Ethanol Fuel Now 7月16日記事 "Syntec Gearing Up to Commercialize its Biomass-to-Ethanol Gasification/Synthesis Process"
http://ethanolfuelnow.com/ethanol-fuel-news/latest/syntec-gearing-up-to-commercialize-its-biomass-to-ethanol-gasification/synthesis-process/

バイオマス燃料に限らず代替エネルギーを調べていると、カナダとデンマークの企業をしばしば目にします。

バイオエタノールでは、デンマークの Novozymes とカナダの Iogen が有力だという話は以前述べました。

今回の話はまたカナダの会社です。

バイオマスから合成ガス(一酸化炭素と気体の水素の混合物)を製造し、その合成ガスからエタノールを合成するプロセスを開発したというのです。

しかも、Iogen のエタノール製造プロセスより高効率で割安だというのです。記事の下の方には、Iogen との比較表まで載っています。

本当なら、大きな前進なのかもしれません。

アメリカに Dyadic International という会社があり、セルロースからのエタノール製造を研究しています。

Ethanol Fuel Now 7月13日記事 "Dyadic Making Progress with Enzyme Mixtures for Cellulosic Ethanol"
http://ethanolfuelnow.com/ethanol-fuel-news/latest/dyadic-making-progress-with-enzyme-mixtures-for-cellulosic-ethanol/

私は今、先日ご紹介した米エネルギー省の報告書を読んでいるところですが、それを読んでようやく私にも多少わかってきたことがあります。

植物の繊維質は、要するに細胞壁の塊です。

細胞壁は主に3種類の物質 - セルロース、ヘミセルロース、リグニン - から構成されています。

これらの物質がそれぞれどう違うか、まだ私も把握していませんが、最初の2種類 - セルロースとヘミセルロース - だけがエタノールの原料となる、ということは、報告書を読んでようやく分かりました。

で、この2種類の物質を糖に変換する酵素2種類をそれぞれ、「セルラーゼ」、「ヘミセルラーゼ」と呼んでいます。

上述のURLの記事は、「糖への変換高率を大幅に高めたセルラーゼとヘミセルラーゼの混合物に関する研究成果を Dyadic が発表した」という記事です。

この分野では、デンマークの2社(Novozymes と Genencor)、カナダの2社(Iogen と SunOpta)なども研究開発をしています。

経済面およびエネルギー収支の観点から実用可能な製造プロセスをどこが最初に開発するか、目を離せません。

http://en.g8russia.ru/docs/11.html

サンクトペテルスブルクで開催されている8カ国サミットのウェブサイトには、"Global Energy Security" と題したページがあります。

"Renewables" という項目もありました。

太陽光(熱)、風力、地熱などとならんで、バイオマスも当然記載されています。

よくよく読んでみると、"Renewables" の4カ条のうち2カ条が「森林の管理」について割かれています。

"Renewables" の中ではバイオマスが結構重視されているということなのでしょうか。

最初の記事に戻りましょう。7月2日(日)日本経済新聞31ページの「エネルギーの理科 5 EPR」です。

この記事を読んでいくと、日本では数少ないピークオイル論者、石井吉徳先生(東京大学名誉教授)の言が出てきます。

石井先生には「ハバートのピーク」に関する著書(共著)があります。

「豊かな石油時代が終わる」(2004年日本工学アカデミー刊)

こういうウェブサイトも運営されてます。

http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/

私には日本経済新聞社に対してものすごく不満があります。

石井先生の指摘(発言)を記事に書いているくらいですから、石井先生に取材したのでしょう。

なるほど。確かに「エネルギー問題を『エネルギー収支』という観点でとらえること」については、石井先生は日本で数少ない識者と言えるでしょう。石井先生に取材するのはまったく妥当だと思います。

しかし、石井先生を取材すれば、上述のウェブサイトや著書について、日経の記者たる者、存在すらも全く知らないということはないはずです。にもかかわらず、記事には「ハバートのピーク」については一言も触れていません。


ひょっとして、私ごとき素人、それも本業が別にあって片手間で調べている者に対してすら、日経の記者が劣るということなのでしょうか。

そうなのかもしれませんが(だとしたら、実に嘆かわしい、情けない状況です)、私には別の解釈があります。

こういうのを見ると、私は「作為」を感じるのです。「何を書かなかったか」というところに作為を感じるのです。単なる状況証拠に過ぎませんが。

この記事に限りません。日経・日経産業・日刊工業の各紙に目を通していますが、今のところ私は一度も新聞紙上で或いはTVニュースや日本語の大手ネットメディア上で「ハバートのピーク」とか「ピークオイル」とか「石油ピーク」といった言葉を見たり聞いたりしたことがありません。

