☆痩せすぎは内膜症になりやすい? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

世界中にはいろいろな発想、着眼点があるものだと感心します。子宮内膜症の発症に新たな視点を投げかけた論文をご紹介します。本論文は、内膜症はBMIが現在低い方、あるいは過去に低かった方がなりやすいことを示しています。

Hum Reprod 2013; 28: 1783(米国)
要約:1989~2011年「ナース•ヘルス•スタディーII(NHS-II)」に参加した116,430名(25~42歳)のコホート調査が米国で行われています。この調査では、調査に参加した時から2年毎に質問票調査を行っています。今回の研究では18歳の時の身長体重をベースに2年毎の体重、ウエストとヒップのサイズを調査しました。内膜症の有無は腹腔鏡により診断されたものだけをカウントしました。内膜症は、5,504人/1,229,349人年(385人/10万人年)に認められました。18歳の時のBMIおよび現在のBMIともに、内膜症の有無と負の相関を示しました。現在の体重がBMI 18.5~22.4の女性と比べ、BMI 35~39、BMI 40以上の女性はそれぞれ0.45倍、0.38倍の内膜症のリスクを示し、BMI 18.5未満の女性はより高い内膜症の確率を示しました。ウエスト/ヒップ比が0.6未満の方は、0.70~0.79の方と比べ約3倍内膜症の頻度が高くなっていました。

解説:「痩せている女性ほど内膜症になりやすい」という小規模な後方視的疫学調査はこれまでにありましたが、本論文は大規模な前方視的コホート調査です。本論文の事実は、内膜症の発症に脂肪細胞や脂肪細胞関連のホルモン(レプチン、アディポネクチンなど)が関連している可能性を示唆しています。今後の検討が必要ですが、内膜症の研究に一石を投じる結果と考えます。
2013.3.27「子宮内膜症の女性は男性からも女性からも魅力的?」(ダグラス窩の内膜症が多いのは、スタイルがよく、魅力的で、性交経験が早い方)と同じような視点を持った論文ですが、研究の規模が桁違いであり(100人 vs. 11万人)、本論文はかなり信頼度の高い研究といえます。

ナース•ヘルス•スタディーII(NHS-II)は、これからも多くのデータを提供してくれると思いますので、期待しています。