☆避妊薬(ピル)の種類によるAMH低下の違いは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、避妊薬(ピル)の種類によるAMH低下の違いについて検討したものです。

 

Fertil Steril 2023; 119: 1069(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.02.019

要約:2018〜2021年各種避妊薬(ピル)使用中の女性を対象にAMH値を測定し、AMH低下の程度を避妊薬未使用の女性と比較しました(横断研究)。結果は下記の通り(有意差のみられた項目を赤字表示)。

 

          症例数   オッズ比(95%信頼区間)

ピル未使用    27,514名      〜

銅含有IUD     1,268名   1.06(1.01〜1.11)

ホルモン含有IUD  4,867名   1.01(0.98〜1.03)

インプラント    834名    0.85(0.81〜0.90)

黄体ホルモン単独  465名    0.89(0.83〜0.96)

合成ホルモンピル  6,850名   0.84(0.81〜0.90)

膣内リング     886名    0.84(0.80〜0.89)

IUD=子宮内避妊具

 

また、AMH抑制効果が強い順番は、インプラント>合成ホルモンピル>膣内リング>黄体ホルモン単独>ホルモン含有IUD>銅含有IUDでした。

 

解説:避妊薬(ピル)によりAMHが低下することが知られていますが、ピルの種類による違いについては明らかにされていませんでした。本論文は、避妊薬(ピル)の種類によるAMH低下の違いについて検討したものであり、最も使用頻度の高い合成ホルモンピル(低用量ピル)やインプラントで抑制が強く銅含有IUDやホルモン含有IUDで抑制が弱いことを示しています。避妊薬の中止時期を決める際に役立つデータだと思います。

 

下記の記事を参照してください。

2020.11.12「☆採卵周期前のピル(カウフマン)の効果は?

2020.10.13「☆ピルでAMHが完全に抑制された症例報告

2020.8.14「☆採卵の前周期のカウフマンは? その2

2020.3.16「Q&A2505 長期のピルによるAMH低下でしょうか

2019.1.14「Q&A2074 産婦人科医から質問3つ

2017.5.12「AMHに影響する因子

2017.2.3「ピルの血栓リスク:ASRMガイドライン

2016.2.26「Q&A1012 ☆ピルで卵子が温存できるのにAMHが下がるのはなぜ?

2016.1.6「Q&A961 カウフマンとピルの違いは?

2015.10.4「ピル服用でAMHが19%低下

2014.11.8「☆ピルを飲むとAMHが減ります

2014.6.8「Q&A369 ☆採卵の前周期のカウフマンは?

2014.1.17「☆☆「良い卵子」とは?

2013.10.4「☆低用量ピルの違い

2013.9.18「Q&A77 ☆AMHが増えました♡」

2013.6.16「☆☆☆AMHは年齢とともに低下しません⁈」

2013.6.1「体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その2

2013.4.22「☆ホルモン剤(ピル)の使い方でAMHが半減?」
2013.5.14「☆体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その1」
2013.5.21「☆☆ピル(OC)のメリット」