腸には、食べ物を消化する・栄養素や水分を吸収する・不要なものを便として排出するという働き以外に、免疫器官としても重要な働きがあります。
便には腸の状態を知らせる情報が、たくさんつまっています。
まずは、便の状態を確認しましょう。
チェックポイントは主に3つです。
1.かたさ
※ブリストルスケール:英国ブリストル大学のHeaton博士が1997年に提唱
ブリストルスケールとは便の形状と硬さで7段階に分類する指標であり、便秘や下痢の診断項目の一つとして使用されています。
1、2は便秘の可能性あり、3~5が正常の便(4が理想)、6~7は下痢の便です。
健康的な便は、おおよそ全体の70~80%程度が水分といわれています。
水分量が60%以下では硬くコロコロした便になり、便秘の状態になります。
水分量が90%以上になると下痢の状態になります。
2.におい
便の固形成分には「食物の残りカス、腸内細菌、はがれ落ちた腸の粘膜」があり、「におい」に影響するのが「腸内細菌」です。
腸内細菌には「善玉菌」「日和見菌」「悪玉菌」があります。
この中でも「悪玉菌」は肉などのタンパク質や脂質をエサとして好み、おなかの中で分解するときにイヤなにおいを放つ物質を作り出します。
においが強いときは便秘に陥っていることが多いと言われています。
一方で「善玉菌」が多くなると、便のにおいは抑えられると考えられています。
3.色
健康な便の色は黄土色~茶色です。
便がお腹の中にとどまっている時間が長いほど、便の色は濃くなります。
次のような色の便が出たときは要注意です。早めに医療機関に相談しましょう。
・黒い便
真っ黒なタールのような便は、食道や胃、十二指腸、小腸で出血している可能性があります。
※鉄剤を飲んでいる場合に便が黒くなることがあります。
・赤い便
鮮血のように真っ赤な便は、肛門に近い場所で出血している可能性があります。
大腸の炎症やポリープ、大腸ガン、いぼ痔、切れ痔が考えられます。
・白っぽい便
一時的な場合の原因として多いのが、暴飲暴食により胆汁の分泌が不足することで白い便になります。
肝臓や胆のうに炎症があると、胆汁が分泌できなくなってしまい、白い便がでます。
■コロナ禍で便秘に悩む人が増加!
コロナ禍で便秘を訴える人が増加していると言われています。
原因として、不規則な食事、マスク生活による水分の摂取不足、不規則な睡眠サイクル、ストレス、外出自粛による運動不足などがあげられます。
便秘を予防・改善するためには腸内環境を整え、腸の働きを良くすることが重要です。
■便秘を防ぐ栄養対策
・腸の機能の正常化
腸機能の正常化に、腸の材料やエネルギー源となる、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、 ビタミンC、コエンザイムQ10などの摂取がおすすめです。
・便量の確保
便は、便量が確保できないと、便意を身体(脳)が感じることができずに、腸内に溜まったままになってしまいます。
便量を増やすためには、便の約半分を占めている腸内細菌を増やすことが有効です。
そのためには、腸内細菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖の摂取が不可欠です。
◎食物繊維
食物繊維は、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。
・水溶性食物繊維
小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。また、コレステロールを吸着し体外に排出することで血中のコレステロール値も低下させます。さらに、ナトリウムを排出する効果もあるので、高血圧を予防する働きもあります。
多く含む食品
・ペクチン ・・・りんご、みかんなど
・グルコマンナン ・・・こんにゃく
・ムチン ムチレージ ・・・納豆、山芋、オクラ
・アルギン酸 ・・・海藻のぬめり成分 (昆布、もずく、めかぶ)
・不溶性食物繊維
水分を吸収して便の容積を増やします。便が増えると、大腸が刺激され、排便がスムーズになります。
また、有害物質を吸着させ、便と一緒に身体の外に排出するため、腸をきれいにして大腸ガンのリスクを減らす働きもあります。
多く含む食品
・リグナン ・・・カカオマス (ココアやチョコレートの原料)
・セルロース ・・・穀類の外皮やふすま、大豆
・キチン・キトサン ・・・カニの甲羅やエビの殻
また、どちらの食物繊維も大腸内の細菌により発酵・分解され、ビフィズス菌などの善玉腸内細菌の餌になるため、善玉菌が増え、腸内環境が改善されます。
ただし、食物繊維の摂取量が多すぎると、亜鉛や銅などの必須ミネラルまで吸着し、体外に排出するので、注意が必要です。
<オリゴ糖>
ビフィズス菌、乳酸菌などのエサとなり、便通を改善し、お腹の調子を整えます。
さらに、腸内で発生する有害産物の生成を抑制する働きがあります。
多く含む食品
牛乳・乳製品、バナナ、はちみつ、大豆、とうもろこし、たまねぎ、アスパラガス、キャベツ
【腸の働きを良くする習慣】
●朝食を食べる
胃と大腸には「胃・結腸反射」というシステムが働いています。
空っぽの胃に食べ物や水分が入ると、1時間以内に大腸が激しく動いて便を肛門へと送る大蠕動運動が始まります。
●軽い運動をする
腸の蠕動運動を促すために、1日30分、8,000歩を目安に歩きましょう。
●水分摂取
コロナ禍で、マスクを着用する生活は、喉が渇きにくく、慢性的な水分不足に陥っていると言われています。
便秘の原因の一つに、水分不足があげられます。
喉が渇いていなくても水分を摂ることを心がけましょう。
<理想のトイレの姿勢>
理想の姿勢は、「ロダンの考える人」だと言われています。
前傾姿勢になり、かかとを上げると、便の出口である直腸から肛門がまっすぐになり、便が通りやすくなります。
◎便秘薬の使い方には注意必要
長期的に便秘薬を使い続けると、薬がないと大腸が動かなくなります。
また、薬への耐性によって、効果が薄れ、慢性便秘に繋がります。
※ムチンを含む食品として、納豆、山芋、オクラと記載しておりましたが、正式にはムチン(Mucin)は動物粘膜を指し、植物粘膜はムチレージ(Mucilage)と呼びます。ここに訂正いたします。
(2021年7月21日)