Q&A3056 29歳、無脳症後、化学流産2回 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 29歳、不妊治療2年目

27歳まで、生理不順のため8年間ピルを服用。結婚を機にピルをやめるも、月経が来ないため婦人科受診し、無排卵を指摘されました。D3でのホルモン値は問題なし。クロミッドでは3個以上卵胞が育ち、タイミングを控えるよう指導されることが続き、早々にIVFにステップアップしました。

27歳で採卵26個、21個受精、16個胚盤胞凍結
移植①自然周期6AA 陰性
移植②ホルモン補充周期5AA 陽性→無脳症のため15w1dで中絶
移植③ホルモン補充周期5AA 陰性
移植④ホルモン補充周期5AA 陽性:BT11 hCG 204→BT18 胎嚢確認できず化学流産
移植⑤ホルモン補充周期5AA×2:BT11 hCG 12.5 化学流産

移植⑤に関しては、フラジール膣錠、経口ラクトフェリン、インバグ、タクロリムス、リンデロン、ズファラジン、子宮内hCG注入、アスピリン、さらに1年ぶりの子宮鏡対策をした上での結果です。またNK細胞、Th1/Th2異常なしです。

死産と化学流産2回を経験し、心身ともに限界を迎えています。採卵をやり直し、PGT-Aをするべきでしょうか。また、その他に出来ることはありますでしょうか。今後の治療に関してアドバイスをいただけますと幸いです。

 

A 無脳症は染色体異常ではなく神経管閉鎖障害ですので、(年齢的にも)PGT-Aを行うメリットはないと思います。神経管閉鎖障害は、脊椎の神経管の癒合不全による先天異常であり、無脳症、二分脊椎、脳瘤があります。日本では出生1万人に対し、無脳症1.34人、二分脊椎5.49人、脳瘤0.9人となっており、外国より発症率が低くなっています。第1子に神経管閉鎖障害がある場合、第2子の妊娠前から葉酸を1日4mg摂取すると神経管閉鎖障害のリスクが低下しますので、次回の妊娠では葉酸4mgの服用をお勧めいたします(通常の4〜10倍量)。

 

また、化学流産2回と陰性2回がありますので、着床障害と不育症の対策をしっかり行った上で、次回の移植に臨むのが良いと思います。特に流産後の移植が上手くいかない(化学流産や陰性)場合には、慢性子宮内膜炎が生じていることがありますので、そちらの検査をお勧めします。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。