まそほ繁盛記
「うららかですなあ。」
「ほんまに。」
女将達は、食材を買いに中華マーケットに来ていた。ここでしか、買えない物があるのだ。
「金針菜買いましたか?」「へえ、あとは…ジャスミン茶は、まだおますし…そや、干し貝柱やっ!」
「Bはん、見てみなはれ、歯が溶けそうな程、甘そうな菓子がおまっせ!うち、買おかいな。」
「好きにしはったらよろしわ。それより、あそこに、ニワトリの足ばっかり入りの袋がおまっせ!」
「買うたらどないでっか!コラーゲンたっぷりでっせ!膝痛いのん、治るかわかりまへんで。呪いの材料にもなりそうやけど。」
「呪いの材料やったら、ほれっ、あそこに頭ばっかり入りが…」
「うひゃあ!…って、驚くわけおまへんやろ!このうちが!さあ、買い物すんだら帰りまっせ!」
「そうですな。うち、喉かわいたさかい、どこぞでお茶でもしまへんか?」
「そうですなあ。」
二人は、駅に向かって歩きはじめた。
「ないですなあ…あれは?魔法のランプて…」
「どうみても喫茶店やおまへんがな。ピチピチレディてかいてまっせ。…あっ、あそこにしまひょ。」
二人は、ようやく、喫茶店にたどり着いた。
「ああ、喉かわきました。……Gはん、これ、うちのアイスミルクティー…飲んでみなはれ。」
「うちの、アイスカフェオレも…」
「…」「…」
「午後の紅茶のほうが、数倍美味しいですわ。」
「瓶入りコーヒー牛乳のほうがずっと…」
「あるじを出せい!て言いたなりますな!」
まずず
「ほんまに。」
女将達は、食材を買いに中華マーケットに来ていた。ここでしか、買えない物があるのだ。
「金針菜買いましたか?」「へえ、あとは…ジャスミン茶は、まだおますし…そや、干し貝柱やっ!」
「Bはん、見てみなはれ、歯が溶けそうな程、甘そうな菓子がおまっせ!うち、買おかいな。」
「好きにしはったらよろしわ。それより、あそこに、ニワトリの足ばっかり入りの袋がおまっせ!」
「買うたらどないでっか!コラーゲンたっぷりでっせ!膝痛いのん、治るかわかりまへんで。呪いの材料にもなりそうやけど。」
「呪いの材料やったら、ほれっ、あそこに頭ばっかり入りが…」
「うひゃあ!…って、驚くわけおまへんやろ!このうちが!さあ、買い物すんだら帰りまっせ!」
「そうですな。うち、喉かわいたさかい、どこぞでお茶でもしまへんか?」
「そうですなあ。」
二人は、駅に向かって歩きはじめた。
「ないですなあ…あれは?魔法のランプて…」
「どうみても喫茶店やおまへんがな。ピチピチレディてかいてまっせ。…あっ、あそこにしまひょ。」
二人は、ようやく、喫茶店にたどり着いた。
「ああ、喉かわきました。……Gはん、これ、うちのアイスミルクティー…飲んでみなはれ。」
「うちの、アイスカフェオレも…」
「…」「…」
「午後の紅茶のほうが、数倍美味しいですわ。」
「瓶入りコーヒー牛乳のほうがずっと…」
「あるじを出せい!て言いたなりますな!」
まずず
まそほ繁盛記
曇天の空には、太陽が見当たらず、風は四月にしては冷たかった。
「あ~、今日はあきまへん!気圧が低いせいか、うちものすご、眠たいですわ。」
Bは、大欠伸をした。
「あんさんもでっか?うちも、さいぜんから眠うて…気絶しそうですわ。」
「うち、画材屋さんに行ってきますわ。ついでに、チーズも買うてきまひょか?薬局にも寄って、洗濯糊、買うてきたげますわ。」
「へえ、たのんます。酒屋が来ますのやろ?」
「ビール、頼みましたさかいな。ほな、行ってきまっせ。」
一時間ほどで、Bが帰ってきた。
「探してるもん、おまへんでしたわ。使えん画材屋ですわ、まったく。あ…けどデパートでな、骨つきの…」
「ハムですか?あの、美味しい…」
「ハムの…骨を買うてきましたで。」
