梅田ではじめたギャラリーカフェ まそほのつぶやき -11ページ目

まそほ繁盛記

「なあなあ、お昼ご飯、何食べます?」
女将達は、ダリ展を鑑賞する為に、港区まで来ていた。
「あっ、ここ…ここでええなやいですか。オムライス専門店みたいやし。」
「うち、オムライス食べんの久しぶりですわ!…入りまひょ…なんや、えらい混んでますなあ。」
「あそこ、あきましたでっ。みんな、オムライス、美味しそうに食べてはりますな。こら、楽しみや。」
僅か20分後、二人はぶつくさ文句を言いながら歩いていた。
「うちには、なんであないに混んでんのか、さっぱりわかりまへんわ!」
「中のご飯、チキンやなかったし…がっかり味でしたわ。食べ物に裏切られたら精神的に痛手が大きいですなあ…」
「ダリを見て、元気を取り戻しまひょ。」
「そうですな!ダリは裏切りまへんな!」
平日という事もあって、ダリ展は、比較的すいていた。
「うちは、この音声ガイドを借りますわ。」
「いくらでっか?」
「一台500円で、二人でつこたら800円らしいでっせ。その替わり、離れて鑑賞はできまへんで。」
「かましまへん、うちも仲間に…」
「わかりました。ほな…お姉さん…借りますわ。機械?ああ、うちが持ちますわ。…Bはんっ!行きまっせ!はよ、ついてきなはれ!」
「わんわん」
二人共、オムライスの事など、もう忘れていた。
わんわ

まそほ繁盛記

「今日は、寒いですなあ…外も内も。」
「Gはん、髪の毛、切りに行きはったらええんと違いますか。」
「そうさしてもらいますわ。」
一年程前に、店の近くに美容院が出来たのだが、カットが上手いので、二人のお気に入りだった。
「さっぱりしてきなはれ!そういえば、お隣りさんはこないだ綺麗なべべ着て、可愛いかったですなあ!」「着付けと頭、美容院でしてもろたて言うてはりましたなあ!よう似合うてはりましたわ。」
「一日イベントで、店をラウンジにしたらしいでっせ!ええなあ…着物…うちらも着たいなあ…」
「やめときなはれ、場末感が漂いますがな。」
「振袖やったら?」
「どつき漫才の人みたいやがな。」
「所詮、うちらに似合うのは仮装の衣装しかおまへんのやろか…あっ…作務衣やったら似合うんと違いますか?」
「それで、頭に手ぬぐいでも巻いたら、間違いなく大将て言われますわ。」
「こだわりの居酒屋ですなっ!きっと、焼鳥に醤油かけたら怒られますのやで。『お客さん!それは、まず塩で食べてみて下さい!それでも醤油かける、言いはるんやったらお代はいりまへんわ』なんて事を言いますのやっ!ああ、もうっ、いっそのこと、着流しで、頭は大銀杏で、どすこい、で、どないだす?」
「何がしたいんでっか?」つつくよ

まそほ繁盛記

ドアを開けたGの目に、情けない顔で座っているBの姿がうつった。
「おはようさん。どないしはりました?」
「痛いんですわ。膝が…。」
「なんででっか?どぶにでもはまったとか…」
「あ、惜しい!…言うてる場合やおまへんわっ!昨日帰りしなに、横断歩道を走って渡ったら、目眩がしましたんや。それで、派手にこけてしもたんですわ。」「酔っ払いみたいですなあ。膝、うちましたんか?」「ほれ、見とくれやす。」Bは、膝を見せた。
「うわ、ぶちになってますがな!腐りかけの桃みたいですなあ。右膝の方は、えらい擦りむけてますし…。」
「けど、うち、素早く立ち上がりましたんやで!」
「想像つきますけどな、大人になってから道で転ぶ人は、そうそうおりまへんで。あんさん、結構、転びはりますなあ。」
「そんな事おまへんで。記憶に新しいだけでも、5回程ですわ。うち三回は、雪の日でしたわ!おんなじスカート穿いてる時に、転びますのや。不思議ですやろ?スカートひるがえして転んだから、まる見えですわ。」
「ええー?雪の日にスカート穿きなはんな!」
「大丈夫ですわ!黒いタイツやから、何が何か解りまへんて!それより、毎回、横断歩道やったり、駐車場やったりしますのや!そのたんびに、ほふく前進で歩道まで、這うていったり、素早く跳び起きたりしましたんや!」
「轢かれるからでっか?
いつもながら、危険回避能力は、素晴らしいもんがありますなあ。」
えへん

