讃岐民謡と言えば全国区の「こんぴらふねふね」でしょう。
調べてみたら他にも讃岐地方にはいくつも民謡があり、
そして「こんぴらふねふね」にもバージョン違いがあることが分かりました。
この辺りは後半で書くとして・・・
8月の猛暑真っ盛り、高松(香川県)でアニバーサリーコンサート2025に行ってきました。
東京から家族で楽器持って馳せ参じたわけですが、
じいじ(義理の父、高松附属中の先生だった)の85歳を記念して、教え子が集まってコンサートが企画されまして、
小職が作曲、娘と嫁がソリスト、そしてじいじが指揮、という親子3代の共演というもの。
このアニバーサリーコンサートでは、他にもジャズがあり吹奏楽があり、かなり賑やかな楽しいイベントでした。
とりあえず、まずは小職がどんな曲を作って演奏してもらったのか。
「讃岐の民謡の主題による二つのヴァイオリンとオーケストラのための狂詩曲」
初演。1日しかないリハで、なんとか・・・なった?!
リハの音源と切り貼りして頑張って動画を作ってみました。
※演奏していただいた皆様、大変ありがとうございました!!

イベントのHP↓
さて、ここでは小職が書いた曲を解説をしようかと。
話しの最初は、じいじが、孫がバイオリンをやっているから何か1曲披露させたいといいだして、
それが徐々に話が膨らんで、祖父・娘・孫と3代の共演がいいんじゃないかとなり、
最終的にはブラスバンドもいるから(このメンバーがプロの方もいてまた素晴らしかったです)
えーい、オケをバックに協奏曲をやっちゃえ!
という結末。
それで、じいじの花道のために曲をこさえることになったのですが、
まあ、2本のバイオリン協奏曲といえばバッハやビバルディなどがポピュラーですが、
そういうのじゃぁ、せっかくの記念イベントにおいて、普通過ぎない?
と思ったわけです。
どうせなら、香川の民謡をテーマをつかって、めっちゃ盛り上がる協奏曲仕立てにしたいなと
イメージが膨らみ、
香川(讃岐)の民謡を探すことから始めました。
やっぱり、香川といえば、「こんぴらふねふね」ですね。全国区な曲は。
まずは歌詞はこれ。ご存じですよね。
♪ 金毘羅船々 追手 に帆かけて シュラ シュ シュ シュ
まわれば四国は讃州那珂の郡 象頭山金毘羅大権現
一度回れば (日本民謡辞典より)
でも、この曲。
メロディにいくつかのバージョンがあるということが分かりました。
唱歌や芸者唄として歌われるものがたぶん一番なじみな方が多いのかと。
※下の動画をクリックすると音源があります(リンク切れでしたら申し訳ございません)
旋律の終わりがマイナーになるもの。
これは三味線の調律に由来するものなのか・・・
たぶん推察するに、もとは日本の陰旋法(マイナースケール)で歌い継がれたものが、いつした上の唱歌などのように
歌いやすくするように陽旋法(メジャースケール)に変えられたのかもしれません。
そして、3・4小節目がキーに対して3度か4度の違い。つまり、ハ長調ならミーソかファーソかの違い。
どうやら終いが陰旋法(上の例)で歌われているのならファになるのかもしれません。

