免疫を高める対策について | 分子栄養学のススメ

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分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

免疫とは?

免疫とは、ウイルスや病原菌などの抗原から身体を守る機能のことです。
免疫機能は、免疫細胞の働きによって成り立っているため、正常に働いていれば、病気を未然に防ぐことが可能です。
 
免疫は、「皮膚・粘膜免疫」「自然免疫」「獲得免疫」いう3つのバリアで構成され、それぞれのステージでさまざまな細胞や抗体※1が私たちの身体を守っています。

イラスト:明治薬科大学 セルフメディケーション学研究室

 

1、皮膚・粘膜でブロック

まず、最前線で働くのは、皮膚や粘膜です。
皮膚は、角質層を形成して、体内の水分の蒸発を防ぐとともに、ウイルスなどの病原体の侵入を防いでいます。

粘膜免疫が働く場所は、目、鼻、口、腸管などの粘膜です。ウイルスなどが体内に入るのを防ぎ、体外に出してしまうことで感染を防ぎます。

 

イラスト:好きになる免疫学 第2版 (KS好きになるシリーズ)

 

2、自然免疫でブロック

ウイルスなどが皮膚や粘膜のバリアを突破し、体内に侵入した場合に、即座に働くのが「自然免疫」です。
免疫と最も関わりが深いのは血液で、なかでも白血球がその重要な役割を担っています。
このため白血球を「免疫細胞」ともいいます。
免疫をうけもつ臓器は、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節、腸などです。
骨髄では、好中球やマクロファージのほか、リンパ球、NK細胞、形質細胞など免疫に関わるほぼすべての細胞が生まれています。

 
3、獲得免疫でブロック

自然免疫で排除できなかった病原体に対して次に働くのが「獲得免疫」です。
獲得免疫は、病原体の情報を学習し、攻撃方法を記憶します。
そのため、感染症にかかりながら免疫を得ていくという特徴があります。
獲得免疫で活躍するのは、おもにT細胞(ヘルパーT細胞・キラーT細胞)やB細胞、NK細胞などのリンパ球です。

 

■免疫を低下させる要因

・加齢

 免疫力は30歳代をピークに低下すると言われています。
 免疫細胞の生産を担う胸腺※2とリンパ球を沢山含んだ脾臓の機能の衰えや加齢による腸 内細菌のバランスの乱れなどが免疫低下の原因と考えられています。

イラスト:からだと免疫のしくみ (入門ビジュアルサイエンス)

 

  • ストレス
  • 睡眠不足
  • 運動不足     
  • 偏った食生活
  • 喫煙
  • 飲酒

 

■免疫機能低下のサイン

 □風邪をひきやすく、治りにくい

 □疲れやすい

 □季節の変わり目に体調を崩しやすい

 □口内炎ができやすい

 □唇や肌があれる

 □胃腸の調子が悪い

 □傷が治りにくい

 

■免疫を高めるためには?

免疫を高めるためには、栄養、適度な運動、質の良い睡眠などが大切です。

 

●免疫を高める栄養素

良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、セレン、クロムなど)

 

ウイルスに感染すると、細胞はインターフェロン(周辺の正常細胞に警告の情報を伝えるために分泌するサイトカイン)を分泌します。
これにより、免疫機能を高めたり細胞自体の防御力を強化したりして、ウイルスの増殖を抑えて感染を拡大しないようにします。
インターフェロンは、糖とタンパク質が結合した糖タンパクで、自前で合成する為には、良質タンパクやビタミンC、ビタミンA(タンパク質に糖をつける作業にビタミンAが必要)などが必要になります。
特に、良質タンパクとビタミンAの摂取は、ウイルスの侵入口である粘膜の強化、粘膜を守る粘液づくりや、線毛の材料としても大変重要です。
また、粘膜表面を粘液でしっかりとコーティングするためにはレシチンの摂取も必要です。
さらに、ウイルスとの闘いの際には、免疫細胞から活性酸素が多く放出されます。
活性酸素を除去するためには、ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノールなどの摂取は欠かせません。
 

◎各栄養素の働き

・良質タンパク

 骨、筋肉、血液、皮膚、ホルモン、皮膚、粘膜、免疫細胞など私達の身体を構成するあら ゆるものがタンパク質から合成されています。 不足すると免疫力の低下は免れません。

・ビタミンA

 粘膜の形成に関与して乾燥を防ぎ、身体のバリア機能を正常に保ちます。

・ビタミンB群

 免疫細胞の活性化、情報伝達能力の維持に必要不可欠です。
 特に、ビタミンB6、B12、葉酸の不足は免疫機能の低下を招きます。

・ビタミンC

 活性酸素による免疫細胞のダメージを抑え、さらに炎症を引き起こす物質の産生を制御し ます。
 新型コロナウイルス感染症による急性呼吸窮迫症候群を発症後に、高用量のビタミンCを 投与された患者は、早期に人工呼吸管理を離脱できたという症例報告もあります。

・ビタミンD

 ウイルス感染症罹患率と重症度を軽減することが報告されています。 

・ビタミンE

 抗酸化作用で免疫細胞のダメージを防ぎます。免疫力が低下した場合に、免疫力を正常に 戻す作用もあります。

・亜鉛

 免疫細胞の働きを活性化させ、欠乏するとT細胞などの獲得免疫の働きが低下します。
 オーストラリアでは、新型コロナウイルスの陽性患者への亜鉛の静脈内投与の効果を検証する臨床試験が始まっています。

 

●適度な運動

適度な運動は、NK細胞、好中球、マクロファージの活性を高め、自然免疫と獲得免疫の双方に良い影響を与えると言われています。
週5日、1日30分間、会話ができるぐらいのペースでウォーキングをするだけでも大きな効果が得られるという報告もあります。
 

●質の良い睡眠

睡眠と免疫は深く関わっています。
質の良い睡眠は、自律神経の乱れを防ぎ、免疫を高める働きがあります。

質の良い睡眠については、こちらをご覧ください。
コロナ禍における“質の良い睡眠”について | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)
 

●笑うこと

笑うことで、NK細胞が活性化され、免疫が向上することが多数報告されています。

笑いの効果については、こちらをご覧ください。

笑いは世のため人のため~健康長寿との関連性~ | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)

 
※1:抗体とは、リンパ球のB細胞が産生・放出するタンパク質(免疫グロブリン)で、体内に侵入したウイルスや細菌などの抗原と結合し、無力化するように働く免疫物質のことです。

※2:胸腺は、免疫系の司令塔としてはたらくT細胞を産生します。
 20歳を過ぎると急激に萎縮し、新しいT細胞の供給が減ることにより、加齢とと もに感染症にかかりやすくなります。