経営コンサルタントの読書備忘録
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使える経営学(東洋経済新報社)

使える経営学/東洋経済新報社
¥1,728
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経営コンサルタントの杉野幹人さんの経営学についての書。

中身は、よくあるマイケル・ポーターなどのフレームワーク本ではなく、アカデミックな経営学を取り上げている。


著者は、MBAで商学博士で外資系経営コンサルタントというバックグラウンドのため、アカデミア視点と実務視点の両方の視点から、「ぶっちゃけ、経営学は役に立つのか?」という問いに答えている。

まず、この問い自体が、結構タブー的で面白い。

この本の主張は、経営学はフレームワークなどとして使うのではなく、自分のもっている固定観念に気づき、それをリセットすることに使うべきというものだ。

要は、経営学は、「自分を否定してくれるもの」として使うべきということ。

仕事に慣れてくると、固定観念ができていく。

それは強みにもなるが、落とし穴にもある。

そして、その固定観念は自分では気づきにくいし、自分では否定しにくい。

経営学の論理を学ぶと、その固定観念に気づくことができ、ゼロベースで考え抜く力が鍛えられるというもの。


このことを経営コンサルタント視点で考えたい。

このように、固定観念をリセットすることは、この本でも紹介されているが、経営コンサルティングファームではアンラーニングと呼ばれている。

このアンラーニングというのは、むしろ、ラーニングよりも難しいのではないかと思っている。

ラーニングとは受験勉強のように記憶していくか、または、スポーツのように体験していくことで知識を身に付けていくこだ。

だが、時代が変わったり、状況が変わればそのラーニングした知識が通用しなくなる。

その場合は、それに代わる知識を探さなくてはならないのだが、一度、ラーニングしてしまった人は、なかなかそれを捨て去って代替的な知識を探しにいかない。

安住してしまいがちだ。

そして、まったくなんの知識もない人に負けてしまったりするのだ。

このため、ラーニングしたベテランになるほど、アンラーニングが必要なのだ。

そしてこの本が提案しているように、アンラーニングの一つの方法は体系的な学問に触れることであり、ビジネスであれば、経営学がそれに使えるということなのであろう。


忘れるためにも学ぶべき。

学んだからこそ忘れるべき。

常に学習が必要だなと自戒させられた良書。

アンラーニングの型として紹介されている「疑似相関」のところが一番好きかな。

現場論(東洋経済新報社)

現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践/東洋経済新報社
¥1,944
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経営コンサルタントの遠藤功さんの現場論についてのその名も「現場論」という書。
遠藤さんの本は、フレームワークや構造がかっちりしている本と、エッセイのような本があるが、この本は前者。


遠藤さんの本はほとんど読んでいる。
それらを読んでいると、なかには「戦略」と銘打ってある本もあるが、中身はコンサルティングファームで言うところのオペレーションの話が多い。

その点では、経営学者の藤本隆広さんの本などもそうだが、現場への愛を感じる。
この本はそれらの現場への愛と論理の集大成というか、丁寧にこれまでの現場論を構造化している。
この本を読んでみて、あらためて日本企業は、ないものねだりで「戦略」ばかり追い求めていたが、そこまでに「あった」創意工夫する現場を失いかけているのかもなと考えさせられた。


経営コンサルタントの視点でこれを少し考えてみる。

経営コンサルティングファームに入ってくる人間は、得てしてノリが山っ気があるので、戦略かオペレーションかどちらのプロジェクトに入りたいかと問われると、戦略を選ぶ人が多い。

山っ気とは、最適化問題と発想問題があれば、後者を選ぶ人のことだと思う。

だが、現実のオペレーションの問題とは必ずしも最適化問題ではなく、創意工夫する現場による発想問題に帰着することもある。

そして、戦略こそが、発想問題ではなく、じつは目標に対しての最適化問題だったりすることもある。


一件、聞こえがいい“ブーム”の逆に、実は面白かったり、意義があるものがあるというのは結構な勝利の方程式な気がする。

この本はそのようなことにも気付かせてくれる良書。


生存者ゼロ(宝島社)

生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)/宝島社
¥810
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ここ2ヶ月ほど、過去にないくらいに働いた。

昨日から久々に休みをとったので、昨日書店で購入して昨日、本日一気に読んだ本を数冊まとめてアップする。


最初のこの小説は、エボラ出血熱によって注目を集めているのかもしれない。

いわゆる、アウトブレイクについての小説。


ただし、普通のアウトブレイクではないところが面白いのだが、それは読んでのお楽しみ。

この小説で町が簡単に崩壊する様子を読んでいると、普段あって当然と思っているもの、普段永遠に続くと思っているものが、じつは、そうではない。

あらゆるものは、偶然にいまの時代にそこにあり、そして、とても刹那的に偶然に今の時代だけにあるのだろうなと、我に返らせてくれる。

この「当たり前、そして、永遠と誤解してしまうこと」を経営コンサルタント視点で考えてみたい。

クライアント企業の経営戦略の策定を支援していると、将来の事業環境のはなし、将来の自社のはなしをしているのに、いまいまの事業環境と自社を想定して戦略を立てようとする姿を見かける。

