Q&A369 ☆採卵の前周期のカウフマンは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 38歳、治療歴2年、原因不明
生理周期は23~28日、大体25~26日のことが多く頻発月経気味ですが、基礎体温は2層に分かれており、高温層も13~14日あります。排卵が9~14日と少し早いです。フーナー3回中2回不良で自然妊娠は難しいと言われましたが、そのほかCD3のホルモン値も問題なし(いつもFSH10以下)、原因不明です。不育症の検査も問題ありませんでした。
体外受精3回
①クロミッド+途中から注射で誘発、5個採卵、2個受精・1個異常受精で破棄、1個新鮮杯移植で陰性。胚盤胞にならず
②前周期にカウフマン1周期、CD3から注射で刺激(アンタゴニスト)、10個採卵、7個受精、2個胚盤胞凍結、軽度OHSS。融解胚移植2回、1回は陰性、1回(6BC)は化学流産。
③クロミッドのみで誘発、4個採卵、1個受精するも分割が遅く破棄。
年齢的なこともあるとは思いますが、卵の質が悪いんだと思っています。AMHは測っていません。3回の採卵で違うのは、誘発方法と前周期にカウフマンをしたかどうかです。そこで次の採卵前にカウフマンをしたいと言ったのですが、前周期にピルを飲むだけで十分と言われました。ピルを飲むことで卵胞の大きさが揃うので、よい卵が採れる周期はピルを飲んだほうがよい卵が多く採れる可能性は増えるかも…とのこと。カウフマンって卵巣を休ませて周期を整える効果があると思っていたのですがピル飲むだけでも卵巣は休まるのでしょうか。確かにピルを飲んだ翌周期は排卵が13~14日であることが多いようにも思います。またカウフマンをする人はPCOの人が多いのかと思っていましたが、頻発月経ぎみの周期の乱れにも効果はありますか。効果があるとしたら何周期ぐらいやれば効果的でしょうか。それとも原因不明にカウフマンやピルはあまり意味がないものでしょうか。今年度は採卵2回と決めているので多少回り道でも可能性がある方法をとりたいと思っています。
また、ホルモン補充周期で陰性、翌周期採卵する場合、ホルモン補充周期では排卵していないためカウフマンをやったのと同じような効果があるのでしょうか。

A 
ピルとカウフマンは、使用する薬剤や量が少し異なるだけで、基本的に同じものとお考えください。どちらも卵巣を休ませることになりますが、休ませたら良い結果になるとは限りません。卵巣を休ませると、原始卵胞からの卵胞供給を停止させることになります。たとえば、避妊目的でピルを使用した後には、ピルを中止してもすぐに妊孕性(妊娠できる力)が復活せず、3ヶ月ほど後に卵巣機能が回復します。ホルモン補充周期の場合に使用する薬剤もピルやカウフマンと同様の影響が考えられます。下記の記事を参照してください。
2013.4.22「☆ホルモン剤(ピル)の使い方でAMHが半減?」
2013.5.14「☆体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その1」
2013.5.21「☆☆ピルのメリット」
2013.6.1「体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その2」

卵胞の大きさが揃った方が良い卵子が採れると考えられていましたが、その考えは最新の研究で否定されています。(2014.1.17「☆☆「良い卵子」とは?」を参照してください)

2回目の採卵で最もよい結果が得られたのは、前周期にカウフマンを行ったからではなく、毎日注射をしたからだと思います。生理3日目前後にその周期に発育する卵胞が選択されると考えられており、最初に注射の刺激があった方が沢山育ちます。

私は、採卵の前周期のピルはあまりお勧めしていません。特に、卵巣機能が低下している場合には、やめておいた方がよいと思います。また、使用する場合は、短期間に留めておくのが懸命です。逆に、PCOSのように沢山の卵胞が供給される方ではピルを行って、卵胞を減らす作戦もありでしょう。