本論文は、採卵周期前のピル(カウフマン)の効果についての検討です。
Fertil Steril 2020; 114: 779(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.05.021
Fertil Steril 2020; 114: 743(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.07.040
要約:2014〜2017年に採卵し初回採卵を実施した3,110名の女性(20〜40歳)を対象に、前周期にピルを用いた場合と用いなかった場合の新鮮胚移植の出産率と凍結胚移植を含めた1回の採卵での累積出産率を後方視的に検討しました。なお、月経周期は21〜35日、ベースのFSH<15を対象としました。結果は下記の通りピル使用群で出産率の有意な低下を認めました。
ピル使用あり ピル使用なし 相対危険度(信頼区間)
新鮮胚移植出産率 42.6% 52.8% 0.73(0.62〜0.86)
1回採卵の累積出産率 62.8% 67.6% 0.89(0.80〜0.98)
解説:かつて、ピル(カウフマン)は生理周期の調整や卵胞の大きさを揃えるために、採卵の前周期に用いられていました。最近では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方で前周期のピル使用によるデメリットが相次いで報告され、あるいは月経周期が正常な方でも前周期のピル使用の優位性に疑問を持つ報告もあります。本論文は、採卵周期前のピル(カウフマン)の効用について月経周期が正常な方で検討したものであり、ピルを使用しない方が良好な出産率であることを示しています。
コメントでは、3種類のピルが使用されていること、HMG製剤使用量の補正がないこと、初期胚移植がほとんどであることを指摘しています。また、ピルを使用した場合の出産率低下のメカニズムとして、ピルの残存効果で内膜の速度の変化(抑制?)があるのではないかと推察しています。
某医師のブログではカウフマン一押しですが、カウフマンに否定的な論文もあることを考慮して欲しいと思います。
下記の記事を参照してください。
2020.10.13「☆ピルでAMHが完全に抑制された症例報告」
2020.8.14「☆採卵の前周期のカウフマンは? その2」
2020.3.16「Q&A2505 長期のピルによるAMH低下でしょうか」
2019.1.14「Q&A2074 産婦人科医から質問3つ」
2017.5.12「AMHに影響する因子」
2017.2.3「ピルの血栓リスク:ASRMガイドライン」
2016.2.26「Q&A1012 ☆ピルで卵子が温存できるのにAMHが下がるのはなぜ?」
2016.1.6「Q&A961 カウフマンとピルの違いは?」
2015.10.4「ピル服用でAMHが19%低下」
2014.11.8「☆ピルを飲むとAMHが減ります」
2014.6.8「Q&A369 ☆採卵の前周期のカウフマンは?」
2014.1.17「☆☆「良い卵子」とは?」
2013.10.4「☆低用量ピルの違い」
2013.6.16「☆☆☆AMHは年齢とともに低下しません⁈」
2013.6.1「体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その2」
2013.4.22「☆ホルモン剤(ピル)の使い方でAMHが半減?」
2013.5.14「☆体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その1」
2013.5.21「☆☆ピル(OC)のメリット」