ピルの血栓リスクについて、米国生殖医学会(ASRM)からガイドラインが発表されましたので、ご紹介いたします。
Fertil Steril 2017; 107: 43(ASRM)
要約:ピルの深部静脈血栓(VTE)リスクについてまとめると、有意差のみられた項目は下記の通り。
VTEリスク 相対危険度
非妊婦、ピル(ー) 1〜5名/1万人年 1.0(対照群)
妊婦 5〜20名/1万人年 4.3
閉経後 40〜65名/1万人年 4.3
非妊婦、ピル(+) 3〜15名/1万人年
第1世代ピル(ノルエチステロン) 3.2
第2世代ピル(レボノルゲストレル) 2.8
第3世代ピル(デソゲストレル) 3.8
第3世代ピル/第2世代ピル 1.3
20μgエストロゲン/ピル(ー) 2.2
50μgエストロゲン/20μgエストロゲン 2.3
ガイドラインとして以下を推奨(エビデンスレベル)
1 50μgエストロゲンは、それ以下のエストロゲン量よりVTEリスクが高い(B)
2 35μgとそれ以下のエストロゲンではVTEリスクの差はない(B)
3 ドロスピレノンと第3世代ピルは第1第2世代より若干VTEリスクが高い(B)
4 経口薬ではなく、貼付剤や膣剤を用いた場合のVTEリスクのデータは不十分(C)
5 喫煙、35歳以上、肥満、高血圧、遺伝性の血栓性素因はピル使用時のVTEリスクが増加する(B)
解説:ピルによる血栓リスクが報告されていますが、そのリスクとはどの程度なのか、ピルの種類により異なるのかについては明らかにされていませんでした。日本ではピルの認可までに10年の歳月を要しました。この議論の中で、ピルの血栓リスクが大きく取り上げられ、厳重な注意書きとともに認可されました。しかし、いたずらに危機を煽り、正しい使い方ができないようでは困ります。本論文は、ASRMから発表されたピルの血栓リスクに関するガイドラインです。ピルの種類によって若干のリスクは異なりますが、ピルによる血栓リスクは妊娠中の方よりも低いレベルです。ましてや閉経後の方と比べると1/3程度です。したがって、いたずらに血栓を恐れるのではなく、必要な時には必要最小限の量を服用するのが良いでしょう。
下記の記事を参照してください。
2013.10.4「☆低用量ピルの違い」