タイムラプスパラメータと出産率の関連 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、タイムラプスパラメータと出産率の関連を検討したものです。

 

Hum Reprod 2019; 34: 1439(フランス) doi: 10.1093/humrep/dez085

要約:2014〜2017年に採卵し、顕微授精で単一初期胚移植を実施した232個の胚のタイムラプスパラメータ35個と出産の関係を後方視的に検討しました。なお、42歳以上、ドナー卵子、卵管水腫、BMI>32の方は除外しました。出産率は、前核が並置した時に中央にあることで2.20倍に有意に増加し、2細胞の時に多核があることで0.51倍に有意に低下しました。そのほかのパラメータは出産率と有意な関連を認めませんでした。

 

解説:タイムラプス培養器の登場により、様々なパラメータと胚盤胞到達率や着床率(妊娠率)との関連が検討されていますが、出産率との関連を検討した報告はありませんでした。本論文は、タイムラプスパラメータと出産率の関連を初めて検討したものであり、前核が中央にあることと2細胞期の多核がないことの2点だけが重要であることを示しています。極めてシンプルな結論ですが、胚の質は採卵後わずか2日で決まってしまうという衝撃的な結論です。

 

タイムラプスについては、下記の記事を参照してください。

2018.5.24「タイムラプスによるday 3初期胚と形態学的評価による胚盤胞のどちらが良いか?

2018.5.10「PGS正常胚のタイムラプスにおける特徴

2016.4.24「タイムラプスは妊娠率アップに有効か その3

2016.3.9「タイムラプスは妊娠率アップに有効か その2」
2016.3.6「タイムラプスは妊娠率アップに有効か その1」
2016.2.22「妊娠出産に寄与する因子は?」
2015.3.4「タイムラプスを使って女の子の胚を選別できる?」
2015.2.27「タイムラプスによる胚選別のアルゴリズム」
2014.4.30「タイムラプスの将来性」
2014.3.12「☆タイムラプスによる着床できる胚の分割速度:これまでのまとめ」
2013.10.17「☆タイムラプス•イメージングの進化」
2013.7.13「☆適切な時期に適切に分割する胚が良好胚」
2013.11.18「タイムラプスの基本」