本論文は、タイムラプス培養のメリットに関する報告です。
Hum Reprod 2022; 37: 2757(英国)doi: 10.1093/humrep/deac233
要約:42歳以下の女性で胞状卵胞(AFC)12個以上かつ正常受精(2PN)6個以上を対象に、585個の胚をタイムラプス培養群(289個)と非タイムラプス培養群(296個)の2群にランダムに分け(sibling study)、培養成績と妊娠成績を前方視的に検討しました。また、day 5 での培養液のアミノ酸組成を分析しました。結果は下記の通り(有意差のみられた項目を赤字表示)。
タイムラプス培養群 非タイムラプス培養群 P値
day 5胚盤胞到達率 55.0%(159/289) 44.9%(133/296) 0.013
day 5胚盤胞凍結率 31.1%(90/289) 23.3%(69/296) 0.032
2群間で有意差が認められたday 3とday 5の培養液の組成の変化は、12種類のアミノ酸であり、タイムラプス培養群でいずれのアミノ酸も消費量が増加し産生量が減少していました。また、2群間での妊娠率は同等でした。
解説:タイムラプス培養では、培養環境の変化が少ないことが知られています。本論文は、タイムラプス培養の有無による培養成績と妊娠成績を検討したランダム化試験であり、タイムラプス培養により胚盤胞発生率が有意に増加すること、培養液のアミノ酸組成が有意に変化することを示しています。妊娠成績に有意な変化は認めていませんが、移植した件数がそれぞれ19件と20件であり結論を導くことはできません。
タイムラプスについては、下記の記事を参照してください。
2022.1.13「体外受精で1PN胚は何故起きるか?」
2020.1.10「正常胚の出産率予測には桑実胚になるまでの時間が重要」
2019.11.23「☆前核の大きさで出産率の予測!?」
2019.9.13「タイムラプスパラメータと出産率の関連」
2018.5.24「タイムラプスによるday 3初期胚と形態学的評価による胚盤胞のどちらが良いか?」
2018.5.10「PGS正常胚のタイムラプスにおける特徴」
2016.4.24「タイムラプスは妊娠率アップに有効か その3」
2016.3.9「タイムラプスは妊娠率アップに有効か その2」
2016.3.6「タイムラプスは妊娠率アップに有効か その1」
2016.2.22「妊娠出産に寄与する因子は?」
2015.3.4「タイムラプスを使って女の子の胚を選別できる?」
2015.2.27「タイムラプスによる胚選別のアルゴリズム」
2014.4.30「タイムラプスの将来性」
2014.3.12「☆タイムラプスによる着床できる胚の分割速度:これまでのまとめ」
2013.10.17「☆タイムラプス•イメージングの進化」
2013.7.13「☆適切な時期に適切に分割する胚が良好胚」
2013.11.18「タイムラプスの基本」