まそほ繁盛記

「すんまへん、すんまへん。遅うなりまして。忘れ物しましてな、取りに帰ってましたんや。」
Gが、息をはずませてやってきた。
「あんさん、ほんの10メートル手前から走ってきましたやろ?」
「何言うてますのや!気持ちは、千里を駆ける程でしたんやっ!それより、昨日はどないでした?一人ぼっちで寂しおましたやろ?」「昨日、結構忙しかったんですわ!ほんまに、ひとりの時に限って…」
「そしたら、今日は絶対暇ですな!」
「多分…そやから、長テーブルの足の、丸太なあ…」「ああ、乾燥して割れてきましたさかい、コーキングうちまひょか。」
二人は、買って置いたコーキング剤を専用のガンにセットした。
「あらためて見たら、えらいこと深く裂けてますなあ…なるべく、たいらに…よっ…と…さあ、できました。足、ひっつけんようにしなはれや。」
「わかってますがな!あのな、うち、昨日な…あーっ!」
Bは慌てて、厨房へ入った。
「とれまへん…うちときたら…ほんまに…」
「早速、ひっつけたんでっか?言うてたとこやのに。」
「離れたとこ座りますわ。」
それから1時間ほどの間にBは4回大声をあげた。
「あんさん…アシカでも、もう少し学習能力ありまっせ。何回も何回も、あーっ、て。」
「ほっといておくれやす!うちは、わざと、足にコーキング付けてますのやっ!ひび割れ防止ですわっ!」「そうでしたか。そら失礼しましたなあ。首やら耳はええんですか?」
「耳なんか、ひび割れしまへんっ!とれまへんし。首も水漏れしまへんわっ!」「くくっ!水道管人間みたいや。握手しとくなはれ!」
づづぐ

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「今日は、Gはんが休みですのや。
そやから、うちの独り言でも聞いとくなはれ。
うちが産まれたんは、砂漠のはずれにある小さな村でした。
年がら年中、砂嵐が吹き付けてましてなあ、頭からすっぽり頭巾を被らんと、すぐに、ジャリジャリになりますのや。
あの村では、男も女も頭巾をつけてましたわ。
ただ、年に一度の『ザリジョリ祭』の日だけは、頭巾をぬぐ事が出来ますのや。砂月の始めの一週間だけは、不思議な事に砂嵐がぴたりとおさまりますのやで。なんでも、ピニターロ現象言うそうですわ。
うちらの村では、『がえ』て、言うてましたけどな。『ザリジョリ祭』の一週間は、そらもうご馳走ですわ。
のの芋魚、知ってはりますか?
砂の中に棲息する魚ですわ。
めったに捕れまへんのやけど、これが又美味しいんですわ。
ここだけの話、幻覚もみえますのやで。
それで、…あっ、お客はんやっ…
この続きは、おりをみて…又…
ううそ

まそほ繁盛記

「先週の反動で暇ですなあ~」
「まったくもって…あかん、うち眠い!背中ゾクゾクしますし!」
「店ん中で遭難しなはんなっ!」
「なんや、暇やと、うちら迷子になった気がしますなあ…」
「ああ…鹿に煎餅でもやりたい気分ですわ。」
「うちは、フカフカした毛足のもんに包まれたいですわあ。獣臭をかぎながら、眠りにつきますのや。」
「そして、Bは、二度と朝の光を浴びる事は無かった。あたりには、Bが確かに存在していた証として、わずかな髪の毛が残っているのみだった。」
「えっ?ええー?うち、喰われますのか?フカフカの毛を持った大型肉食獣に、喰われますのか?バリバリとかみ砕かれますのやなっ?それとも丸呑みに…」
「ピノッキオですなあ。」女将達は、ココアでも飲もうと、立ち上がった。
「ココア飲んだら、次の作品、つくりまひょか!」
「今回も、面白いのができそうですな!なんせ、テーマが妄想やからなあ。」
「もう、毎日が妄想!」
「愛と妄想の日々!」
「妄想エクスプレス…私を深く沈めて!」
いいい

まそほ繁盛記

「Gはん、風邪はどないですか?」
「へえ…鼻詰まりはましですけど、お腹の調子がいまいちですわ。なんか、消化にええもん食べんと…」
「うち、ホタテ買うてきましたでっ!トビウオも。刺身で食べられるて、言うてましたわ。」
「それの、どこが消化にええんやっ!貝に生ものて…弱ってる時にあたりそうなもんばっかりやおまへんか!」
「朝掘タケノコもおまっせ!ほたるいかもっ!」
Bは、うきうきと食材を並べた。
「あんさんの、旬の食材に対する思い入れは、ようわかりました!春やし、どれも美味しそうやけどな。
何も、そないにいっぺんに食べんでもええやないですか。」
「そうでっかあ~。ほな、ホタテ食べまへんかあ?」「食べますがな。うちかて貝は大好きやからな…。」二人は、ホタテの調理にかかりはじめた。
「Bはん、見てみなはれっ!ホタテの殻に、なんかついてまっせ!動いてますわ。なんやろ、これ。」
「ゴカイやイソメの仲間みたいですなあ。」
「仰山、おりまっせ!そやっ!顕微鏡で、覗いてみまひょか。その水ごと覗いたら、きっといろんな生物がおりまっせ!」
二人は、ワクワクしながら顕微鏡を覗いたが、たいした物はいなかった。
「つまらんですなあ…」
「ほんまに……あっ!Gはんっ、殻にイソギンチャクついてまっせ!どないしまひょ。」
「めんどくさいから、そのまま酒蒸しにしまひょ!」「消化に悪いでっせ。」
くくっ

