PRP療法について:オピニオン | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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PRP(Platelet Rich Plasma=多血小板血漿)療法についての質問が今年になってから急速に増加しています。本論文は、PRP療法についてのオピニオンを述べたものであり、現時点では証拠不十分のため推奨しないとしています。

 

Hum Reprod 2019; 34: 2099(トルコ)doi: 10.1093/humrep/dez190

要約:通常の治療に加えて行う「追加治療」は、得てして高額であり、今後起こり得る未知なるリスクが否定できません。最近しばしば行われるようになったPRP療法もその範疇に属しています。PRP療法は、POF(早発卵巣不全、POI)、着床障害、薄い子宮内膜の際に実施されますが、小規模かつほとんどが前後の比較といった不適切な研究からのデータしかなく、厳格な研究を元にしたデータはありません。もっともらしい説明がつくものの、全てが仮設に過ぎないのが「追加治療」の典型的なパターンです。従って、大規模なランダム化試験の結果が出るまでは、PRP療法の実施は控えるべきです。

 

解説:PRP療法は近年、再生医療の領域で用いられ、整形外科、皮膚科、美容外科領域での使用頻度が急速に拡大しています。PRPには、VEGF、TGF、PDGF、EGFなどのさまざまな増殖因子が含まれており、細胞の遊走、接着、分化、増殖、細胞外因子の集合に関与しています。ご本人の血液から生成して利用できるため、安全性が高いという特徴があり、最近ではPRP分離装置も各社から発売されています(そのような装置を使わずに分離も可能です)。本論文は、PRP療法は現時点では証拠不十分のため推奨しないとしています。これまでにも小規模な研究で有効性があると言われた「追加治療」が、大規模なランダム化試験により完全に否定されることがしばしばありましたので、同じ轍は踏まないようにと警鐘を鳴らしています。

 

下記の記事を参照してください。

2019.6.13「☆PRP療法について