携帯をからは、Tさんからの返事は聞こえない。

私は、勇気を振り絞って、もう一度告げた。

「別れてほしいんです。もう、解放して下さい。」

やはり、Tさんからの返事は帰って来ない。

それでも、私は、待った。

「それは、出来ない。お前が俺から離れられる時は、俺が死んだ時か、お前が死んだ時だけだ。」

それだけ言うと、Tさんは電話を切った。

私は、どうして、どうして・・・そう呟きながら震えた。

怖くて、怖くて、一晩中眠れなかった。

次の朝、父に話した。

「すぐに警察に行こう。」

話を聞き終えると、父は、そう言い、仕度を始めた。

警察になんて行ったら、絶対仕返しをされる。

私だけじゃなくて、父も母も危険な目に合わせる。

私は、警察に行くのはちょっと待ってもらい、Tさんと話し合って来たい、そう言った。

父も母も、反対した。

私だって、行きたくなかった。

でも、このまま、同じ事を繰り返すのは嫌だった。

父には、戻ってくる時間を告げ、もし、その時間に戻らなかったり、連絡が途絶えたら、その時は警察に行って欲しい、そうお願いした。

「一緒に行く。」

父は、そう言ってくれた。

一人じゃなきゃ、逆に危ないから、断った。

私は、Tさんに電話して、今からマンションへ行く事だけ告げ、電話を切った。

直接会って話し合う、そう自分で決めたのに、すごく怖かった。


Tさんに連絡する。

そう決めたけれど、私の手は携帯を握り締めたままだった。

連絡して、また連れ戻されて・・・

また繰り返しそうで怖かった。

もしかしたら、Tさんは、逃げた私を許さないかもしれない。

今度こそ、殺されるかもしれない。

どうして、別れられないのだろう。

誰に聞いたって、きっと別れればいいじゃない、そう言われるに決まっているのに。

私も、もし、そういう話を聞いたら絶対そう思う。

でも、いざ自分になってみたら、自分が殺されるか、相手を殺すかでしか、別れる方法がないのではないかと思ってしまう。

Tさんを思うと、憎しみの他に別の感情も確かにあった。

考えていても仕方ない。

握り締めていた携帯の発信ボタンを押した。

Tさんが出た。

途端に、恐怖で何も言えなくなった。

Tさんの声が聞こえる。

でも、何を言われているのか、私の耳には聞こえなかった。

私が黙ったままで居たら、Tさんも黙った。

私は深呼吸した。

そして、Tさんに告げた。

「別れて下さい。」

父に弁護士を紹介してもらい、後日伺う事になった。

父のマンションへ来てから、時間がゆっくり流れている気がした。

夜、目が覚めて、キッチンへ飲み物を飲みに行った。

リビングには、父が居た。

「大丈夫か?育てられるのか?」

唐突に話し掛けてきたので驚いた。

「うん。」

それだけ答えた。

「子供を育てるのは奇麗事じゃない。第一、子供を愛せるのか?」

父の言いたい事はよくわかっていた。

子供の父親が、どちらにしても、父親だなんて思いたくない。

私だけの子供、そう思って育てて行きたい。

父は、私が、子供を愛せなくて、虐待でもすると思っているのだろうか。

「うん。」

その返事だけで、父には伝わった様だった。

私の頭を撫でて部屋に戻って行った。

私は、母親だ。

出来る事は自分でしなくては・・・

部屋に戻った私は、Tさんに連絡した。

今度こそ、別れる為に。

父は、今まで家族を蔑ろにしていた罪悪感からか、とても親身になってくれた。

毎日、仕事を早めに切り上げて、お土産を持って帰って来た。

母も、子供には罪は無い、そう言ってくれた。

近くの病院へ検診に連れて行ってくれると言われたけれど、私は外に出るのが怖くなっていた。

もし、外に出て、Tさんに見つかったら?

一緒に居る父と母にも迷惑がかかる。

マンションはセキリュティーがしっかりしているし、警備員も居るのでマンション内には入って来られないだろう。

部屋に居れば安全。

だけれど、家の場所をTさんに知られているので帰られない。

父のマンションもセキリュティーはしっかりしているし、Tさんもわからないはずなので、すごく安心できた。

でも、このままではいられないのは確かだ。

父が弁護士に相談しようと言って来た。

ただ、弁護士に全て話さなければいけない。

それは、私にとって、とても苦痛な事だった。

出来れば、誰にも知られたくない。

だけれど、自分と子供を守る為には、それが一番いい方法に思えた。

私の父は、私の母とは離婚はしていないけれど、一緒には暮らしていなく、別の所に住んでいた。

父の所だったら、絶対にTさんにはわからない。

タクシーの運転手に父のマンションの住所を告げた。

携帯だけは持って出てきたので、父の会社に電話をした。

そして、父のマンションに向かっている事を告げた。

突然の私からの連絡と訪問に戸惑っているような様子だったけれど、すぐにマンションへ帰って来てくれると言ってくれた。

マンションの前に着くと、父が待っていた。

タクシー代を払ってもらい、とりあえず、部屋に向かった。

「お母さんは、来てる事知ってるの?」

「言ってない。」

そう答えたら、すぐに連絡してくれた。

何ヶ月も家を空けていた挙句、父の所に居るなんて、母はビックリしているのに違いない。

母も、すぐ来る、と言ったらしい。

母が来るまで、関係の無い話をしていた。

母が来て、まず、Tさんの事を話した。

妊娠している事も・・・

泣き出した母を父が慰めていた。

「しばらく,、うちでゆっくりしてればいいよ。」

そう言ってくれた。

Tさんが来たら危ないので、母も、しばらくは父の所で生活する事になった。

うまく誤魔化そうと思えば思うほど、言葉が出てこない。

何か言わなきゃ・・・

焦りと不安の中で押しつぶされそうだった。

ボイスレコーダーでどれだけの録音が出来たのだろう?

