レプチンと着床の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

レプチンについては、これまで多くの論文をご紹介しました。本論文は、レプチンが子宮内膜の受容能に関わっている可能性を示しています。

Fertil Steril 2015; 103: 228(中国)
要約:2008~2013年に人工授精を実施した多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方57名120周期と、男性因子のため人工授精を実施した方245名533周期を対象に、血液と子宮内膜を採取しました。子宮内膜では、上皮ナトリウムチャンネル(ENaC)の遺伝子発現と蛋白発現を検討しました。血中レプチン濃度増加を示したPCOSの方では、分泌期内膜(黄体期)のENaC発現が低下していました。レプチン濃度増加に伴い、子宮内膜細胞株であるIshikawa細胞のENaC発現が低下し、JAr接着(着床モデル)を低下させました。この現象は、レプチン受容体活性化経路であるSTAT3遺伝子をノックダウンすると抑制されました。

解説:太ったPCOSの方では、流産率が高いことが知られています。また、太った方ではレプチン濃度が高いこと、レプチンは着床に関連があるのではないかと考えられていることから、本論文の研究が行われました。また、ENaCは子宮内の水分の排泄に関与しているという報告があり、着床との関連を示唆します(着床時には子宮内の水が少なくなっているべき)。実際に、体外受精不成功の方の子宮内膜ではENaC発現が低下していることを、本論文の著者らは以前に報告しています。

「BMI高値のPCOS→レプチン濃度高値→子宮内膜受容能抑制→ごく初期の流産や化学流産」という図式が想定されます。

レプチンについては、下記の記事を参照してください。
2014.5.22「体外受精の方へ:運動の是非」
2013.8.12「☆レプチンが内膜症に関係」
2013.7.19「思春期前のAMHは増加する」
2013.7.18「☆痩せすぎは内膜症になりやすい?」
2013.6.28「☆太るとAMHが低下する?」
2013.6.7「☆ARTの妊娠率に与える男女のBMIの影響」
2012.12.3「BMI 35以上は異常卵が増加」