Q&A2746 PCOSで相談 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で卵胞が多くあります。通院先のクリニックでは二段階移植用に初期胚の凍結を勧められたのですが、高齢のためリスクの高まる多児妊娠を恐れています。

そこでお伺いしたいのですが、

①グレード4や5の初期胚を二段階移植に用いれば、着床のシグナルを送る役割をある程度果たしつつ、多児妊娠のリスクを下げられるのでしょうか。

②未熟卵が多く、胚盤胞もグレードの低いものが多かったため、卵の質改善にミオイノシトールの服用を検討していますが、ミオイノシトールはPCOSの改善にも繋がりますか。PCOSが改善しうる場合、卵の質改善の一方で採卵数が減ってしまうのでしょうか。

 

A 

①1個移植ではどんなに良い胚でも着床せず、2個移植でしか着床しない方がおられます。このような方では、胚から出る何らかの(内膜の構築や着床に関与する)物質が不足しているものと推察されます。これらの物質を「着床のシグナル」と称するのであれば、グレードの低い胚の有効活用という意味で多児妊娠を防ぎつつ2個移植するのに役立つ可能性はあります。

ミオイノシトールの効能は主に二極化されます:PCOSなどAMH高値の方では未熟の改善に、AMH低下の方では卵子の改善に繋がるとされています。つまり、PCOSの方では元々の疾患(PCOS)の改善ではなく、採卵時の未熟卵対策になります。採卵数とは関係ありません。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。