「骨…だけでっかあ?」
「スープにしまひょ!」
「他に何も出来まへんがな!犬にみせびらかして、楽しむぐらいですわ。
「薬局でな、前から気になってましてんけど、レジの横に、オットピン、ちゅう薬が置いてありますのや。まじまじと見たいんやけど、それもできず…何の薬やと思います?」
「オットピンのオットは、オットセイのオットですやろ。」
「ほな、ピンは?」
「元気になりまっせ!のピンに決まってますがな。薬のネーミングなんて安易なもんですわ。ああ…やっぱり眠たい…」
「買うてきまひょか?オットピン。あっ!ひょっとしてオットセイと夫をかけて……無視しなはんなあっ!」
おとて
「あ~、今日はあきまへん!気圧が低いせいか、うちものすご、眠たいですわ。」
Bは、大欠伸をした。
「あんさんもでっか?うちも、さいぜんから眠うて…気絶しそうですわ。」
「うち、画材屋さんに行ってきますわ。ついでに、チーズも買うてきまひょか?薬局にも寄って、洗濯糊、買うてきたげますわ。」
「へえ、たのんます。酒屋が来ますのやろ?」
「ビール、頼みましたさかいな。ほな、行ってきまっせ。」
一時間ほどで、Bが帰ってきた。
「探してるもん、おまへんでしたわ。使えん画材屋ですわ、まったく。あ…けどデパートでな、骨つきの…」
「ハムですか?あの、美味しい…」
「ハムの…骨を買うてきましたで。」
「骨…だけでっかあ?」
「スープにしまひょ!」
「他に何も出来まへんがな!犬にみせびらかして、楽しむぐらいですわ。
「薬局でな、前から気になってましてんけど、レジの横に、オットピン、ちゅう薬が置いてありますのや。まじまじと見たいんやけど、それもできず…何の薬やと思います?」
「オットピンのオットは、オットセイのオットですやろ。」
「ほな、ピンは?」
「元気になりまっせ!のピンに決まってますがな。薬のネーミングなんて安易なもんですわ。ああ…やっぱり眠たい…」
「買うてきまひょか?オットピン。あっ!ひょっとしてオットセイと夫をかけて……無視しなはんなあっ!」
おとて
まそほ繁盛記
「桜が、はらはらと…散りにけり…」
「なんだす?Bはん。辞世の句でも考えてますのか?そんなん、今考えても無駄でっせ。どうせ、この世から辞する時なんか、くちゃくちゃで、わけわからんようになってますのや。」
「風情のない事、いいなはんな!うちは、この満開の桜を前にして、センチメンタル及びノスタルジックあるいはロマンチックな気分になってますのやっ!」
「…にしては、その、右手に握りしめた缶ビール…
片時も離しまへんなあ。」「桜に酒はつきもんでっせ!見よ!花びらが盃に浮かんで我らの前途を祝うてくれておるわ!うわっはっはっは…今宵は、ゆるりと酒など酌み交わそうではないか!のう、彦一郎!」
「戦国武将でも、憑衣したんでっか?だれです?彦一郎て。」
「春田彦一郎信恒ですわ。安土桃山時代の武将で、元々は渡来人やったらしいんですけど、資質 を見込まれて…豪胆にして緻密な戦略で他の追随を許さず…」
「へええ…うち、しりまへんでしたわ。あんさん、詳しいですなあ。」
「それもそのはず、この人物は、たった今、うちが作りあげた架空の…」
「ええいっ!あっちへ行きなはれっ!この、頭満開野郎!」
ぐびび
「なんだす?Bはん。辞世の句でも考えてますのか?そんなん、今考えても無駄でっせ。どうせ、この世から辞する時なんか、くちゃくちゃで、わけわからんようになってますのや。」
「風情のない事、いいなはんな!うちは、この満開の桜を前にして、センチメンタル及びノスタルジックあるいはロマンチックな気分になってますのやっ!」
「…にしては、その、右手に握りしめた缶ビール…
