四元数の情緒
〜 水道橋博士と数学と私 〜
1. ビートたけしさんの推薦本
水道橋博士のブログで、
師匠のビートたけしさん(殿)の数学好きのエピソードが紹介されていました。
ビートたけしさんは芸人であり、
映画監督としても評価も高い。
さらに、それだけでなく、
数学がすごく好き、
という一面もお持ちなんです。
では、水道橋博士のブログから、
引用させていただきます。
・ ・ ・ ・
殿の数学好きはいまだに続いており、
27時間テレビでコンビを組んだ、
関ジャニの村上信五くんには、
千ページを超える『虚数の情緒』(吉田武著)という大著を推薦していた。
帯には
「虚数を軸に人類文化の全体的把握を目指した20世紀最後の大著 新世紀の教養はこの本から始まる」
と書かれている。
殿の言うことはなんでも取り入れる素直な村上くんだが、
流石にこれを読んだらと言われたら困っただろうな。
水道橋博士の日記ブログ : 2021年1月6日 北野武 監督術 「オイラの定理」
・ ・ ・ ・
すごい。
分厚い数学の本『虚数の情緒』を、
ビートたけしさんは、
関ジャニの村上信五さんに勧められてたのですね!
数学が専門の私も見習いたい。
2. 虚数って何なの?
それでは、虚数って何なのか?
説明させていただきます。
(ー3)× (ー3)= 9
というように、マイナスの実数は、
2回かけると(2乗すると)
プラスになります。
そこで、実数とは別に、
2乗してマイナスになる数 (または、記号)
を導入します。
2乗すると-1 となる数 i を考えて、
i のことを虚数単位といいます。
すなわち、
i × i = -1
と定めます。
そして、
2+3i のように i を含む数のことを、
虚数といいます。
また、
実数と虚数をまとめて、複素数といいます。
複素数は、
a+bi
という形の数のことです。
3や5のような実数は、
3 は 3+0i
5 は 5+0i
というように解釈できるので、
複素数は、実数を拡張した数だと考えられます。
ただ、、
2乗すると -1 という性質や
虚数というネーミングから想像すると
虚数 (または、複素数) は、
なんだか実体のない数のように思えてきます。
虚、影、幻、 ・ ・ ・
といったイメージがついてしまいがちです。
しかし、、
虚数 (または、複素数) を考えることで、
数学の理論は劇的に進歩しました。
現在、
複素数抜きに、数学の理論を考えることはできません!
数学の学びが深まると、
ある意味、複素数は完全な数のように思えてきます。
3. 四元数の情緒
それでは、
実数から複素数へ数を拡張したことで、
数の物語は終わりなのでしょうか?
843年、ハミルトンが妻とともにロイヤル運河沿いに歩いているとき、
4つの実数をもつ数の考え方が頭の中にひらめきました。
複素数をさらに拡張した、
四元数のアイデアを、ハミルトンはひらめいたのでした。
彼はうれしさのあまり、
渡っていたブルーム橋の石に、
ひらめいた公式を刻みつけました。
ハミルトンが刻んだ文字を、今はもう見ることはできませんが、
ブルーム橋には四元数の発見を記念した盾が建てられています。
<アイルランドのダブリンにある ブルーム橋に建てられた盾>
その盾には、次のように書かれています。
「1943年の10月16日、
ここを通りかかったウィリアム・ローワン・ハミルトンは、
天才のひらめきをもって四元数の乗法の基本公式
i×i = j×j = k×k = i×j×k = -1
を思いつき、この橋の石にそれを刻んだ」
四元数は、2乗すると-1 となる数を3つ考え、
それらを、
i, j, k
とします。
ここで、
たとえば、i と j のかけた値(かけ算)i×j を、
次のように定めます。
i×j = - j×i = -k
最初の2つを見ると、
i×j = - j×i
となっています。
つまり、かけ算の順序を入れ替えると、
結果が異なるのです。
このことを、
交換法則を満たさない、といいます。
同様に、
j×k = - k×j = -i
k×i = - i×k = -j
と定めます。
交換法則を満たさないというのが、
四元数がなかなか広まらないネックになっていると思われます。
ハミルトンは情熱的に、
四元数を広めようと研究を続けました。
