【アドラー心理学×裁判】 落語家・快楽亭ブラック師匠の挑戦 ~ 二回目の法廷 ~
落語家・快楽亭ブラック師匠の裁判への挑戦!
今回が2回目の記事となります。
(現在は、被告福田という 芸名なのですが、
ややこしいのでここでは快楽亭ブラック師匠と呼ばせていただきます)
弟子とその彼女から下ネタで訴えられたブラック師匠と榎園映画監督。
争う気持ちを捨て協力的な態度で裁判に臨んでいる、
私はそんな姿にアドラー心理学を感じています。
というわけで、
今回の裁判をアドラー心理学的な視点で
考察するのが本記事の目的です。
1.万全の体制で臨む
元弟子とその彼女から訴えられたブラック師匠と榎園映画監督。
榎園監督は映画 『落語家の業』 の監督の方。
1回目の裁判は12月15日に行われました。
このときは、チンドン屋を引き連れて、
日比谷公園霞門前から東京地方裁判所まで練り歩いたといいます。
裁判とは争いの場、「憎しみ」 や 「恨み」 「憎悪」 の感情に支配されやすい。
それを排除するのは、想像以上に難しいのではないでしょうか。
しかし、ブラック師匠はチンドン練り歩きというアイデアで、
裁判のスタートからうまく 「憎しみ」 が生じないような工夫をしている。
前回、裁判所に到着すると、大勢のマスコミが待ち構えていました!
「わしって、こんなに注目されていたかな?」
と驚いたブラック師匠。
しかし、大勢のマスコミは、
同じ日に裁判のあった大物政治家の取材だったというオチもありました。
とはいえ、ブラック師匠の裁判は
傍聴席が満員で入れない人もでたほどだったそうです。
その大物政治家の裁判の傍聴は
裁判所が抽選券を配布していたそうですが、
ブラック師匠の裁判は先着順でした。
2回目の今回は、
獅子舞を引き連れて 東京地方裁判所に臨みました。
2.獅子舞は中に入れない!
前回、チンドン屋は裁判所に入れたそうですが、
獅子舞は中に入れなかったそうです。
顔を隠していた獅子舞のかぶりものは脱いだそうですが ・ ・ ・
股引きなどの祭りの格好が NG だったそうです。
獅子舞は中に入れませんでしたが、
そんなことにはめげずに裁判に望むブラック師匠と榎園監督。
前回は書類の確認と次回スケジュールの設定のみで、
あっというまに終わった裁判。
2回目の今回はどうでしょうか?
1回目の裁判から2回目の今回まで、
約2か月の期間がありました。
そんな間にも、ブラック師匠は
やるべきことをやっていました。
大みそかに、
「元弟子に訴えられて悲惨じゃ祭」
という名の落語会を昼と夜に2回開催しました。
快楽亭ブラック改め 「被告福田」、大毒演会
師走ネタたっぷり四席 と銘打って、
落語をされたそうです。
普通、大みそかは家でゆっくり過ごしたいもの。
それなのに、自身の裁判をネタにした落語会を企画。
不意打ちのように元弟子に訴えられたブラック師匠。
憎しみや怒りを 「笑い」 に変えてしますのはさすがです。
アドラー心理学では、「感情のコントロール法」 というのがあり、
「怒り」 を抑える方法があります。
しかし、講座やテキストで学んで頭では理解しても、
実践するのはなかなか難しいもの。
だけどブラック師匠は、自然に 「怒り」 を克服している。
「笑い」 を武器にして ・ ・ ・
アドラー心理学でも、このような姿勢は見習うべきではないかと、
私は思う。
長丁場の裁判 ・ ・ ・
しかし、時間を持てあますことなく、
確実に布石を打っていく。
それがブラック流の笑顔になれる裁判。
とてもすごい挑戦だと思う。
3.法廷画家とオリジナルマスクで2回目の裁判に突入
今回の裁判では、
榎園監督は法廷画家に絵を依頼します。
ブラック師匠も
「明日の口頭弁論、榎園監督は法廷画家を雇うんだって、
本作画家ってTV局が雇うものだとばかり思っていた」
と、前日のブログに書きこんでいます。
ブラック師匠自身は普段のカラフルな羽織に加え、
オリジナルマスク。
なんと、「被告福田」 という文字が
大きく入ったマスクをして臨みました!
ブラック師匠と榎園監督は、
派手なパフォーマンスだけではなく、
緻密な努力も積み重ねています。
ブラック師匠の裁判は、人気で満員。
実は、当日の裁判開始2時間前、
榎園監督は法廷画家の席を確保するために、
法廷の前の廊下に並びに行ったといいます。
法廷画家の方が並ぶのではなく、
裁判をする監督自らが廊下で2時間も並んでいたのですね!
目に見えない地道な努力をされていたのです。
しかも、今回2人は弁護士を立ててはいませんが、
相談はしているそうです。
選定に選定を重ねた弁護士に。
弁護士を立てないというのは、
一般的に不利なように思われますが、
今回の場合は、弁護士がいない分、
ブラック師匠の発言が増える
費用が安く抑えられる
しかし、戦術面はきちんと相談をしている。
という、一石二鳥いや三鳥
ともいうべき利点があったのです。
いよいよ裁判のスタート。
不意打ちのように訴えた元弟子とその彼女は姿を見せず、
原告は担当弁護士1人のみ。
一方、被告の方には弁護士はおらず、
ブラック師匠と榎園監督のみ。
そんな構図だった。
ただ ・ ・ ・
今回の裁判も、
書類の確認と次回日程の設定のみ。
5分で終了。
法廷画家の方も、絵を描き始めた途端に終了で、
さぞビックリしたことでしょう。
4.たった5分の裁判で成果はあったのか?
ブラック師匠の裁判を
冷静な視点で見届けて思うのですが、
裁判は2回連続で、
書類の確認と次回日程の設定のみ。
およそ5分程度で終わったといいます。
饒舌なブラック師匠は、
話す機会がほとんどなく、
「裁判って書類のやりとりだけなんだな」
という感想を持ったといいます。
書類とスケジュール確認だけの
5分の裁判が2回行われただけ。
では、成果はなかったのか?
カラフルな羽織と 「被告福田マスク」 をして
法廷に臨んだブラック師匠。
特に、「被告福田マスク」 では、
裁判官の微笑を誘った。
さすがブラック師匠。
裁判でも達観しているというか、
視点が違いますね!
勝った負けたの 「争い」 という視点ではなく、
「協力的な」 視点で考えてみると、
着実に成果が見えてくる。
別にブラック師匠はアドラー心理学を
意識しているわけではないが、
その協力的な姿勢からは
アドラー心理学の精神を感じる。
アドラー心理学を日本に導入した野田俊作氏は、
「協力的」
「競合的」
の2つを対比させて、
カウンセリングの技法 「エピソード分析」 を考案しました。
協力的な姿勢 というのは、
アドラー心理学ではそれほど重要な姿勢なのです。
しかも誰もが競合的な態度におちいる裁判という場で、
ブラック師匠は協力的な姿勢を崩さない。
アドラー心理学的なお手本のような存在である。
2回目の裁判を終えて、
私は改めて、そのように感じた。
■ 執筆者
松岡 学
数学者、数学教育学者
高知工科大学 准教授、博士 (学術)
大学で研究や教育に携わる傍ら、
一般向けの講座を行っている。
アドラー心理学の造詣も深く、
数学の教育や一般向け講座に取り入れている。
音楽 (J-POP) を聴くのが趣味。
ファッションを意識し、自然な生活を心がけている。
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