片時も離しまへんなあ。」「桜に酒はつきもんでっせ!見よ!花びらが盃に浮かんで我らの前途を祝うてくれておるわ!うわっはっはっは…今宵は、ゆるりと酒など酌み交わそうではないか!のう、彦一郎!」
「戦国武将でも、憑衣したんでっか?だれです?彦一郎て。」
「春田彦一郎信恒ですわ。安土桃山時代の武将で、元々は渡来人やったらしいんですけど、資質 を見込まれて…豪胆にして緻密な戦略で他の追随を許さず…」
「へええ…うち、しりまへんでしたわ。あんさん、詳しいですなあ。」
「それもそのはず、この人物は、たった今、うちが作りあげた架空の…」
「ええいっ!あっちへ行きなはれっ!この、頭満開野郎!」
ぐびび
まそほ繁盛記
女将達はうきうきしていた。
今日は一日、でかけるのだ。
「GはんGはん!久しぶりですなっ!お昼のおでかけ!ええと…まず、シュン君の作品展見に行きますやろ!そして、アキムさんの作品展に行きますやろ!そうなると…お昼は、いつどこで何を食べます?」
「ええい!うかれなはんなっ!お昼は、お寿司にしまひょて言うてましたがな!」
「そうでした、そうでした!うち…何食べよかな!」「歯ぁ、悪いんやから、やらかいもんにしときなはれや!」
「そんなん、平気ですわっ!丸呑みにして、あとで骨だけ、ペッと…」
「あんさんは、アナコンダでっか?」
「アナコンダて、あごはずして呑むんでっせ!うちもそないなことができたら、洋服ダンスでも、冷蔵庫でも呑みますのになあ。」
「何のために?あほな事いうてんと、でかけまっせ。あっ、そや!シュン君の作品展行ったら、おやじには会わんようにせんと!」
「そうですな!Tシャツやら、グッズをたんまり買わせよとしますさかいな。」「買うのはええけど、無理矢理かわされんのは、腹立ちますからな!」
「ほな、コソコソっと行きまひょ!」
つづか
今日は一日、でかけるのだ。
「GはんGはん!久しぶりですなっ!お昼のおでかけ!ええと…まず、シュン君の作品展見に行きますやろ!そして、アキムさんの作品展に行きますやろ!そうなると…お昼は、いつどこで何を食べます?」
「ええい!うかれなはんなっ!お昼は、お寿司にしまひょて言うてましたがな!」
「そうでした、そうでした!うち…何食べよかな!」「歯ぁ、悪いんやから、やらかいもんにしときなはれや!」
「そんなん、平気ですわっ!丸呑みにして、あとで骨だけ、ペッと…」
「あんさんは、アナコンダでっか?」
「アナコンダて、あごはずして呑むんでっせ!うちもそないなことができたら、洋服ダンスでも、冷蔵庫でも呑みますのになあ。」
「何のために?あほな事いうてんと、でかけまっせ。あっ、そや!シュン君の作品展行ったら、おやじには会わんようにせんと!」
「そうですな!Tシャツやら、グッズをたんまり買わせよとしますさかいな。」「買うのはええけど、無理矢理かわされんのは、腹立ちますからな!」
「ほな、コソコソっと行きまひょ!」
つづか
まそほ繁盛記
春爛漫。
桜は、今を盛と咲き誇っていた。
「春の新メニュー、考えんとあきまへんなあ。…Bはん、Bはんて!聞いてますのかっ!」
「聞いてまっせ!わるの新芽にゅー…て、なんでっか?」
「あーあ…春、の、新、メニュー、だす!」
「そ、そうですなあ!なんか美味しいもの考えまひょ!それと、又イベントも考えんと…いっぺん、朝までやんのも面白いかも!」
「それは、一考の価値ありですな!ただ…うちらの体力がもちますやろか?」
「きっと、明け方にはぐずぐずですわ!メイクとれまくりで、朝日をあびたらあかん妖怪みたいになってますのや!」
「悲しい話ですわ!完璧にチューンナップして臨みまへんと!」
「改造車ですな!毎年車検せんとあきまへんわ!なんせ年式が古いさかい。」
「あんさんは、足回りを、いじってもらいなはれ!
