「肝臓は生体の化学工場」~その多彩な働きとは?~ | 分子栄養学のススメ

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分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

健康レベルを大きく低下させる原因の一つとして、外から侵入する病原微生物が挙げられます。
病原微生物は、大まかに、細菌・ウイルス・真菌(カビ)・寄生虫などに分類されます。
これらが、気道、消化管壁、皮膚などから体内に入り込み、そこで定着、増殖することを感染といいます。
このとき、体内ではこれ以上感染を拡大させないように、免疫という仕組みが働きます。

 

しかし、身体を傷害するのは、病原微生物ばかりではありません。

食品に残存している農薬や食品添加物、薬剤などの他、自然界には毒性物質が色々あります。

体内でも、細胞の仕事の副産物として有害物が作られています。

身体はこれらの有害物質を解毒し、排出する仕組みを備えており、これを薬物代謝と呼びます。

 

現代に生きる私たちは、毎日誰もが、体内に何らかの毒性物質を取り込んでいるといえます。

薬物代謝はこれらの物質に対抗する最大の武器なのです。

 

●肝臓は最大の解毒器官

薬物代謝機能を持つ器官は、肝臓・腎臓・脾臓・小腸壁・皮膚などですが、中でも肝臓は最も重要な解毒器官です。

薬物代謝のシステムは、脂溶性物質を水溶性に変える第一段階と、硫酸・グルタチオンなどを結合(抱合)して、さらに排出されやすくする第二段階との組み合わせで進行します。

第一段階を受け持つ酵素としては、チトクロームP450が有名です。

チトクロームP450は、細胞内小器官の小胞体に存在しており、肝細胞に最も多いことが分かっています。

薬物代謝系には、エネルギー代謝と同じような電子伝達系があり、その過程で活性酸素が発生します。

活性酸素は、生体膜脂質の過酸化や、酵素タンパク、DNAの傷害因子となります。アルコールの過剰摂取による肝障害にも活性酸素が関わっています。

そのため、肝臓におけるヒドロキシラーゼ(脂質過酸化物を水酸化し活性を失わせる酵素)の量や、グルタチオンペルオキシダーゼ(活性酸素の除去を担う酵素)の活性は、肝臓が最大といわれています。

 

●黙々と働く肝臓

肝臓は脳に劣らず大きな臓器で、エネルギー産生量も多く、酸素の消費量は身体全体の20%にもなります。

肝臓はアミノ酸を揃えて、身体の構造タンパクや各種酵素などのタンパク質を組み立てたり、体内の「アミノ酸プール」の状態を監視し、調節したりしています。

タンパク質だけでなく、核酸などの窒素を持つ化合物を作るのにも、窒素の供給源としてアミノ酸プールが役立てられています。

 

アミノ酸プールには、20種類のアミノ酸が適正な割合で用意されていることが大事です。

食品中のアミノ酸の種類や割合が問題になるのはこのためです。

体タンパクの分解や合成は絶えず行われているので、良質タンパクを毎日摂取することが必要不可欠といえます。

 

糖代謝の中心も肝臓です。ブドウ糖をつないでグリコーゲンとして貯蔵し、需要に応じて血中へ出します。貯蔵ブドウ糖がない場合には、糖新生もしています。

 

その他、コレステロールの合成ビタミン類の貯蔵ホルモンの活性化胆汁の分泌など、肝臓は多くの役割を果たしています。

 

●肝臓の機能維持に必要な栄養素

肝臓は再生能力の高い組織として知られ、絶えず作り変えを行いながら機能を維持しています。

 

薬物代謝を円滑にするためにも、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄など)、レシチンなどの多くの栄養素が必要不可欠です。

 

発生した活性酸素への対策としては、ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノールなどの抗酸化成分が大変重要です。