音楽 楽器 作曲の研究してます

音楽 楽器 作曲の研究してます

大学で先生しています。
作曲・編曲しています。
チェロを弾きます。

気づいてみればもう1年が経ちました。

母校の早稲田歴史観(本キャン1号館)で小職の作品とビデオが展示されています。

 

企画展「ワセダの音楽家」

 

昨年(2023年)の初夏、母校より連絡があり、卒業生のなかで音楽の道に進んだ人たちを特集した企画展をやるとのこと。

もちろん有難い話ではありますが、自分は博物館のようなところに飾るものなど持ち合わせて無い。

 

さて、どうしたらよろしいでしょうか、とお伺いすれば、

「何かゆかりの品はなにかないですか?」

と担当者。

えー、ゆかり?大隈重信や中原千畝じゃあるまいし歴史上の偉人ならまだしも、

私はまだ生きてるし若いので、ゆかりの品と言われても・・・

「ペンとか衣装とかあります?」

(笑)ないって!

まあー、そういえば、楽器ならありますが。
ヴァイオリン、若いころヴァイオリン制作の修行をしていた時に作ったやつ。

あと、展示品として並べていただくなら、楽譜とか著書かな・・・

 

というようなやり取りがあって、2023年夏より1年間、

小田和正とかゴスペラーズらに並んで小職のヴァイオリンと楽譜が飾られてます。

プラスして私の「独奏チェロのための吟詠」(演奏:北嶋愛季さん)の動画も視聴できます。

お時間が10分くらいありまして、早稲田になんかの用事のついでにでも、どうぞ。
8月末まで開催だそうです。
 

 

早稲田歴史館に展示のヴァイオリンと作品の動画

 

 

Asian Skyという曲を書きました。何年も前ですが。

アジアと言ってもタイとかマレーシアとか外国ではなく、沖縄の街と海の印象を音楽にした曲です。

 

きっかけは2014年くらいだったかな…友人からお店のBGMにするための音楽を書いてよと言われて、

何となくメロディ+伴奏で書いたものを、さらに別の友人がテクストを付けて、

そしてそれに合わせてよりヴァイオリン曲として・・・とまあ、詳しくは忘れてしまいましたが

いろいろと変遷があって出来上がった曲です。

 

その後、2016年フランスで開催された作曲コンクールにも出品しました。

モーリス・ラヴェル作曲コンクールというものですが、室内楽部門でファイナルに残った曲でもあります。

 

と、まあ書きあがったのはいいのですが、、、、

結局、お店で使われることもなく公に演奏されることもなく、何年もお蔵入りになってしまってました。

 

さらにその後、6年経って2022年に、友人との共同企画で「sense of Resonance 音楽祭

というクラシック音楽の「新作初演」のみを演奏するという企画が持ち上がり、

やっとこのAsian Skyも日の目をみることとなったのです。

めでたしめでたし・・・

 

ヴァイオリンとピアノのための2重奏曲。
アジアとあるが具体的には沖縄へ旅行へ行った時の、青い海と空に感銘を受けて民族調の調べで書いた曲。
初演は群馬県前橋市で行われた音楽祭で、群馬の演奏家の篠原郁哉氏とユリア・レヴ氏によるもの。
私が沖縄でとったスナップ写真をスクリーンに映し、その映像とともに演奏していただきました。

YouTubeにアップした演奏動画ご覧ください。

 

 

 

楽譜も簡単に説明しておきます。

#スコアとヴァイオリン譜はこちらからダウンロードできます

 

一言で言えば、日本的な民謡とドビュッシーやラヴェルのような印象派風の要素をあわせた雰囲気にしています。

月夜とさざ波の音、朝のきらきらした海、強い日差しと静かな街並み。そんな沖縄のイメージです。

この写真は私が実際に取ってきた写真で、初演の時のスライドショーで使ったものです。

 

曲の冒頭はピアノとヴァイオリンが幻想的に静かに交互に出てきます。

ヴァイオリンはG線をF#に調弦します。これで普通の五度調弦とはちょっと違う異国な雰囲気に。

またピアノのへんてこな連桁(れんこう)は徐々に速く/遅くという指示です。

通常でしたら、8分音符⇒3連符⇒16分音符⇒と西洋式には書くでしょうが、ここは

そういったデジタルは変化ではなく、アバウトになんとなくといったニュアンスで滑らかに加速してもらいたいので

こういった書き方をしています。(補足的にaccelとかritも書いています)

 

最初のテーマは、ペンタトニックのメロディと水や風のような流れる伴奏を組み合わせています。

和風な旋律とドビュッシーの室内楽にありそうな書法を使ってます。

 

曲の終わりは三線(さんしん)をイメージした落ち着いた雰囲気で余韻を残して消えていきます。

ここは、in tempoというよりは、なんか「ちょうどいい」タイミングでポロンポロンと弾いてほしいところ。

まだまだ説明したいところですが、、、長くなっても、くどそうですので、ここまでにしたいかと。

 

著者のHPや作品はこちらです↓

 

 

川崎市って結構、音楽の取り組みが盛んですね。それでいてユニーク。

市民講座もあり、ジャズもあり、おんがくのまち川崎としてHPも充実音譜

そして100周年事業として、みんなで8小節の市のCMソングをつくろう!という企画もやっています(2024年)。

 

こちら↓がそのHP。

 

ということで、小職の音楽仲間の方からこの企画に参加してよーって依頼がありまして、

もちろん即OKでお手伝いさせていただくことにしました。

なんか面白そう!