ぎゃははは!」
「あんさんこそっ!ヘッドライト改良しなはれ!夜、見えにくいんやから。」
「何を失礼な!あんさん、ブレーキとシャフトと…」何をどう改造しても、下取り査定価格はゼロだった。つくく
桜は、今を盛と咲き誇っていた。
「春の新メニュー、考えんとあきまへんなあ。…Bはん、Bはんて!聞いてますのかっ!」
「聞いてまっせ!わるの新芽にゅー…て、なんでっか?」
「あーあ…春、の、新、メニュー、だす!」
「そ、そうですなあ!なんか美味しいもの考えまひょ!それと、又イベントも考えんと…いっぺん、朝までやんのも面白いかも!」
「それは、一考の価値ありですな!ただ…うちらの体力がもちますやろか?」
「きっと、明け方にはぐずぐずですわ!メイクとれまくりで、朝日をあびたらあかん妖怪みたいになってますのや!」
「悲しい話ですわ!完璧にチューンナップして臨みまへんと!」
「改造車ですな!毎年車検せんとあきまへんわ!なんせ年式が古いさかい。」
「あんさんは、足回りを、いじってもらいなはれ!
ぎゃははは!」
「あんさんこそっ!ヘッドライト改良しなはれ!夜、見えにくいんやから。」
「何を失礼な!あんさん、ブレーキとシャフトと…」何をどう改造しても、下取り査定価格はゼロだった。つくく
まそほ繁盛記
「おはようさんだす。」
Bが、足を引きずりながら入ってきた。
「どないでした?足。」
「レントゲンとりましてな、水抜きましたんや。仰山たまってましたわ!お医者さんが『こんなに、たまってんの久しぶりにみたわ』て、言うてはりましたで。」
「そやから、早目に行ったらよかったのに。たまってたんは酒と違いましたんか?足から酒…」
「水、いうても、無色透明やおまへんで。そやなあ…ちょうど麦焼酎みたいな色でしたわ。医者が『水、ぬくとこ見ときますか?』いうたから『へえ』て、じいっと見てましたんや。馬の注射器みたいなんで、ズブッと…」
「保険証、無くしたて言うてはりましたけど、見つかったんでっか?」
「見つかりまへんから、市役所行って再交付してもらいましたんや!フットワーク軽いですやろ?うち!」「足、痛いくせに、余計な動きをしたんですな。無くしなはんな!もっとよく探しなはれ!」
「探して、見つかる確率は半分ですがな!それより、再交付してもろ た方が早いですやろ?それよりも、うちは思いましたわ!」
「何を?」
「これが話に聞く『膝に水がたまる』っちゅうやつかと…」
「お金ためなはれ!」
「へえ…あっ、市役所に行ったら、以前の未払いの健康保険料、はよ払えて言われましたわ!」
「医者にかかってるくせに、とっとと払いなはれっ!」
「だいたいはろてまっせ!ただ忘れてましたんや!」「うち、あんさんの痛いほうの膝、思いきり、つねりたなりましたわ。」
ちちく
Bが、足を引きずりながら入ってきた。
「どないでした?足。」
「レントゲンとりましてな、水抜きましたんや。仰山たまってましたわ!お医者さんが『こんなに、たまってんの久しぶりにみたわ』て、言うてはりましたで。」
「そやから、早目に行ったらよかったのに。たまってたんは酒と違いましたんか?足から酒…」
「水、いうても、無色透明やおまへんで。そやなあ…ちょうど麦焼酎みたいな色でしたわ。医者が『水、ぬくとこ見ときますか?』いうたから『へえ』て、じいっと見てましたんや。馬の注射器みたいなんで、ズブッと…」
「保険証、無くしたて言うてはりましたけど、見つかったんでっか?」
「見つかりまへんから、市役所行って再交付してもらいましたんや!フットワーク軽いですやろ?うち!」「足、痛いくせに、余計な動きをしたんですな。無くしなはんな!もっとよく探しなはれ!」
「探して、見つかる確率は半分ですがな!それより、再交付してもろ た方が早いですやろ?それよりも、うちは思いましたわ!」
「何を?」
「これが話に聞く『膝に水がたまる』っちゅうやつかと…」
