メトホルミンの効能 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、メトホルミンの効能についてのレビューです。

Stem Cells Dev 2013; 22: 2927(インド)レビュー
要約:メトホルミン(グリコラン、メデット、メトグルコなど)は、糖尿病や耐糖能異常(糖尿病予備軍)の方に用いられる内服薬で、インスリンの感受性を高め、肝臓での糖新生を抑制します。婦人科では多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方や耐糖能異常の方にしばしば使われ、排卵の回復と流産の予防効果が示されています。最近では、メトホルミンは妊娠後期にも重要であるとされています。近年の研究で、メトホルミンはストレスに対する防御機構(AMPK経路)があることが報告されています。AMPK経路は、細胞の分化(ID2→CSH1)および多能性(FOXO1→Oct4、Sox2)に関与しており、着床に関与するという報告があります。妊娠に影響するストレスとして、栄養失調、糖尿病、低酸素があり、これらは流産をもたらします。インスリンの上昇や低酸素は胚発生を障害することが示されていますが、メトホルミンはこれを抑制する作用が期待されます。

解説:メトホルミンは、1920年代に製造され、1957年から使用されています。疫学(統計)研究によると、メトホルミンは癌の罹患率を減少させることが知られています。本論文は、メトホルミンによるAMPK経路の活性化は、排卵、着床、流産防止のメリットがあることを示しています。メトホルミンにはこれからも注目していきたいと考えています。