という直感を刺激する、発想がユニークですよねスター

 

まあ、一般のこどもから大人まで、だれでも曲を書いて応募が可能ということなのですが、

やはり、普段から作曲やバンドをやってるとかじゃなきゃ、そんなに書けるものじゃないですよね。

 

で、ミソなのが、8小節という短さ。

そしてコードが決まっている!

ついでに伴奏音源も用意している!!

となれば後は鼻歌でふんふんと思いついた言葉で作れそうだなぁ・・・と思わせる仕掛けがいいグッド!

しかもワークショップで作曲の講座もあるというからすごい。

 

ということで、私は伴奏音源の編曲と音源制作の一部(やはり職業柄でクラシックの)を担当しました。

最初は、MIDIファイルで音源でもよいですよとか言われたのですが、

やっぱりクラシックでしょー、

生音でオーケストラバックだったら、

みんなも作曲していて気分がのるんじゃない?

となり、ヴァイオリンとか管楽器いれて生音録音ということになりました。(ランチに飲みながらの勢いで・・・)

 

ひと月ほど経ちまして、ミューザ川崎の練習室にて録音ヘッドフォンCD

フライハイト交響楽団という東京のアマチュアオーケストラのメンバーが協力してくれました。みなさん、長い付き合いのあるベテランプレイヤー。

さすがにフル・オケとはいかず、弦カル+ラッパ・オーボエ・フルートという編成。

パーカッションとかは今回はMIDI音源で代用。

ちなみに私は作曲者兼レコーディング担当。


 

曲調を7つほど変えた伴奏を書いたのですが、

・古典クラシック風 (ハイドンとかモーツァルトみたいな)

・ワルツ風

・マーチ風

と、ここまではわりと普通に。

でも、譜面を書いていくうちにだんだん調子がノッてきちゃって。

・ポップスオーケストラ風

・演歌風

・昭和歌謡曲風

・ファンク風

など、変わりダネのアレンジもしてしまいました!

まあコードは指定されているのでどれも似た感じの明るい曲調であることには変わらないのですが、

だんだんアレンジが細かくなって、ついには演奏者から「ちょっとこれ難しくない・・・?」

といったクレームになる始末イヒ(でも、結局みんな演奏してくれましたけど)

 

※ちなみにファンク風はこんな感じ

 

ということで、6月のとある週末のお昼に集合して、楽しく2時間強ほどの時間で計7曲を録音しました。

(で、そのあと5時間の打ち上げ・・・照れ生ビール

 

いま3曲音源をつくって、上のHPにて公開されています。

あと4曲も早めに作ってアップします!

 

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音楽と楽器の研究:

 

 

筆者(横山真男)のHP(作品リスト

 

 

世界最初の映画音楽。

実は、サン=サーンスの「ギーズ公の暗殺」という映像につけられたのが最初だそうです。

サン=サーンスといえばオルガン付き交響曲やヴァイオリン協奏曲、そして「白鳥」などの代表作があり、フランス・ロマン派の大家ですが、映画音楽といった大衆的な音楽も手掛けているとは案外知られていないのではないでしょうか。

今日では映像+音楽は当たり前の組み合わせとなっていますが、当時の映画というと無声映画ですし、音楽と言えばBGMのように演者によって即興でなされることが主でした。だから、サン=サーンスのようなお偉い先生(当時で73歳)が音楽作品として書くというようなことはそれまでにはなかったようです。

 

この曲、歴史的な意義のある作品なのですが、実は演奏される機会はめったにありません。

編成は弦楽とハルモニウム(リードオルガン)とピアノ。ちょっと普通の編成ではないですね。

まぁ、正直音楽的には他の作品に比べれば、聞き映えがしないというのもあるかも・・・

 

なのですが、以前、私はコンサート用に弦5部に編曲したバージョンで演奏してもらうことがありました。

楽譜はこちら

※元の音楽のイメージは壊さないようにしてますが、結構アレンジを加えています。

 

下のYouTubeのように、ステージのスクリーンに映像を写しその映像に合わせて生演奏!

