☆PRP療法による着床率改善 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、PRP(Platelet Rich Plasma=多血小板血漿)療法による着床率改善を示したものです。

 

Fertil Steril Sci 2021; 2: 295(英国)DOI:https://doi.org/10.1016/j.xfss.2021.03.002

要約:2019〜2020年3回以上胚移植不成功の方318名を対象に、PRP注入群と非実施群に分け、妊娠成績を前方視的に検討しました(非ランダム化試験)。なお、40歳以上、BMI30以上の方は除外しました。PRP注入は、移植周期の前周期の着床期に子宮内膜下に注入の55名と、移植周期中に内膜が7mmになったところで子宮内腔に注入の109名とし、いずれもPRP採血の直前に3日連続でG-CSF 300μgを皮下投与しました。PRP治療を選択しなかった方154名は通常通り移植しました。妊娠成績は下記の通り(有意差ありを赤字表示)。

 

            PRP注入群           非実施群     P値

        子宮内膜下     子宮内腔       対照群

臨床妊娠率  51.0%(28/55) 52.3%(57/109) 33.8%(52/154) 0.006

出産率    40.0%(22/55) 41.3%(45/109) 22.1%(34/154) 0.004

流産率    25.5%(14/55) 22.2%(25/109)  22.1%(34/154) NS*

*NS=有意差なし

 

解説:PRP療法による着床率改善効果が期待できるのか否かについて、メタアナリシスでは有効であるとされていますが、一部に否定的な論文もあります。PRPには、TGFβ、PDGF、IGF1、VEGF、EGF

、HGF、IL8などの成長因子やサイトカインが含まれており、これらが子宮内膜を厚くしたり、着床環境を改善するのではないかと推察されています。また自分の血液から抽出したものを使いますので、特別なリスクはありません。本論文はこのような背景の元に行われた研究であり、PRP療法による着床率改善効果を示しています。注入部位は子宮内膜下と子宮内腔で妊娠成績は同等ですので、移植周期中に子宮内腔に注入する方法が実用的です。本論文で注目すべき点は、PRP中の成長因子やサイトカイン産生を増強するために、PRP採血の直前に3日連続でG-CSF 300μgを皮下投与していることです。ただし、本論文はランダム化試験ではありませんので、大規模なランダム化試験による検討が必要です。

 

リプロダクションクリニック では、最近、Freeze dryしたPRP(PFC-FD)治療を取り入れましたので、詳細は外来でご相談ください。

 

PRP療法については、下記の記事を参照してください。

2021.9.4「☆移植周期のPRP療法

2021.8.10「PRP卵巣注入による卵子形成促進

2021.2.25「☆PRP療法の基礎的検討

2019.12.12「PRP療法について:オピニオン

2019.6.13「☆PRP療法について