思春期前のAMHは増加する | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2013.6.16「AMHは年齢とともに低下しません⁈」では、24.5歳まではAMHがジグザグに増減し、その後低下することを述べました。正確に言うと、「AMHは現在供給されている卵子の数」を反映しており、「現在残っている卵子の数」を示していません。本論文は、思春期だけにターゲットを絞り、AMHを測定したものです。やはり、思春期前はAMHが増加し、思春期になるとAMHが低下しています。

Fertil Steril 2013; 99: 2071(英国)
要約:思春期前後のAMH、インヒビンB、FSHを検査しました。①横断研究として、8歳の女性381名(思春期前342名、思春期39名)を、②縦断研究として、32名の女性から7, 9, 11歳で採血を行い、経時的検討を行いました。①横断研究では、思春期の方(中央値25 pM)は思春期前の方(中央値33.5 pM)よりAMHが有意に低く、思春期前に限ってみると、AMH値は、インヒビンBと正の相関、FSHと負の相関、BMI•レプチン•脂肪体積と負の相関を示しました。AMHは出生時体重や在胎週数とは関連を認めませんでした。AMHは7~9歳で増加し(中央値27.0→32.0 pM)、9~11歳で減少しました(中央値32.0→26.5 pM)。

解説:本論文の結果は、前回(2013.6.16「AMHは年齢とともに低下しません⁈」)ご紹介したものと変わりませんが、ひとつだけ興味深いことは、BMIとの関連です。2013.6.28「太るとAMHが低下する?」では、大人(24~46歳)の場合に、BMIが高い方は脂肪細胞で作られるレプチンがAMHを低下させることを紹介しました。思春期前後の子供でも同様のことが言えるわけです。

最近、小児科でお子さんのAMHを検査するケースが増えているようです。思春期前後でかなり数値が変わりますので、検査の時にはくれぐれもご注意ください。

また、AMHの測定法により単位が異なりますので、比較する際にご注意下さい(ng/mL = pM÷7.14、試薬によっては5.5で割り算する場合もあります)。