線」板見智著(集英社新書)