本論文は、空腹時血糖が高いと妊娠しにくいことを示しています。
Hum Reprod 2019; 34: 1325(中国)doi: 10.1093/humrep/dez069
要約:中国の国家データを用い、2015〜2016年に妊娠歴のない方2,226,048名を対象に、妊娠前の空腹時血糖と妊娠率の関係を調査しました。12周期あたりの妊娠率は、空腹時血糖正常(42.3%)と比べて、境界型(35.5%、0.82倍)と糖尿病(31.5%、0.74倍)で有意に低くなっていました。また、血糖値90mg/dL未満(最も良いのは70〜88mg/dL)で、妊孕性が良好でした。
解説:中国でも不妊症が増加しており、糖尿病も増加しています。また、糖尿病と妊孕性の関連も示唆されています。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、妊娠前の空腹時血糖が高いと妊娠しにくいことを示しています。母体の耐糖能異常については、お子さんの神経発達障害、耐糖能異常、心血管疾患、肥満、糖尿病のリスク増加が報告されています。糖代謝は、妊活に重要な役割を担っているものと考えます。
なお、WHOのガイドラインによると、空腹時血糖を3段階に分け、126mg/dL以上を糖尿病、110〜125mg/dLを境界型、110mg/dL未満を正常としています。妊活中の基準は、それよりも格段に厳しいものと言えます。
耐糖能異常については、下記の記事を参照してください。
2019.6.12「☆不妊原因と子供の健康について その3:夫婦の内分泌疾患」
2019.3.28「☆インスリン過剰は胎盤に毒?」
2016.1.1「Q&A956 インスリン抵抗性」
2015.12.24「メトホルミンの効能」
2015.9.22「☆PCOSでのメトホルミン治療:Cochrane review」
2015.8.20「☆メトホルミンの妊娠中の使用」
2014.2.8「メトホルミンの妊娠中の使用は?」