まそほ繁盛記

「はああ~グスッ…グスッ…」
扉が開いて、幽霊のようなGがやってきた。
「どないしはりました?花粉症ですか?」
「花粉症と風邪のダブルですわ。グスッ…鼻詰まって昨日、寝られまへんでしたわ。」
「えらい、しんどそうですなあ。薬、飲んどきなはれや。」
Gは、バッグをガサゴソと探った。
「あ、ユンケル買うてきましたさかい、あんさんも飲んどいたらよろしわ。」
「おおきに。さっそく…ユンケルて、ほんの少ししか入ってまへんのやな!有り難みがましますなあ。」
「そらそうですやろ。デカビタCぐらいやったら、ききそうな感じしまへんがな。うちは、とにかく…今日は、シャッターガラガラ閉店ですわ。」
「少し寝たらどないです?うちの、愛用の椅子ベッド作ったげますわ!」
「へえ、そないさしてもらいますわ。」
「ほんでな、起きたら生姜湯作ったげますわ!蜂蜜入りの!」
「おおきに…うちに、もしもの事があったらハワイの別荘は、あんさんにあげますわ。」
「うちも…なんかあったらドバイの油田は、あんさんに…」
「うちらの友情は…」
「永遠に…」
「不滅ですなっ!」
「ふぇっふぇっふぇっ」
二人共、かなり疲れてはいたが、まだまだくたばりそうになかった。
つづけ

まそほ繁盛記

作品展も終わり、女将達はほうけていた。
「Bはん!うすぼんやりした顔しなはんな!」
「Gはんこそ!そないに、口あけとったら虫入りまっせ!」
「ほっといておくれやす、うちは、こうやって餌が口の中に飛び込んで来るのを待ってますのや。参りましたか?」
「参りまへんわ!あんさんは、ウツボカズラでっか?」
「シュウーッ!ペッ!」
「毒液、飛ばしなはんな!床、溶けるやおまへんかっ!…それはそうと、山翁はとうとう作品展、きまへんでしたな!」
「あれほど、何回も行く言うてましたのになっ!」
「あのじいさんは、頭サクサクで忘れてましたんやろ。ま、ええやないですか。それより、うちはな、今朝のゴミが…」
「どないしましたんや?」「うちの町では、指定ゴミ袋ですのや。年一回、配られますのやけど、足らんかったら買わんとあきまへんのですわ。」
「そんなとこ多いでっせ。」
「それで、なるべくミチミチに詰めよと思いますがな、普通。」
「勿体ないですもんなあ。袋。」
「椎茸、袋いっぱいに詰めて200円、とか、ようありますやろ?あんな感じですわ!詰めに詰めたろ、思いまして、ギュウーと押しこんだら、袋が裂けましたんやっ!腹立つ!あんなペラペラの袋、すぐに裂けるにきまってますがなっ!まるで、金魚すくいの網ですわ!さては、わざとやなっ!袋で儲けよとしてますなっ!なんとあこぎなまねを…こうなったら、戦いますわ!あの袋にどれだけ入るか、みときなはれや!」
「普通に、分けて出しなはれ、あんさん、漏電してる感じでっせ。」
ぐるる

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女将達の作品展も、最終日を迎えた。
「面白かったですなあ。」Bが、肉まんを頬ばりながら言った。
「あんさん、飲み込んでから喋りなはれっ!気管に入りまっせ。けど、ほんまに面白かったですなあ。何回やってもええですわ。なっ、あの感じ…。」
「やみつきになりますもんなあ。みんな、店にも顔出してくれて嬉しおましたわ。」
「今日は、雛祭ですがな!なんか、ええやないですか!」
「女祭!ですなっ!」
「風情のない言い方しなはんな。なんや、女祭て。
プライド男祭みたいやないですか。」
「雛祭…言うたら、思い出しますわ。」
「また、あんさんのお母はんネタでっか?昨日、来てくれはりましたなあ、うち笑いそうになりましたけど。ごうこはん、すぐわかったみたいでっせ。」
「そうですやろ!うち、お雛さん、持ってなかったんですわ…」
「貧乏やからですか?」
「そう、赤貧…ほっときなはれっ!いや、それでな、母親に、お雛さん欲しいて言うたんですわ。」
「こうてくれたんでっか?」
「『そないに欲しいんやったら、今日、用意しといてあげる』て、言いましたんや!」
「よかったですなあ。」
「うち、楽しみでなあ、走って学校から帰りましたんやで。」
「ありましたんか?」
「飾られてましたわ、二組も!」
「ええっ?二組もでっか?」
「へえ、一組は、卵の殻でもう一組は、布きれで作ってありましたわ!恐ろしく完成度が低い二組の雛人形が、鎮座ましまし…」
「面白いけど、子供の気持ちとしてはなあ…なんとも」
「ですやろ?あ~か~り~を~つ~け~ま~しょ~…はああ」
つづけむ