ところが、経済産業省が公開した「新・国家エネルギー戦略」には出てくるのです。しかも、この「新・国家エネルギー戦略」の内容については、その部分部分が日本の大手メディアにはときどき出てくるのです。それにもかかわらず、「ハバートのピーク」や「ピークオイル」という言葉は、大手日本語メディアからはまだ出てこないのです。

次の疑問は「どういう『作為』を誰が誰に対して何の目的で為しているのか」ですが、状況証拠しかない以上、これまでに書いたこと以上のことはまだ言えません。

いずれ気付いたときに指摘しようと思います。

#11で取り上げたバイオ・エタノール・ジャパン関西株式会社について、7月13日(木)に日経産業新聞15ページが報じていました。

[要旨]

(1)大阪府堺市に建設中のバイオエタノールプラントは2007年1月から稼動開始する。

(2)稼動当初の生産量は年産1400kl(キロリットル)。この生産量は、自動車4万台分のE3消費量(年間消費量とは書いていない)に相当する。この段階では、原料を加水分解し、糖分としてブドウ糖とキシロースとを得るが、そのうちキシロースだけからエタノールを製造する。

(3)ブドウ糖からエタノールを製造する設備を、2008年に増設する。増設の投資額は数億円程度。増設後は年間4万~5万トンの原料(廃木材)から合計で年産4000klの生産能力となる。この工程で使用する酵素を稼動開始後1年程度の間に選定する。

(4)総事業費(総投資額?)は40億円程度。

(5)廃木材処理(廃棄物回収事業のこと?)による収益を含めると、ガソリンより「やや高い」程度の単価で生産可。

最初の1年間、加水分解工程から得られるブドウ糖をどうするのかについては何も書いてありませんでした。どうするんでしょうね。

「大投資家ジム・ロジャーズが語る商品の時代」(日本経済新聞社)

これは私が代替エネルギーについて調べるきっかけとなった1冊で、昨年1月に読んで私が「ハバートのピーク」を知ることとなった原因の1冊です。

原題は "Hot Commodities: How Anyone Can Invest Profitably in the World's Best Market" というもので、これから明らかなように、基本的には資産運用をしている人のために書かれている本です。著者のジム・ロジャーズ氏は、「イングランド銀行を破産させた男」として有名なジョージ・ソロス氏の(1970年代に)相棒だった人物です。

第6章「安い石油よ、さようなら」に「ハバートのピーク」および代替エネルギーについて書いてあります。個人的な意見ですが、この第6章は、決して十分な解説とは言えないと思いますが、それでも私がこれまで読んだ日本語で読める「ハバートのピーク」に関する解説のうち、(私も含め)一般人にとって最も読みやすいものだと思います。

7月4日の日経朝刊11ページに「インドネシア バイオ燃料生産に1200億円 税制優遇措置も導入」という記事があります。

インドネシアは石油の純輸入国になっていると聞いています。石油の豊富だったインドネシアですら、バイオマス燃料の生産に注力せざるを得なくなっているというわけです。

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[要旨]
・2004年に原油純輸入国に転じた
・2007年にバイオディーゼル工場を8箇所新設
・合計で年産48000トン
・総投資額十兆ルピア=1200億円
・2010年までに燃料消費の10%をバイオマス燃料で代替
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それにしても、記事中に「パームヤシやサトウキビを原料にしたバイオディーゼル製造工場」とあるのは、ちょっとどうかと。

今年の1月の一般教書演説の折に、セルロースから製造するエタノールでガソリンを代替する方向性を打ち出していることが報じられていました。

その具体化に向けての行動計画が昨年12月に検討され、その内容が米エネルギー省から公開されています。

U.S. Department of Energy ウェブサイトより:
http://www.doegenomestolife.org/biofuels/b2bworkshop.shtml
http://www.doegenomestolife.org/biofuels/2005workshop/b2bhighres63006.pdf (全218ページ)

Ethanol Fuel Now 7月7日記事より:
http://ethanolfuelnow.com/ethanol-fuel-news/latest/us-doe-releases-roadmap-for-cellulosic-ethanol/

一般教書演説が昨年12月の検討の後に行われたことを考えると、「一連の動き」が見えてくる感じがします。

公開された資料は200ページ以上もある膨大なものです。時期を見て、内容を少しずつここに投稿していこうと思います。