私はカケに出た。

「何、それ?私、別に悪い事なんて何もしてないよ。」

Tさんの顔が、あれ?って感じに見えた。

「私の事、まだ疑ってたんだ・・・そんなに疑われてるのなら出て行くしかないね・・・別れて。」

そう言ったら、Tさんの態度は激変した。

「ごめん、最近お前の様子がおかしい気がして・・・」

「体調だって思うようにならなくて戸惑っていたのに、こんな事されるなんて・・・私、もう出ていく。」

そう言って、止められる前に部屋を飛び出した。

後は、走って走って、ひたすら走った。

下腹部が痛い。

でも、走り続けるしかない。

すごく遠くまで走ったつもりだったけれど、実際はそこまで遠くまで走ってはいなかった。

とりあえず、安全な場所へ行こう。

タクシーに乗って行き先を告げた。



Tさんが、出勤した後、ビデオや写真を探した。

やはり、見つからなかった。

探しているのをバレないうちに、諦めよう、そう思った。

私は、部屋を元通りにしていたつもりだった。

だけれど、Tさんは気がついていた。

夜、いつものように、ベットに連れて行かれた。

そして、両手両足を手錠でベットに繋いだ。

Tさんは、何もしないで、私の顔を見ているだけだった。

「お前が逃げる前に殺してやろうか。」

そう言いながら、じっと見つめてきた。

恐怖で一歩も動けない私の首を締めて来た。

苦しくて息が出来ない。

身動きも出来ない中に、濡れてもいないあそこに、Tさんのものがねじ込まれた。

意識が遠くなる寸前に、Tさんの手が離された。

苦しくて咳が止まらない。

涙と吐き気が襲ってくる。

Tさんは、乱暴に腰を動かしていた。

Tさんがイッた後も、入れたまま、私の身体に噛み付いた。

「裏切ったら許さない。どこまでも追いかけて絶対殺してやるからな。」

「どうして・・・」

何故、バレたのか・・・

もしかして、元奥様が裏切ったのか・・・

「お前の行動なんてみんなわかってたよ。」

そう言ったTさんの手に握られていたものは、ボイスレコーダーだった。




次の、Tさんの残業日、もしくは、夜勤の日。

夜勤の日の方が、逃げ切れる。

期限的に厳しいから、残業日でも仕方ない。

とにかく、それまでは、じっとしていなきゃ・・・

計画は、とにかく出来るだけ遠くに行く事。

そこで、ビジネスホテルに泊まる。

その後は、家具付きのウィークリーマンションを探す。

頭の中で、何度も計画をシュミレーションした。


逃げる前に、Tさんに今まで撮られたビデオや写真を処分したかった。

だけれど、用心深いTさんが、簡単に私に見つかるような場所に隠している訳がない。

Tさんが仕事に行っている間に、思い浮かぶ場所を全て探したけれど、とうとう見つからなかった。

もう時間がない。

早くしなければ、子供が産まれてしまう。

子供が産まれてしまってからだと逃げるのが困難になってしまうだろう。

気持ちばかりが、焦っていた。

そんな時、Tさんの元奥様から電話が来た。

Tさんも、元奥様については信用しているのか、すぐに私に代わってくれた。

元奥様は、私が逃げれたかの確認に連絡してきたようだった。

そして、私が、まだ、Tさんのマンションにいるのを驚いていた。

元奥様は、ハイ、イイエで答えるように私に言った。

そして、これからの事を聞いて来た。

ハイ、イイエしか言わない私を不審に思ったTさんが、携帯を取り上げた。

そして、元奥様に、話の内容を問い詰めていた。

だけれど、元奥様は、上手くごまかしてくれた。

もう、元奥様は巻き込めない。

私は、決行日を決めた。


Tさんは、今まで、無理やり抱かれていた私が、従順になった事に対して不信感を抱いている。

早く、目をそらさせなくては・・・

そう思って、どんなに屈辱的な事だって耐えた。

Tさんに、Tさんのものを口に無理やり入れられて、口の中に出されて飲まされても我慢した。

テーブルに乗せられて、両足を広げさせられて、その格好のまま、縛り付けられて、写真を撮られ、抱かれても我慢した。

だけれど、それがかえって、不信感を募らせていった。

「何を企んでいる?」

咄嗟に言われて返事が出来なかった。

私が、何かを隠している事を確信したTさんは、私をベットに突き飛ばした。

恐怖に引き攣った私の顔を見て、はっとしたような顔になったTさんは、すぐに私を抱きしめ、謝った。

Tさんに抱かれながら、どうしたら逃げ切れるか、そればかりを考えていた。

Tさんは、朝まで私を甚振った。

そして、私に手錠をかけて、仕事に行った。

一晩中、拷問のように抱かれて、疲れ果てた私は、そのまま眠った。

目が覚めたら、体中が軋む様に痛かった。

身体中には、Tさんにつけられたキスマークや、歯型があった。

Tさんは、イク時は、私の首を締めたり、肩や胸を血が出るほど噛んだりした。

私を抱いた後、デジカメで写真を撮ったり、ビデオで撮ったりしていた。

そして、そのビデオを私に見せながら、また、甚振った。

何度も、何度も・・・