☆PRP療法について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

PRP(Platelet Rich Plasma=多血小板血漿)療法についての質問が最近増えていますので、論文をまとめてみました。

 

Clin Exp Reprod Med 2018; 45: 67(エジプト)

要約:PRPは採血後に遠心分離して血小板の豊富な分画を採取します。PRPには、VEGF、TGF、PDGF、EGFなどのさまざまな増殖因子が含まれており、細胞の遊走、接着、分化、増殖、細胞外因子の集合に関与しています。PRPは最近、整形外科(骨折、炎症)、眼科、皮膚科(創傷治癒)、泌尿器科(漏、尿失禁)、産婦人科(POF、卵巣茎捻転、内膜菲薄、着床障害)の場面で使用されています。創傷が生じるとまず血小板が集まってきます。PRPは直接血小板をその場所にダイレクトに供給する治療です。

 

J Assist Reprod Genetics 2018; 35: 757(米国)

要約:ヒト子宮内膜間質線維芽細胞、子宮内膜間葉系幹細胞、骨髄間葉系幹細胞、イシカワ細胞をPRPと共培養を行いました。PRPは、全ての種類の子宮内膜細胞の遊走と増殖を促進しました。また、炎症系サイトカインの増加を認めました。これらの事実は、PRPが子宮内膜再生に有効であることを示唆します。


解説:PRP療法(多血小板血漿療法)は、2015年に中国のグループが、子宮内膜発育促進作用を報告してから、少数例の報告が相次いで発表されています。論文の記載を見ると、PRP療法がある程度有効であることがわかりますが、どのような方に有効であるかについては明らかではありません。日本でも某クリニックでPRP療法の治験(治療)が行われているようですが、今後の検討が必要です。現段階では実験的(試験的)な治療であると考えます。

 

余談ですが、PRPは私が米国留学中のメインテーマのひとつでした。心臓移植の患者さんや健常者の方の血小板の機能を様々な方法で分析する研究を行っていました。血小板を分離する際には必ずPRPを使いますので、毎日PRPを調整して研究していた日々を思い出します。今、PRPは再生医療の領域で注目を集めています。PRPは宝の宝庫であると言えます。