「お金ためなはれ!」
「へえ…あっ、市役所に行ったら、以前の未払いの健康保険料、はよ払えて言われましたわ!」
「医者にかかってるくせに、とっとと払いなはれっ!」
「だいたいはろてまっせ!ただ忘れてましたんや!」「うち、あんさんの痛いほうの膝、思いきり、つねりたなりましたわ。」
ちちく
まそほ繁盛記
「おはようさんだす…」
Bの声は、こころなしか
力がなかった。
「あ、どうでした?お医者さん。びっくりしましたがな、調子悪い、言いはるから…で?今度は、どこぞにいぼでもできたんでっか?」
「へえ…お腹に…」
「えええっ!ポリープでっか?」
「違いますのや…。うち…赤ちゃん出来たみたいですのや!」
「え?え?赤ちゃんて…ほんまですか?……」
「今日、お医者さんで、調べてもろたら、7週目やて…どないしたらええのやろ、うち。」
「こんなん聞くの、あれですけど…相手は、あの人でっか?二月からきてはりまへんけど!」
「へえ。シンガポール行ってはりまして、連絡とれまへんのや。考えとうないけど、別れる予感してましたんや。その矢先…」
「まあ、落ち着いて考えまひょ!そやっ、お茶のみまひょ。」
Gが湯呑みにそそいだのは醤油だった。
「あああ、Gはん、落ち着きなはれ!」
「と、とにかく、あんさんは、どないするつもりですのや?」
「うち、産もかと思てます。最後のチャンスやろし…ジャガー横田かて、うみはったし…」
「ジャガーは、プロレスラーやし、医者の旦那がおりますやないですか!……あんさんは…」
Gは、暫く考えこんでいた。
「解りました!うみなはれ!それも人生ですわ!あんさんらしいですわ!うちがなんの役にたつかわかりまへんけどな、協力しますわ。二人で腹くくって、育てまひょ!」
「おおきに、うち、泣けてきますわ。」
「…」「…」
「てなことをブログに書いたら、驚きますやろか?」「エイプリルフールやと思いますやろ!」
「エイプリルフールでっせ、ほんまに!」
けけけ
Bの声は、こころなしか
力がなかった。
「あ、どうでした?お医者さん。びっくりしましたがな、調子悪い、言いはるから…で?今度は、どこぞにいぼでもできたんでっか?」
「へえ…お腹に…」
「えええっ!ポリープでっか?」
「違いますのや…。うち…赤ちゃん出来たみたいですのや!」
「え?え?赤ちゃんて…ほんまですか?……」
「今日、お医者さんで、調べてもろたら、7週目やて…どないしたらええのやろ、うち。」
「こんなん聞くの、あれですけど…相手は、あの人でっか?二月からきてはりまへんけど!」
「へえ。シンガポール行ってはりまして、連絡とれまへんのや。考えとうないけど、別れる予感してましたんや。その矢先…」
「まあ、落ち着いて考えまひょ!そやっ、お茶のみまひょ。」
Gが湯呑みにそそいだのは醤油だった。
「あああ、Gはん、落ち着きなはれ!」
「と、とにかく、あんさんは、どないするつもりですのや?」
「うち、産もかと思てます。最後のチャンスやろし…ジャガー横田かて、うみはったし…」
「ジャガーは、プロレスラーやし、医者の旦那がおりますやないですか!……あんさんは…」
Gは、暫く考えこんでいた。
「解りました!うみなはれ!それも人生ですわ!あんさんらしいですわ!うちがなんの役にたつかわかりまへんけどな、協力しますわ。二人で腹くくって、育てまひょ!」
「おおきに、うち、泣けてきますわ。」
「…」「…」
「てなことをブログに書いたら、驚きますやろか?」「エイプリルフールやと思いますやろ!」
「エイプリルフールでっせ、ほんまに!」
けけけ
まそほ繁盛記
「ああ~、うち眠たい!」「うちもだす!」
女将達は、非常に疲れていた。
前日に、予約客が20名近く来店して、おお忙しだったのだ。
「けど、ありがたい話ですわ。ああして、なんべんも利用してくれはって…。」「ほんまですなあ、張り切って、美味しいもんつくろと思いますもんなあ。」
