やる気モードをONにする食習慣”朝食は脳の出力増強” | 分子栄養学のススメ

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分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

「朝は身支度などを最優先して、食事の準備をする時間がない」「ダイエットをしていて朝食を抜いている」「そもそも食欲がわかない」など、朝食を摂らない理由は様々考えられます。

では、実際はどうなのでしょうか。

農林水産省が発表した「若い世代の食事習慣に関する調査結果」によると、20 歳代及び 30 歳代で、朝食を「ほとんど食べない」と回答した人が2割を超えており、特に、起床から外出までの時間が1時間未満の人では、約3割が朝食を「ほとんど食べない」と回答したことが分かっています。

 

食物の特異動的作用と脳の変化

 

食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます(下図)。

つまり、食事をすると体温が上がります。そのピークは1時間後に来て、約3時間後に元に戻ります。これを「食物の特異動的作用」または「食事誘発性熱産生」といいます。

体温の上昇は、脳に入る血液を温め、多くの化学反応の速度を上昇させます。

さらに、血液が温まれば、その粘度(粘り具合)が下がり、血管もいくらかしなやかになり、血行が良くなります。脳の血行が良くなれば、酸素や栄養物質の供給が増え、化学反応の速度が大きくなります。すなわち、頭の働きがよくなります。

 

血液は昼も夜も休むことなく、身体中を巡っています。それは全身の組織の細胞に酸素と栄養物質を配給するためです。

血液の通り道である血管は、身体の隅々まで網の目のように分布しています(下図)。血液は、心臓から出て全身へ送られ、また心臓へ戻ってきます。その循環のスピードは、平均して一回りが約50秒という速さです。

酵素は代謝の交通整理役

 

細胞の中には、タンパク質の材料となるアミノ酸や、エネルギー源であるブドウ糖や脂肪酸の他、ビタミンやミネラルが運び込まれてきます。身体の中で「酵素」に助けられて物質を作ったり、壊したりする作業を「代謝」と呼んでいます。エネルギーづくりをはじめとする各種の「代謝」が混乱なく、整然と進むのは「酵素」が交通整理役をしているからです。

酵素は常に決まった相手に、決まった反応を起こさせるように働きます。そのとき、「協同因子」としてビタミンやミネラルを要求する場合が少なくありません。

 

酵素反応の進行速度は、温度によって異なり、それぞれに「至適温度」が存在します。

 

脳の温度は酵素の至適温度であることが望ましいのですが、朝食抜きの場合、脳の温度はそれよりも低いはずです。

 

三石巌は、食物の特異動的作用について、“脳の出力増強”と表現しました。そして、学校でも職場でも“モノを言う”のは脳の出力であり、出力不十分では、集中など不可能であると指摘しています。

 

朝の身体はガス欠状態

 

脳の重量は体重の1/50に過ぎませんが、血液量は全量の1/6、エネルギー消費量は全身の1/5と、驚くほど大きいものです。

しかも、脳はブドウ糖だけをエネルギー源にするのが原則です。脳が要求するブドウ糖の量は1日120gといわれます(1時間に5g消費)。

 

朝食抜きなどで絶食が続くとケトン体(脂肪から肝臓で作られる)を利用するようになりますが、その場合にもエネルギー源の約半分をこれで賄うのであり、あとはブドウ糖です。

脳への物質の運び込みの関所である血液脳関門やニューロン、グリア細胞には、ブドウ糖の輸送役のタンパク質があり、エネルギー源を確保する仕組みです。

 

睡眠中にも脳のエネルギー消費が続けられるので、起床したときの血糖値は低くなっています。朝食を摂ることで血糖値が改善され、昼間の活動を保障します。朝食抜きでは脳の働 きは鈍くなってしまいます。

 

1日を通して元気に活動するために

 

身体の中には、体内時計と呼ばれる1日のリズムを刻むメカニズムがあります。それを形づくっているのが、数多くの時計遺伝子です。胃、腸、肝臓などの時計遺伝子は、朝の食事を摂り入れた刺激によってリセットされます。

 

体内時計を動かすためには、一つの食材を摂るよりも、炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質などをバランスよく摂ることが必要と考えられています。

これに加えて、ビタミンやミネラルなど、代謝をサポートする栄養素の摂取も必要不可欠といえます。

 

現代は、生活スタイルや勤務形態が多様化し、食事も不規則になりがちですが、栄養は“身体を活動させる条件”となるものです。

 

<参考書籍>