☆低用量ピルの違い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

低用量ピルに関する質問がしばしばあります。ピルについては、何度かご紹介してきましたが、下記の記事に分散して記載したため、わかりにくくなっているかもしれません。2013.9.26にルナベルULDという新しいピルが発売されたこともありますので、ここでもう一度整理してみました。
2013.4.22「☆ホルモン剤(ピル)の使い方でAMHが半減?」
2013.5.14「☆体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その1」
2013.5.21「☆☆ピルのメリット」
2013.5.27「☆女性ホルモン剤を使うのは心配ですか?」
2013.6.1「体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その2」

*低用量ピル(エストロゲン製剤が50μg未満)の世代分類は、黄体ホルモン製剤の種類によります。現在日本で発売されている低用量ピルの一覧を示します。なお、()内は適応を示しています。

        エストロゲン製剤(μg)    黄体ホルモン製剤(μg) 
第1世代   (エチニルエストラジオール) (ノルエチステロン
シンフェーズ   35             500→1000(避妊)
オーソ777    35             500→750→1000(避妊)
オーソM     35             1000(避妊)
ルナベル     35             1000(子宮内膜症適応)
ルナベルULD   20             1000(月経困難症適応)

第2世代   (エチニルエストラジオール) (レボノルゲストレル
アンジュ     30→40→30        50→75→125(避妊)
トリキュラー   30→40→30        50→75→125(避妊)
ラベルフィーユ  30→40→30        50→75→125(避妊)

第3世代   (エチニルエストラジオール) (デソゲストレル
マーベロン    30             150(避妊)
ファボワール   30             150(避妊)

第4世代  (エチニルエストラジオール)  (ドロスピレノン
ヤーズ      20             3000(月経困難症適応)

*黄体ホルモンの持つ、女性ホルモン活性(E)、男性ホルモン親和性(Ag)と拮抗性(An)、糖質コルチコイド(ステロイドホルモン)活性(GC)、鉱質コルチコイド拮抗性(AMC)は下記の通りです。
                 E Ag An GC AMC
1 ノルエチステロン       +  + -  -  -
2 レボノルゲストレル      -  + -  -  -
3 デソゲストレル        -  + -  -  -
4 ドロスピレノン        -  - +  -  +

大雑把なイメージとしては、生理周期のリセットにはエストロゲン製剤も黄体ホルモン製剤も中用量か高用量を短期間用い、長期服用には低用量を用いるといった使い方です。子宮内膜症にはエストロゲンが少なく黄体ホルモン含有量が多いものを用います。効き方には大きな個人差がありますので、用途別にその方に合った製剤を用いることが大切です。前周期に用いた低用量ピルの違いによる採卵数は、男性ホルモン拮抗性(An)>男性ホルモン親和性(Ag)であったという論文が1件報告されています。また、低用量ピルの連続使用で、AMHが9週間で半減するという報告もあります。連続使用とは、休薬期間がなくピルを使うことを意味しています(○○21を連続使用することです。○○28には7日分の偽薬が含まれていますので、これを連続使用する場合は7日間の休薬期間が含まれることになります)。