がたがた…
Bが椅子を動かし始めた。「あんさんのベッド、作ってはるんでっか?うちは、本読んでますさかいに、寝なはれ。」
「少ししたら、起こしておくれやす。」
Bは、椅子に身体を横たえると、すぐに静かになった。
Gが、Bから借りたトマスハリスの本を読み始めて30分ぐらい経った頃、誰かが動く気配を感じて顔を上げた。
暫くの間、気配のした方に目をやっていたが、再び本に視線を落としたのだった。
「ああ、よう寝たんか、寝てないんか、わかりまへんでしたわ。」
Bが身体を起こした。
「あんさん、夢みてはりましたやろ?」
「え?別に見てまへんけど寝言言うてましたか?」
「そうでっか。いや、ただ、あんさんの身体から、影みたいなもんがおきあがって、厨房の方へ消えましたさかいに、ああ、寝てはるんやなって思いましたんや。」
「ええー、まるで幽体離脱やおまへんかっ!それで、それは元に戻りましたんでっか?」
「戻ってまへんで。」
「抜けたんは、魂やろかっ?そしたら、今のうちは……」
「いーひっひっひ、抜け殻と違いますか?」
「抜けたんは、もう一人のうちかも知れまへんがな。」
「きっと、こらあかん、思いましたんやで。」
づづぐ
女将達は、非常に疲れていた。
前日に、予約客が20名近く来店して、おお忙しだったのだ。
「けど、ありがたい話ですわ。ああして、なんべんも利用してくれはって…。」「ほんまですなあ、張り切って、美味しいもんつくろと思いますもんなあ。」
がたがた…
Bが椅子を動かし始めた。「あんさんのベッド、作ってはるんでっか?うちは、本読んでますさかいに、寝なはれ。」
「少ししたら、起こしておくれやす。」
Bは、椅子に身体を横たえると、すぐに静かになった。
Gが、Bから借りたトマスハリスの本を読み始めて30分ぐらい経った頃、誰かが動く気配を感じて顔を上げた。
暫くの間、気配のした方に目をやっていたが、再び本に視線を落としたのだった。
「ああ、よう寝たんか、寝てないんか、わかりまへんでしたわ。」
Bが身体を起こした。
「あんさん、夢みてはりましたやろ?」
「え?別に見てまへんけど寝言言うてましたか?」
「そうでっか。いや、ただ、あんさんの身体から、影みたいなもんがおきあがって、厨房の方へ消えましたさかいに、ああ、寝てはるんやなって思いましたんや。」
「ええー、まるで幽体離脱やおまへんかっ!それで、それは元に戻りましたんでっか?」
「戻ってまへんで。」
「抜けたんは、魂やろかっ?そしたら、今のうちは……」
「いーひっひっひ、抜け殻と違いますか?」
「抜けたんは、もう一人のうちかも知れまへんがな。」
「きっと、こらあかん、思いましたんやで。」
づづぐ
まそほ繁盛記
「おはようさんだすぅ…」Bが情けない顔で振り向いた。
「あんさん、なんですか?その顔は。今日は歯医者行ってきはりましたんやろ?なんて言うてはりました?お医者さん。」
「抜かれましたわ!メリメリっと。ひいーん…痛いですわ。」
「ええっ。行ってすぐに抜かれたんでっか?」
「へぇ…」
Bは、力なく頷いた。
「もうぐらぐらで…お医者さんに『最近、みんな、自分の健康に気を使ってるのに、ここまでほったらかしにしてる人は、珍しいですなあ』て、言われましたんやっ!」
「あはははは」
「そやから、うち、言いましたんや。『歯医者なんか、痛くするから大嫌いですわ。』て。そしたら…」
「なんて?」
「お医者はん、うちの言うことなんか、聞いてまへんでしたわ。さっさと麻酔して、歯を抜きよりましたわっ!」
「そらそうですやろ。足の調子はどないです?」
「痛いでっせ。けどな、通うてる病院の隣が歯医者ですのや。なかなか便利でっせ。」
「それ、便利て言いますのか?それにしても…牙を抜かれたとは、まさにこのことですなあ…。」