香川県公式ページ↓の楽譜より簡素化して筆者が楽譜を起こしたもの
https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/14715/54_57.pdf
それで、小職はどうしたかというと、メジャーキーで始まるもののファーソで歌われ、
陰旋法で終わるというメロディーを採用しました。
この「こんぴらふねふね」はノリがいいので曲のラストに使うことにしました。
盛り上がってどんどんテンポアップしてウァー!!と一気に終わる。
ま、想像に難くないかと思われますね!
この時点で形式的には狂詩曲(ラプソディ)に決まりました。
じゃあ、前半に何を持ってこようかな・・・といろいろ探してみたものの、
Googleさんだと、悲しいことに金毘羅船船しか検索に出てこないではないかっ!
それじゃあ、ちゃんと調べなきゃと、香川県のHPを見たり民謡をいろいろ解説しているサイトをみたり、
いろいろ民謡辞典やら調べてみまして、次の2つに決めました。
一つは、香川の人はみんな盆踊りで知っているという「一合まいた」。
東京の人間には知られてないのですが、地元ではみんな知っているとのこと。
まさに、郷土の歌!!
「正調一合まいた」
もう一つは、宇多津に伝わる塩田の浜引唄という労働歌。
なんとも質素であるが伸びやかな歌がいい。西洋音楽にはないまさに自由リズムの旋律。
宇多津浜曳き歌
さて、素材はそろいましたが、そのまま「編曲」にしてはつまらないので、やはり作曲家たる人種の性(さが)でして、
オリジナリティを出すべく色々いじって再構成することは避けられないもの。
イントロは劇的に(ちょっと昭和SF映画っぽくなってしまった(^^;)、

メロディは伸び縮みして装飾的に、
ちょっと専門的な用語になるのですが、日本の伝統的音楽の特徴でもあるヘテロホニーの手法で2重のソロを書きました。

※ヘテロホニーは簡単に言うと、日本古来の伝統音楽に照らし合わせて言えば
類似してというか派生してというか、だいたい同じだけどちょっと変えられて演奏すること
雅楽や追分(江差追分とか)にみられる。スコアの左半分の中段にある2本のソロに適用。
音源はこのページのトップに動画があります。
スコアはこちらのリンクよりどうぞ。
初演版(ファゴットがいなかったためトロンボーンとバリトンサックスで演奏)
スコア:Raphsody for two violin and orchestra-orch-v0528premier-score.pdf
パート譜:Raphsody for two violin and orchestra-orch-v0528premier-parts.pdf
通常の2管編成版はこちら
スコア:Raphsody for two violin and orchestra-orch-v0528nomal-score.pdf
パート譜:Raphsody for two violin and orchestra-orch-v0528nomal-parts.pdf
以下:イベント時の曲目解説より
この作品は2本のヴァイオリンのための協奏曲として2025年の正月休みに書き上げた。香川県の高松で演奏されるとのことなので、題材は讃岐の民謡を用いることにした。そこでインターネットでいろいろ調べてみたが、案の定、「こんぴらふねふね」はトップに検索結果がでてくるし全国的にも知名度が高いのでこれをメインテーマに選定した。
次いで、他の民謡で何かヴァイオリンの演奏に向いたような民謡は無いかと探したが、これにはそれなりに長い時間を要した。ラプソディ(狂詩曲)というスタイルで書くことに決めていたが、ラプソディは通常いくつかの民族的な旋律で構成されることが多く、聞いていても飽きずに楽しめるというメリットもある。結局、題材に選んだのは「宇多津浜引き歌」と「一合まいた」であった。香川県西部に残るこの浜引き歌は、塩田で塩を作るのに馬鍬で海水を引き入れた砂を引く作業をするときの作業歌だそうである。追分風の素朴で心に染み入る歌である。一方、「一合まいた」は盆踊りの曲として地元ではなじみの曲であり、これも印象深い旋律である。本作品においては、かなりの現代的なサウンドにしているので元の曲とは少々イメージが変わっているように聞こえるであろう。しかし、これは編曲ではなくあくまでも元の曲を素材とした作曲であるので、この点はあらかじめ理をいれておきたい。
親子三代の共演と言うこともあり、小学生がソリストであることを考えると難しすぎるソロパートにはできず、また聞き馴染みが良く、演奏していても楽しい曲、といったコンセプトで書いた。
曲の構成は、イントロに続き「一合まいた」をゆったりと引き伸ばしたヴァイオリンのソロが始まる。オーケストラで盛り上がった後には「宇多津浜引き歌」が中間部となり、最後に「こんぴらふねふね」で賑やかに締めくくる。オーケストラは通常の2管編成であるが、本日は編成の都合でファゴットの代わりにトロンボーンとテナーサックスに直した版で演奏する。
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