これは、本当にありがち。

いまいまの事業環境や自社を前提とした経営戦略に意味はない。

事業環境や自らなんて、いかようにでも変わる。

1980年代のソニー製品はひとつの希望だった。

1990年代のソニー製品はひとつのステータスだった

2000年代のソニー製品はひとつの寂しさだった。

そして、現代のソニー製品は意識や関心のかなたにある。

事業環境は変わるし、自らも変えられる。

それが経営の面白いところであり、大変なところ。

だからこそ、いまいまに囚われずに将来を考えることが大事。

そして、だからこそ、その不安定ないまいまの刹那に感謝することも大事。


環境や人工物や人類のもろさと、はかなさと、美しさと、未来を考えさせられた。

変わった世界 変わらない日本(講談社現代新書)

変わった世界 変わらない日本 (講談社現代新書)/講談社
¥価格不明
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経済学者の野口悠紀雄さんの経済政策についての新書。

短期的には、アベノミクスは効果があるか。中長期的には、日本経済はどう成長すべきか。

この二つが論点


野口さんの本は、もうすでに何冊も読んでいる。

なので、野口さんの主張や論理展開や価値観をすでに理解してしまっているので、経済政策についての目新しい部分はあまりなかった。

でも、人の意見はすぐに忘れがち、それも、派手さはないがシンプルな真っ当な意見は忘れがちなので、たまにはこうやって思い出すのも悪くない。


野口さんは、内容もさることながら、論証の仕方が素晴らしい。

本書もそうなのだが、野口さんの本で提示しているグラフのほとんどは、特に難しい分析でもなく、また、データソースも公開情報ばかり。

そのような“二次情報”と“単純な分析”で論理をサポートしている。

とてもシンプル。




これを経営コンサルタント視点で考えたい

そのような“二次情報”と“単純な分析”で論理をサポートするのって、意外と難しい。

“一次情報”でサポートしたくなるし、“複雑な分析”をしたくなりがち。

一次情報って、情報自体が価値があったりするし、その情報に一番詳しいのはそれを取ってきた自分なので、説明がとても楽。あと、古い人だと「一次情報を足で稼げ!」みたいな価値観の人もいる。

複雑な分析も、分析の軸や変数を増やせば増やすほど、人がやっていないものになり、分析自体が新しいもののため、とりあえず、話を聞いてもらえたりする。

なので、ついつい、“一次情報”や“複雑な分析”をしがち。

たとえば、なにかしらの5段階評価の独自指標をつくって、それを含む三つの変数で、バブルチャートで表示するなど。

(バブルチャートとは、縦軸、横軸の散布図で、各点も円で表示して、その円の大きさも変数化することで三軸表現になる)


でも、それらの“二次情報”と“単純な分析”を使うのって、ちょっと無駄。

手間がかかるから。

それでいて、そのように手間をかけたところで、“論理”自体はたいして変わらない。

つまり、“一次情報”や“複雑な分析”を使う人って、「論証の仕方」に力を入れているだけであって「論理自体」を練ることに疎かになっている。

一方で、“二次情報”や“単純な分析”を使う人って、あなどれないのは、単に手を抜いている人もいるのだけど、論理自体をしっかりと練ることに力を配分している人がいるから。

こういう人の練ってきた論理は、とてもしっかりしていて、説得力がある。

論証の仕方ではなく、論理自体で勝負している。

これって、とても大事。

論証の仕方って、論理を理解してもらうための手段に過ぎないから、基本は効率化できるなら効率化すべき。

一つの論理を論証するのにやたらと複雑にやっていたとしたら、なにか間違っていないかと考えるべきだよね。



野口さんの本を読むと、“二次情報”や“単純な分析”で、しっかりとした論理を練ろうと自戒するね。

内容だけでなく、書き方も意識して読んでもらいたいな。








パラドックス13(講談社文庫)

パラドックス13 (講談社文庫)/講談社
¥896
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東野圭吾さんの最近文庫化された時空移動系の小説。

時空移動系の小説とわざわざ冠言葉を入れたのは、他の殺人事件をあつかう推理小説を区別したかったため。


おおざっぱに言うと、私は東野圭吾さん推理小説はそこまで好きではないが、時空移動系の小説は大好きだ。

古くは、時生が好きだな。


今回は時空移動系だけど、必ずしもタイムスリップではなく、別の時空間へのスリップが設定されている。

東野圭吾さんの時空移動系の小説を呼んでいると、「いま」、そして、「ここ」にいるという喜びを感じる。

これはこのような小説を読まないと、あまりありがたみがわからないんだよな。

久々に小説を読んで感謝を感じた。


さて、この時空移動を経営コンサルタントの観点で考えると、これは結構、コンサルタントが肝に銘じなくてはいけないことだと思う。

経営戦略の策定をするにしても、新たなブランドをつくるにしても、M&Aを支援するにしても、「いま」考えて意思決定することだが、その意思決定の影響はまだ見ぬ未来へと続く。

いかに未来に思いを馳せられるか。

たとえば、10年スパンの経営戦略を立案するとして、そのときの企業の経営陣は「いま」の人達ではない。

ましてや、展開する市場や事業ドメインも「ここ」ではないかもしれない。

未来の経営陣の心に「いま」「ここ」でどれだけ思いを馳せられるか。


経営をする人たちはもちろん、それを支援する経営コンサルタントも、時空を超えた想像力が求められているのは間違いないと思うのだが。


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