「ああ…うち…鮫やったらよかったのに…そしたら、次から次へと新しい歯が生 えて、よかったのに。……話変わりますけどな、スケートの高橋ダイスケはん、口元がデヘヘって感じやと思いまへんか?」
「確かにデヘヘですわ。」デヘヘ
「あんさん、なんですか?その顔は。今日は歯医者行ってきはりましたんやろ?なんて言うてはりました?お医者さん。」
「抜かれましたわ!メリメリっと。ひいーん…痛いですわ。」
「ええっ。行ってすぐに抜かれたんでっか?」
「へぇ…」
Bは、力なく頷いた。
「もうぐらぐらで…お医者さんに『最近、みんな、自分の健康に気を使ってるのに、ここまでほったらかしにしてる人は、珍しいですなあ』て、言われましたんやっ!」
「あはははは」
「そやから、うち、言いましたんや。『歯医者なんか、痛くするから大嫌いですわ。』て。そしたら…」
「なんて?」
「お医者はん、うちの言うことなんか、聞いてまへんでしたわ。さっさと麻酔して、歯を抜きよりましたわっ!」
「そらそうですやろ。足の調子はどないです?」
「痛いでっせ。けどな、通うてる病院の隣が歯医者ですのや。なかなか便利でっせ。」
「それ、便利て言いますのか?それにしても…牙を抜かれたとは、まさにこのことですなあ…。」
「ああ…うち…鮫やったらよかったのに…そしたら、次から次へと新しい歯が生 えて、よかったのに。……話変わりますけどな、スケートの高橋ダイスケはん、口元がデヘヘって感じやと思いまへんか?」
「確かにデヘヘですわ。」デヘヘ
まそほ繁盛記
「えらいすんまへんなあ。思たより、はよ済みましたんや。」
11時を少し回った頃、Bがやってきた。
「ああ、おはようさん。どないでした?病院は。」
「へえ、歯医者は予約入れてきましたわ。足は、電気鍼を打ってもらいましたから、ましになりますやろ。あんまり、歩いたらあかんて言われましたんですわ。特に階段はあかんて…」
「車椅子にしなはれ!ほれ、そこの椅子に車輪つけたらよろしいがな!」
「それやと、椅子ぐるまやないですか!うちは、歩きまわりまっせ!マラソンするわけやないんやから…」「ほんまに、電化製品みたいに、壊れる時には、いっぺんに壊れますのやなあ。ポンコツですがな。」
「もう、うちは、全身を機械の身体にしたいですわっ」
「動く為のエネルギー源はなんでっか?」
「お寿司。」
「機械の身体やのに、生身の身体に未練たっぷりやないですか。お寿司て…せめてボーキサイトとか言いなはれ!」
「身体は機械やのに、人間らしい心も合わせ持ってますのや!そして、決して実る事のない、人間との愛に悩みますのやあっ!その事が組織に知られたら、爆破処分されますのやっ!」
「なにもんでっか?なんの組織?…ちなみに歯は何で出来てるんでっか?」
「木ぃ」
「…」
るるる
11時を少し回った頃、Bがやってきた。
「ああ、おはようさん。どないでした?病院は。」
「へえ、歯医者は予約入れてきましたわ。足は、電気鍼を打ってもらいましたから、ましになりますやろ。あんまり、歩いたらあかんて言われましたんですわ。特に階段はあかんて…」
「車椅子にしなはれ!ほれ、そこの椅子に車輪つけたらよろしいがな!」
「それやと、椅子ぐるまやないですか!うちは、歩きまわりまっせ!マラソンするわけやないんやから…」「ほんまに、電化製品みたいに、壊れる時には、いっぺんに壊れますのやなあ。ポンコツですがな。」
「もう、うちは、全身を機械の身体にしたいですわっ」
「動く為のエネルギー源はなんでっか?」
「お寿司。」
「機械の身体やのに、生身の身体に未練たっぷりやないですか。お寿司て…せめてボーキサイトとか言いなはれ!」
「身体は機械やのに、人間らしい心も合わせ持ってますのや!そして、決して実る事のない、人間との愛に悩みますのやあっ!その事が組織に知られたら、爆破処分されますのやっ!」
「なにもんでっか?なんの組織?…ちなみに歯は何で出来てるんでっか?」
「木ぃ」
「…」
るるる