コロナ禍における“質の良い睡眠”について | 分子栄養学のススメ

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

睡眠のメカニズム

 睡眠には、レム睡眠(Rapid Eye Movement)とノンレム睡眠(Non Rapid Eye Movement)があります。一晩のうちに、レム睡眠とノンレム睡眠をワンセットとして、これを4回から5回ほどくり返しています。まず、眠りに入ると、深い眠りであるノンレム睡眠に入ります。眠り始めの3時間くらいの間が、もっとも深い睡眠であり、このときに成長ホルモンが多量に分泌するといわれています。同時に免疫力も増強する為、病気治癒の為にも大切な時間帯といえます。約90分くらい経過すると、眠りが覚醒に近づき、今度は浅いレム睡眠になります。レム睡眠は眠り始めは短く、明け方になるほど長くなるという特徴があります。

 



 

 加齢による睡眠の変化

 

(参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより)

 

 年齢とともに睡眠は変化します。健康な高齢者の方でも睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加します。

 第一の変化は、若い頃にくらべて早寝早起きになることです。

これは体内時計の加齢変化によるもので、睡眠だけではなく、血圧・体温・ホルモン分泌など睡眠を支える多くの生体機能リズムが前倒しになります。

 第二の変化は、睡眠が浅くなることです。深いノンレム睡眠が減って、浅いノンレム睡眠が増えるようになります。

そのため尿意やちょっとした物音などでも何度も目が覚めてしまうようになります。

 このような加齢による睡眠の変化は、病的なものではありません。

 睡眠には「はねかえり現象」 とよばれる "回復睡眠"による埋めあわせがおこることが知られています。

 睡眠時間が短いことや目覚め回数にこだわりすぎないことも大切です。

 

ウイルスの感染阻止に役立つ睡眠

 睡眠は免疫作用を強くする過程とも密接に関係しています。

ウイルスが体内に侵入すると、生体内では、抗ウイルス物質インターフェロンを増産すると同時に、好中球が増えてきます。

インターフェロンは、ノンレム睡眠中に作用して、ノンレム睡眠を増加させます。

 動物実験では、インフルエンザウイルスを静脈から体内へ送り込むと、4時間~8時間ぐらいの間にノンレム睡眠が15%ほど増加したと報告されています。

感染によってノンレム睡眠が増えると、全身の血液量を増やす効果が生じます。

 目覚めているときやレム睡眠中には、自律神経系では交感神経が優位に働いています。

交感神経の放出する神経伝達物質ノルアドレナリンが血管を収縮させると、血流量は増加 しません。

 ウイルスなどの感染によって発熱をおこすことがありますが、これもサイトカインによる合目的的な反応であり、それによってエネルギー代謝を高め、体温を上昇させ、血液の循環を盛んにします。

 ノンレム睡眠は、筋肉の緊張をゆるめるので血管が拡張し、血流にとって有利です。

 感染によって、身体にはノンレム睡眠を増加させようという対応がおこり、感染阻止に役立ちます。

 身体の休みたいという要求に逆らうと、抗ストレスホルモン (コルチゾールなど)が分泌され、免疫細胞を減少させるので(回復まで時間がかかる)無理は禁物です。

 

“免疫力を高める質の良い睡眠”のためには、栄養対策や生活環境を整えることが大切です。

 

質の良い睡眠を助ける栄養対策

●身体の機能を整える(代謝レベルのUP)

 加齢とともに睡眠の問題が生じやすくなることからも、睡眠のリズムを正常に保つ為には、身体の機能を正常化する必要があります。

そのためには、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、ミネラルなどの代謝レベルの向上に必要な栄養素を不足のないように摂取することが大切です。

 

●入眠物質のサポート

 入眠物質の1つとして知られるメラトニンは、アミノ酸のトリプトファンからセロトニンを経て合成されます。

トリプトファンは、体内では合成できないため、トリプトファンを多く含む乳製品(牛乳・チーズなど)や大豆製品、肉、魚などの食品の摂取によって、安定したメラトニン合成を促すことにつながります。

その他、合成には共同因子としてビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムなどが必要です。

本来、トリプトファンは血液脳関門でバリン、ロイシンなどのアミノ酸と競合してしまいますが、トリプトファンと一緒に糖を摂取することでインシュリンが働き、これら競合アミノ酸(バリン、ロイシンなど)の筋肉組織へのとりこみが促進されます。

この結果、トリプトファンの脳へのとりこみが盛んになり、メラトニン合成の材料を確保しやすくな

ります。

 

●自律神経を整える

 自律神経は、交感神経と副交感神経の二つに分かれており、身体活動が活発になる時間(朝・昼)は交感神経が優位になり、副交感神経は活動の落ちる時間(夜)に優位になり、睡眠と覚醒のリズムをコントロールしています。

しかし、2つの神経のバランスが崩れると、体内時計が狂ってしまい、夜になっても眠れない状態、すなわち「不眠症」になります。

 神経の働きを正常に維持していくには、各種神経伝達物質が過不足なく作られる条件を整えていくことが大切です。

そのためには、アミノ酸(トリプトファン、チロシンなど)、ビタミンB群(特にB6、B12)、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、レシチンなどの栄養素の摂取が欠かせません。

 

●ストレス対策

 自律神経は、ストレスや環境の変化などによっても影響があります。

ストレスが過剰になると活性酸素の発生量も多くなります。

ストレスに対応するために、良質タンパク、ビタミンC、ビタミンEなどの抗ストレスホルモンの材料となる栄養素を強化することが重要です。

またストレス時には、活性酸素の発生量が多くなり、身体に負担を与えます。

活性酸素の除去には、ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノールなどの抗酸化成分が必要です。


 

〇日常の対策

●太陽の光を浴びる

 太陽光など強い光には体内時計(メラトニン分泌)を調整する働きがあり、光を浴びてから14時間以降に眠気が生じてきます。

 

●適度な運動

 ほどよい肉体的疲労は心地よい眠りを生み出しますが、厳しい運動は刺激になって寝付きを悪くするため逆効果です。

 

●快適な寝室づくり

 睡眠のための適温は20℃前後で、湿度は40%-70%くらいに保つのがおすすめです。


 

 睡眠は睡眠時間の長さよりも、睡眠の質が大切です。

 質の良い睡眠のためにも栄養対策を取り入れて生活環境を整えましょう♪