で、実際にやってみると意外と難しい。

当たり前ですが映像は音楽に合わせてくれません!(笑)

だから演奏する方は時間を計算に入れて正確に弾かないといけませんので、結構リハーサルは綿密に行われました。

 

映画は、1908年にパリで製作されたもの。ギーズ公(アンリ)の暗殺事件は16世紀に起こった事件で、フランスでは有名なようです。

#内容の詳細は⇒ http://www.agij-paris.com/paris03/04.html などで

 

演奏:ソーヴェニール・デラ・ムジカ合奏団(2016)

 

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筆者(横山真男)のHP(楽譜のダウンロードもできる作品リスト

 

 

 

ヴァイオリンの製作者として、イタリアのアントニオ・ストラディヴァリの名前は誰しもが聞いたことがあると思います。

非常に人気があり高価であるため、昔から贋作が出回っていることでも有名です。

偽物があるので楽器ディーラーにより真贋の鑑定が昔から行われていました。

(逆に、ストラディヴァリと見間違うほどの楽器は、ストラドとして売られたこともあったとか (+_+)… )

 

本物かどうかの真贋は、もちろん限られた専門家によって行われますが、主としてそれは楽器の形からなされています。

つまり、見た目です。

製作者の特養的なアウトライン、細工、材料など外見上の特徴から、総合的に判断されます。

ただ、「音」に関してはその対象になることはありませんでした。

音色と言うのはフワッとした概念でして、たしかに音色の違いは知覚できるのですが、それを物理量として明確に説明することはできません。聞く人による主観もかなり影響します。

「柔らかい音色」という表現を聞きますが、確かに柔らかさをその音から感じますが、それが音の物理的な尺度で説明は難しいのです。

「豊かな音」という表現も聞かれますが、音の物理的な特徴量の何がどうなれば豊かという言葉とつながるのかは、説明できません。

味覚の表現にも似てるかと思いますが、音色についてはもっとぼんやりしている評価と言えましょう。

 

でも、やっぱり、私たちは楽器の音色の違いを確かに感じることができます。

解析的に音のなにがどうなっているから、と数値的に説明はできませんが、感覚的・主観的に違いを述べることはしています。

 

ならば、ということで私の研究室では、音色の違いを人工知能で区別ができるか?という試みを行っています。

 

ストラディヴァリ4本を含む13本のヴァイオリンを同条件でスタジオ録音しました。

その録音データをVAE(Variational AutoEncoder)という手法で、短時間区間のヴァイオリンの音波をネットワークに学習させ、楽器の識別を行いました。

音波をそのまま学習させると情報量が多すぎるので(かえって精度が出ないこともあるので)、音波をMFCCという音響特徴量に変換して、その値をたくさん学習させます。

そうすると、ネットワークは各音響特徴量を識別できるように(線引きができるように)学習していきます。

その分離された結果を可視化したのが下の図です。

VAEによる開放弦の学習結果 (当研究室のD3石垣さんの実験結果)

 

縦軸と横軸に意味はありません。各楽器の短時間の音波の特徴量がどの位置にあるかというものを、いわば相対関係を2次元の平面で可視化したものです。(潜在空間といっています)

開放弦ごとに学習した結果を示しています。

結果をみてみると、それぞれの楽器がある塊となって分布しているのが分かりますね。

 

じゃあ、ストラディヴァリの鑑定ができそうなのか?

 

出来ているとは言えませんね。

他の楽器とかぶっていたりして、ストラディヴァリの4本と他の9本の差は線引きができません。

G線はわりと近くに集まっているようにも見えます。

このことは、他の楽器でもストラディヴァリにかなり近い音色を持つものがあるとも言えます。

図が示しているのはMFCCという音響特徴量で、楽器の音色の区別はできるということです。

やはり、ストラディヴァリの鑑定は難しいのでしょうか。

 

次の図は、ストラディヴァリの音をいろんな音源からデータにして学習させた結果です。

 

それぞれのストラドの音源はスタジオ録音であったり、ホール録音であったり、CDであったり・・・と録音条件が異なるストラディヴァリの音源をかき集めて同様の手法で計算したものです。が・・・やはり、録音環境の差はかなりの違いをみせます。

楽器の音色は、楽器の振動・共鳴の特徴、振動の源である弦の特徴、そして聞いている環境(録音条件)によって、結果が変わると言えます。

 

楽器の音色 = 楽器×弦×録音条件
 

今後としては、地道ではありますが、同じ録音条件でストラディヴァリの音を蓄積していくしかないようです。

ただ、今回の研究を通して、手法としてVAEを使うことで鑑定の可能性は「ある」と言えるのではないでしょうか。

 

※この記事の詳細は情報処理楽器音楽情報研究会(2024年3月)にて発表した内容をもとに簡略させて書いたものです。詳細は論文をご覧ください。

横山 真男, 石垣 優弥, 吉田 小百合, 山田 雅之, 堀 酉基, "人工知能を用いたアンティークヴァイオリンの 音色による鑑定の試み" 第139回音楽情報研究会, 2024.3.

 

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