しかし、
四元数を使わなくても、
他の数学でも同じようなことはできるということで、
四元数は、だんだん下火になりました。
それでもハミルトンは執念で研究を続けました。
ハミルトンは晩年、、
家族と離れ、1人で部屋にこもり、
ひたすら四元数の研究を続けましま。
何百ぺ-ジもある分厚い四元数の本を出版したいと思い、
原稿を書き上げますが、
極めて難解で、分厚いため、
生前には出版されませんでした。
アルコール中毒に溺れ、
誰にも理解されることのない数学研究に没頭し、
暴飲暴食による痛風に苦しんだ末、
1865年、ハミルトンは60歳で、自宅で息を引き取りました。
彼の死後、
150年以上が経った現在、
四元数はコンピュータグラフィックに使われだして、
ようやく、少しずつですが、
世の中に広まりはじめる、きざしが見えてきました。
四元数がその真価を発揮するのは、
まだずいぶん先になるのかもされません。
〈 ハミルトン 〉
5. 最後に
ここまで書いてきたように、
四元数を発見し、
輝かしい業績をあげ、
一世を風靡した数学者のハミルトンですが、
最後は孤独で、酒びたりで数学をやっていました。
そういえば、
水道橋博士はどうでしょうか。
・ ・ ・ ・
2024年12月29日(日)
5時に目が覚める。
眠れない。
日記を書き直す。
これからのライブの構想、アイデアが、
頭から湧き出て止まらない。
創作中毒症状が出ている。
その前に、
キャスティングを固めなくては。
無理やり朝酒で2度寝に。
(中略)
寝不足なのでバタンキュー。
24時頃。
年末年始、
人が休んでいる時に、
しっかり仕事をするのが芸人だ。
これは殿の教えだ。
夜遅くまで活動されていて、
バイタリティーあふれています。
それに、素晴らしい仲間にめぐまれています。
これからも、
博士がますますご活躍されることを願います。
(投稿 : 2025.7.2)
私の新刊!
水道橋博士から帯の言葉をいただきました。
ありがとうございます。
水道橋博士も仮原稿を熟読してくださり、
帯の言葉をいただきました。
博士のこちらのブログでも
紹介してくださっています。
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■ 執筆者
松岡 学
数学者、博士(学術)
高知工科大学 准教授
大学で研究や教育に携わる傍ら、一般向けの講座を行っている。
アドラー心理学の造詣も深く、数学の教育や一般向け講座に取り入れている。
最近は、スピリチュアルへの関心が高い。
音楽(J-POP)を聴くのが趣味。
ファッションを意識し、自然な生活を心がけている。
出版物:『数の世界』ブルーバックスシリーズ、講談社。
『5歳からはじめるいつのまにか子どもが算数を好きになる本』スタンダーズ社。
『キララな恋愛や結婚生活を送るエッセンス』CLAP。
『アドラー心理学とスピリチュアルの境界で見つける本当の幸せ』ココCLAFT出版。
詳しいプロフィールはこちら
<お問合せ先>
※出版社様からの執筆(出版)の ご依頼は、
こちらから直接ご相談ください。
(商業出版のみ前向きにご検討させていただきます)
※企業様などからのお仕事のご依頼もこちらから。
◆「数」の世界を数学的に探究したい方のための本
数の起源から始まり、、
実数、複素数、四元数、八元数への広がりを探究しています。
それらはそれぞれ、1次元、2次元、4次元、8次元の数とみなすことができます。
(分かりやすく書いていますが、やや専門的な内容です)
(ブルーバックス、講談社)
◆ 子どもの算数力アップを願う、お母さんのための本
子どもの算数力を育てる接し方を、
アドラー心理学にもとづいて書かれています。
実践しやすいように具体的に書かれています。
(スタンダーズ社)
◆「恋愛・結婚生活 × アドラー心理学」の本
大切なパートナーと幸せになれるような、
アドラー心理学のエッセンスが詰め込まれています。
日常生活にアドラー心理学を実践したい方に向けた本となります。
(CLAP)
◆ 現実思考とスピリチュアルの境界領域で幸せを見つけるための本
アドラー心理学とスピリチュアルを実践することで、
幸せになるための本。
数学・物理学の視点についても書いてあります。
(ココCLAFT出版)